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017

「ウアアアアアアアアアアアアアアア!」


俺は突かれていた。


「助けて!助けて!助けてください、ロンロンさん!」


「だからロンロンって呼ぶな」


「こんな状況でそれかよ!本当に死ぬんだって!何かお前にこんな台詞を言ったことが前にもあるようだけど…ウワッ、死ぬ!」


少し離れた茂みの後ろで状況を見守っているロンロンにどなり続ける。俺は蜂の群れのように押し寄せたツリーバードの群れに容赦なく突かれていた。多くのツリーバードが俺の周りを囲んでいた。


「ヒール!ヒール!ヒール!ヒール!ヒール!ヒール!ヒール!ヒール!ヒール!ヒール!ヒール!ヒール!」


俺は回復魔法をかけ続けた。ツリーバードに刺された跡は、血が出るほどの傷にはならなかったが、しきりにつつくせいで、回復魔法を使わないと穴が開くかもしれないという気がした。実際に外傷は見えなくてもかなり痛かった。ロンロン奴、いつか仕返しするぞ。


「どうなのだ。魔法の練習はうまくいっているのか」


「知るか!傷ができるのを防ぐだけでも手一杯だ!あ、同じ所をずっとつつくな!穴が開けられる!ヒール!ヒール!ヒール!ヒール!」


のんきに俺が突き刺されるのを見ているロンロンが目に入った。作戦を開始した最初は興味津々そうに見ていたが、すぐに興味をなくしたのか、退屈しているのが見えた。口を開けてあくびまですがすがしくしていた。今や枝を拾っては土に絵まで描いているところだった。必ず、必ずに復讐する。痛みではなく、他のやり方での復讐を誓う俺だった。


「もう終りそうなのか。そろそろ退屈なのだ」


「自分の口で退屈だと言うな!率直なことにも程がある!こっちはお前のせいで死にそうだよ!ほら、ヒールをしないと、すぐにでもお腹が突き抜けられる勢いだ。知りたくもない俺の内側の状態を見る危機だろ!ヒール!ヒール!ヒール!」


「仕方ないのだ。回復魔法に適性のある二斗が悪いのだ」


「不可抗力だったように言うな!きっと、もっと良い方法があったはずだ!平和な修練をする方法が」


ロンロンは頭を横に振った。


「本当にそう思うなら、早く魔法を学ぼうとする心を改めるのだ、二斗。何でもさっさと終わらせようとするのは二斗の悪い癖だ。人生で簡単に得られるものがあるはずがないじゃないか」


「達観したように言うなって!そして人間、楽な道を追求するのが当然だろ!誰が敢えて苦労しようとするんだよ!」


「まだ悟りを得ていないのか。それに、敢えて苦労しているのは、二斗のほう見たいだが」


「もう、そんなことはどうでもいい!早く助けてくれ!」


俺がもがいて回復魔法を叫ぶと、ロンロンは「仕方ない」と言いながら席を立った。尻をたたいて鞄から何かを取り出した。


それは剣というにはあまりにも大きすぎた。大きく、分厚く、重く、そして大雑把過ぎた。剣身が漆黒を宿したかのように暗いその剣はロンロンが持つには誰が見ても無理があるそうだった。いや、その剣、どう見ても黒い剣士が使えそうなもんだろ!それにどうやって鞄から取り出したんだよ!小さい鞄の中に入れるわけないだろ!お前の鞄は四次元ポケットなのかよ!突っ込む部分が多すぎた。


「ロンロン、まさかそれを振り回す気か。怪力少女だったのかよ」


ロンロンはにやりと笑ってみせた。まさか事実なのか。


「ハハハ、そんなはずないじゃないか。そんな能力などない。余興で取り出してみただけだ。私のように可憐な少女に大剣とは似合わないのだ」


再び大剣を鞄の中に入れて、別の剣を取り出した。レイピアに見える剣だった。何度みても小さな鞄に大剣が入ったり出たりするのは不思議だった。


「ちなみに気になるように見えて言ってくれるのだが、鞄には空間魔法の一種がかかっている。見える大きさと内側の大きさが違い、重さもまた実際の重さとは違うのだ。かなり高価なものだ」


