7.逃げた蜥蜴
「ちょっ!蜥蜴ちゃん!どこ行くの!」
四人で朝食を食べ終わった後に文竜はペットに餌をあげようと、ケースを開けた。文竜はすっかり忘れていた蜥蜴の背中に羽が生えていることに。
蜥蜴は空いた入口からするりと抜け出した。羽でパタパタと飛んでいく。慌てて、文竜は追いかける。
その声を聞いた家文と話していた美歌は部屋へ向かった。
美香が部屋を覗くと、文竜がバタバタと天井を飛んでいる蜥蜴を追い回していた。
「何してんの?」
美歌は部屋の壁で文竜を見ている美琴に尋ねた。
「蜥蜴ちゃんがケースから逃げちゃったみたいで・・・。」
「ふぅん」
必死になっている文竜を横目に美歌は興味が無くなり、部屋から離れようとした。その時、開けていた扉を蜥蜴が通ってしまった。
「蜥蜴ちゃん!!!!」
「待ってよ文ちゃん」
文竜の悲痛な叫びに、美歌はやってしまったと、少しばかり負い目を感じる。
文竜は蜥蜴を追い、美琴は文竜を追った。その二人の後ろ姿を見て美歌はどうするかと考える。
蜥蜴はフワフワと飛んでいき、家文のいる茶の間に来ていた。その天井に張り付く。家文は蜥蜴に気づかずお茶を啜っていた。
「じいちゃん!蜥蜴ちゃん見なかった?」
「知らん」
「え、ヤバ。どこに行ったんだろう」
孫の喧しい声に眉を顰める。
「外には出てないと思うんだけど」
そう言いながら、茶の間を離れ、キッチンの方に向かった。
「俺は上の方を探すから美琴ちゃんは下の方を探してくくれる?」
「うん、わかった」
文竜はキッチンの天井近くを探し、美琴は、見失ってしまった蜥蜴を探すために家具の隙間を覗く。
「蜥蜴ちゃぁん、どこにいますかぁ」
文竜は蜥蜴を呼びながら、天井を目を皿のようにして探す。時々、顔の角度を変えながら見過ごさないようにもした。
しかし、残念ながらその部屋にいるわけではないので、どんなに探しても見つかるわけがなかった。
舞利はクスクスと笑いながら、文竜を眺めていた。
「何してんの?」
網目の細かい虫網を持った美琴は呆れた声で、何もいない部屋を探す二人に声をかける。
「え?」
「蜥蜴、こっちにいるけど」
美琴は茶の間の隅を指さした。文竜は指でさしたほうを目で追うと確かに蜥蜴が天井に張り付いていた。美琴もそこにいることを確認した。
「いた!」
「あ、本当だ。いるね」
駆けだしそうになる文竜をどうどうと、美歌は片手で制して落ち着かせる。
「そのまま行ったら、また逃げられちまうだろうが」
「あ、そうだよね」
蜥蜴を驚かさないように声を小さくして喋る。




