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5.成長の力

文竜が目を覚ます。

隣には美琴と美歌が寝ていた。珍しく先に目が覚めたことに驚き、それだけ疲れていたのだろうと文竜は考えた。


「ふふふ」


舞利が笑い、文竜は首を傾げた。彼女は指で指し、文竜はその先を目で追いかける。その先には、ケースに入ったペットの蜥蜴がいた。

文竜は、じっと蜥蜴を観察する。舞利が笑って理由を探すために。


蜥蜴には小さな羽が生えており、それはまるでコウモリの羽のようにも見えた。そんなもの昨日の夜にはなかった。それにサイズも一回り大きくなっている気がした。


「俺の蜥蜴ちゃんはどこに?」

「そこにいるだろう」


現実逃避する文竜をにやにやとする舞利。ふわふわと文竜の回りを煽るように飛ぶ。


「まさか、俺の力・・・?」

「そうさ」

「でも、これって成長で良いのか?」


文竜は疑問に思った。彼が思っていた能力の方向性が違ったからだ。せいぜい植物を成長させられるだけのことだと思っていた。

そんな文竜の考えを理解した舞利は彼に諭す。


「だから、言っただろう。私でさえお前の能力を知らないと。この結果だって、私の予想の範疇を越えている。生物の進化、それもまた成長の一つということだ」

「・・・じゃあ、俺のそばにいると、美琴も美歌も人と違うものになっちゃうかもってことか?」

「無きにしもあらず」


舞利の言葉に文竜は顔を強張らせる。


「なんの話?」


声をかけられ、肩を捕まれた文竜は驚きつつ振り返る。そこには美歌と美琴の姿が。

文竜が舞利との話に夢中になっている最中に二人は目を覚ましていた。寝ぼけつつも黙って、文竜の会話を聞いていた。しかし、予想外の言葉に、二人は黙っていられなくなったのだ。


「え、と」


美歌の怒った顔と美琴の心配そうな顔を見て、文竜は何と言おうか迷う。


「俺たちから離れていこうとすんなよ」

「絶対、そんなことはダメだからね!」


戸惑う文竜の両手をそれぞれが握る。


「もしかしたら、俺の能力は化け物にさせちゃうかもしれないよ?」

「三人でいられるなら、そんなことどうだっていい」

「うん。私もそう思うよ。だって、文ちゃんも変わっても傍にいてくれるでしょ?」


握られた両手の暖かさにホッとしつつ、自分が一瞬でもそんな考えたを持って馬鹿だなと自嘲する。


「うん。傍にいるよ」


三人のやり取りを静かに見ていた舞利が外を見て、「帰って来たようだ」と呟き、その数秒後に玄関の扉を開ける音が聞こえた。


「おぉい。帰ってきてるかぁ」


三人は目を合わせてから駆け出した。それは声の持ち主を出迎える為に。


「おかえり!」

「おかえんなさい!」

「おかえりなさい!」


それぞれの言葉を聞き、出迎えた子供達に老人は笑って言った。


「帰ってきたのは、てめぇらの方だろうが」

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