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005

「捕まえるううううう!」


「もう、立ってください!」


よくも捕まえられず、例の路地裏まで入った俺は、警備兵との死の鬼ごっこを続けていた。本当にぎりぎりな距離だったので、少しでもスピードを落とせば捕まる危機だった。そうして、その瞬間はすぐに訪ねようとしていた。力が抜き始めた。


「見つけた!」


しかし、幸いなのか、遠くの目の前には黒髪の少女と以前と同じく険しい男が立ち向かっていた。俺は最後の力を振り絞って彼らの前までスピードを上げた。復活まえに会ったので、事実上はじめて会ったも同然だった。彼らは驚いた表情を隠さなかった。初めて会ったことじゃなくても、こうやって急に飛び込めば誰でも驚くが。


「私が来た!」


勇ましく叫んだ台詞は本来の威力を全く発揮することができなかった。冷たく俺を見つめる視線がその証拠だった。そりゃ、筋肉質のおじさんではなく、俺が叫んだので、その力が半減するのもあるけど。それでも、やはり心にダメージを受けた。


「ここです。ここ。ほら、ナイフを持った男がこの女性の方を脅かしているんです」


俺はナイフを持った男を指差して言った。俺を追いかけて駆けつけた警備兵は瞬間的にいぶかしがったが、すぐに納得したのか、現行犯として男の両手を後ろで縛った。男は悔しい目つきだったが、ナイフを持って脅したのは事実だったため、反抗しなかった。それとも警備兵には勝てないと判断したのか。確かに警備兵との柄の差はほぼ倍以上のようだった。勝目がないのも当然だった。それに警備兵に武力を使ったら、後のことも怖くなるだろうし。


「もう大丈夫です。俺が偶然この場面を目撃して警備兵を連れてきました」


俺はできるだけ人好しそうな笑顔で黒髪の少女に言った。彼女の黒髪はどこからか吹いてきた風に靡いていた。黒髪に黒眼、黒ずくめの姿で俺をじっと眺めていた。本当に黒く染まったその瞳には、俺が透けて見えた。茶色の混ざらない純粋な黒色の瞳なんて、かなり珍しい色だったので目が向いた。


「助けてくれてありがとうございます」


清らかな声とともにそんな言葉が聞こえてきた。以前にも声は聞いたことがあったが、状況が今とは違うからだろうか、少女の声がまるで夏の日の風鈴のように聞こえた。もう少女は照れくさそうに俺を見て顔を赤らめなければならないのだが……。


「というわけがないじゃないか。貴族の私を救ってくれるのは当然のこと。人がこのような状況に置かれていることを知れば、もっと早く来るのだ」


かえって俺に向かって怒っていた。


「そもそも警備兵は何んだ、警備兵が。警備兵を呼びに行っている間に、私に何かが起きたらどうするつもりなんだ。その時はどうしても自力で私を守るべきじゃないか」


以前にそうしてナイフに刺されましたが。路面に寝転んで死んでしまいましたが。そして、そちらは助けてくれと言う俺の叫びを無視しましたが。死んでしまったっで見なかったですが、そのまま振り返らずに帰って行ったと思いますが。


「救ってくれた人になんだ!」


盗人猛々しい少女に腹が立った。もともと貴族というやつらはみんなこんなものなのか。現代にも階級がないと言うだけで、パワハラするやつらがいるのと似ているかもしれない。むしろ親の各だった。


「何があったら、とは言っていたが、本当にそんなことが起きるとは思わなかったのだ。たかだかさっきぐらいの状況で私を救ってくれたと恩に着せるつもりなのか。その程度の危機など、私にかかれば平気で乗り切れることを」


初めて迎えたヒロインの状態がこうだなんて。本当に俺の異世界せいかつは順調に進めないのか。見た目いがいはだめな人間だというのか。外見だけで人を判断する人にはなりたくなかったが、でも外見だけで認めてしまうのもちょっとあれだけど。俺は結局、俗物だったのか。考えてみると、十分にそうだった。