「確かに気になってはいたけど、そんなことより早く助けてくれ!ヒール!ヒール!ヒール!」


「家でお金になりそうなものを取る時は本当に役に立った。この鞄のおかげでたくさん持ってくることができたのだ」


「ただ不孝に利用された鞄じゃないか!不孝の助力者だ!しかもそんなに高価なものなら売って借金でも返してしまえ!」


ロンロンは俺の叫びには答えず、レイピアを引き抜き、すばやく俺のほうに距離を狭めた。神速のように刺さるレイピアはそのまま後尾にあったツリーバードを刺した。ツリーバードは悲鳴とともに倒れた。俺は驚き、ツリーバードの群れも仲間の死に反応したのか、動きを止めてロンロンを眺め始めた。


「オオオ!ロンロン、やればできる子じゃないか!その勢いで早くツリーバードを一網打尽するんだ!」


ロンロンはレイピアを素早く振った。剣術を習ったというのは事実なのか、数羽のツリーバードが倒れて散らかっていた。しかし、それは群れの一部に過ぎなかった。海の中の牛乳の数滴を滴下するようなもので、全体的な数はさほど変わっていないように見えた。徐々に囲まれ追い込まれるロンロンの姿が見えた。


「ドラゴンを召喚しろ。お前がそんなに自慢した真紅の女帝を召喚すればいいだろ。もしかして、ドラゴンを召喚するにはツリーバードという生き物が弱すぎるのか。それなら安心しろ。絶対にそう思わないんだ。ライオンは狩をする時、いつでも全力を尽くすって言うだろ。この状況から逃れると何でも構わないから」


「で…できない」


ロンロンは迫って来るツリーバードを最大限に脅かした。その中、つぶやく声が聞こえてきたのだ。


「何だって」


「だからできないのだ!」


「何をできないんだ。まさか、ドラゴンを召喚できないということではないだろう?そんなに自慢したじゃないか。契約の話からうそだったのか!」


「ち、違うのだ!契約しているのも、ドラゴンを召喚できるのも全部事実なのだ!ただ…ただ…」


「ただ、何だよ!」


俺はロンロンに問い詰めるように叫んだ。仲間として襲ってくる不安の正体を知る必要があった。


「今は召喚できないのだ!そ、そ…その…お金がなくなったのだ!」


「急に何のお金の話だ!お前が金がないことは皆が知っている事実だろ。今さらアピールする必要はない。お前が借り女だというのは公然の事実だから」


「そうではなくて。いや、それはそうけど」


「焦らさずに早く言え」


「お金がなければドラゴンを召喚できないのだ!」


「…どういう意味だ」


後頭部が冷たくなった。


「私とドラゴンの契約条件は召喚の時に相当なお金を支払うことだ。特に金ならもっと良い。これまでは、家から持ってきたものでなんとか召喚できたが、今はそれがないじゃないか。呼びたくても呼べないのだ!」


すると、今のこいつは全く役に立たないということか。闇金を借りた理由も、その多くのお金が突然消えてしまった理由も、こいつがお金を召喚に全部使ってしまったから?ドラゴン召喚師という有能なイメージを維持するために手に負えないお金を使ってしまって?


「有り得ることかよおおおおおお!」


俺は草原が驚くほど叫んだ。その声に反応したのか、ロンロンを狙ったツリーバードの視線が俺に注がれた。再び俺という餌の存在を思い出したようだ。


「もうどうでもいい」


俺の方に走ってくるツリーバードの群れを見ながら、絶叫してレイピアを振り倒れるロンロンを見ながら、ツリーバードが俺の全身をつついているのを見ながら、俺はそう思った。最後に俺の視界に入ったのは一羽のツリーバードが飛び上がって額を力いっぱい突き刺す姿だった。それを最後に俺の世界は暗転した。

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