「いや、考えてみたら何でタメ口なんだ! 俺と年もあまり違わないようなのに!」


見た目といえば思い浮かんだが、あいつは少女だった。年の差が多くても二歳くらいしかならないはずだった。


「貴族がタメ口で話すのは当たり前じゃないか。君がどんな人間かは知らないが、身なりだけ見ても貴族ではないと分かるのだ」


そう言われてみれば、俺のみすぼらしい姿は惨めだった。全身が水に濡れたままで、服は湿っぽく俺の体にくっついていた。こじきと思わなくてよかった。


「俺は平等を基本的な価値とする国で生まれた!貴族だとか平民だとか言うのは言語道断。お前のそんな言葉を聞けば、フランスが涙を零すだろう。フランス革命よ、俺に力を貸してくれ!」


「フランスや、フランス革命が何かよく分からないけど、君が今そう言う場合ではないことは、はっきりわかっているのだ」


「人を見かけで差別するなよ。これを機会に、はっきりやろう。さっきも聞いたが幾つだ。お前は幾つなんだ!」


「十七歳なのだ。十分に貴族のオーラを放つ年なんだ」


「ハハハ、十七歳か。俺は十八だ。俺がお前より年上なんだ。さあ、お兄さんと呼んでみろ」


実は俺も十七歳だった。負けたくなくて強がった。


「何がお兄さんなのだ。君が十八歳なら私は十九歳なのだ!」


「さっきは十七歳だと言ったじゃねえか!お前が十九歳なら俺は二十歳だ!」


意味のない勝負になりつつあった。明らかにばか者たちの血戦になりつつあった。本当にバカをばかにするばかりで、何の結果も出せなかった。傷だらけの勝利でもなかった。


「話の途中、申し訳ありませんが」


口論を続けていると、警備兵が声をかけた。考えてみると彼の存在を忘れていた。どうやら間抜けな俺たちの話をずっと聞いていたようだ。縛られている男も馬鹿たちを見る表情だった。


「まだ、あなたの身分を聞いていないのです。証明するものも持ってないと言いましたし。ついてきてもらえますか」


「ハハハハハ!身分も不明なやつだったなのか。これは本当に面白いな。警備兵よ、ご苦労なのだ」


考えてみたらそうだった!あいつはどうして笑っているのか分からないけど。怒りがわき始めた。しかし、あいつと警備兵の言葉通り、俺は身分が不明確な人間だった。このままではそのまま引っ張られて刑務所いき。俺を弁護してくれる人も、俺と頼りのある人もいない。俺は一人でここに落ちたのだ。天の下、孤独な人間がまさに俺だった。警備兵が近づいてくるのに合わせて後ずさりしながら、俺はそんなことを思い出した。そのうち、肩が少女に軽くぶつかった。


「あ、お前がいた」


俺はあいつの顔を見て名案を思い出した。


「急になんなのだ。おとなしく捕まえるのだ」


少女は手を振りながら俺を警備兵のもとに送ろうとした。俺はそう言い放つ彼女の顔を捕まえて、俺のほうにかけた。つよく握った頬は押されて変な顔を作る主役だった。


「な、なにをしているのだ。警備兵が怖くないのか」


俺はそれを無視して彼女の耳元を口を近寄せた。変なことをするつもりはなかった。俺はただ耳打ちをしただけだった。


「もし、ここで捕まったら、お前のことをぜんぶ言ってしまうからな。お前、警備兵と絡まったら困らないか。警備兵と絡まっていいことはないはずだ」


俺は卑劣な表情を顔いっぱいに浮かべながら言った。奴の目が揺れるのを感じた。一瞬、死ぬ直前に聞いた話を思い出した。通報はできないと、警備兵と絡むことはできないと言った少女の言葉を。ほぼ強がりに満ちたギャンブルに近い試みだったが、成功することを願っていた。もう魚信を待つだけだった。


「勝った」


俺はそう思った。

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