嵐の前の2
オレには前世の記憶がある。
地球という惑星の日本という国に生きていた。
天涯孤独のオレは若くして力でのし上がり、組頭に台頭を張ったヤクザだった。
若い頃から無茶をしまくって他の同業とシノギを削る荒れくれのならず者だった。
血生臭い荒事は日常茶飯事。
毎日が命のやり取り。
オレも人の命を物のように扱い、何人もその手に掛けてきた。
年若かったがガタイは非常にデカく丈夫で、並大抵のことじゃビクともしないのが自慢だった。
血と暴力に飢え、女を抱きまくりの廃堕な日々を繰り返しきた。
そんなオレでも苦手なものがあった。
酒だ。
アルコールだけは昔から駄目だった。匂いを嗅ぐだけでクラッときちまう超下戸なのだ。
だから酒だけは絶対に飲まない。近くにも置かない。置かせなかった。
このことは愛人どもも舎弟どもも誰も知らないオレだけの秘密だった。
建前上は、常に素面で倒れる時は前のめりで、を謳って誤魔化していた。
しかし、ある日オレはやらかしちまう。遊んでいたキャバクラで情婦の女どもが美味そうに食ってたキャンディみたいなチョコレートの菓子を思わず食っちまった。
甘いものが好きだったオレだが、これがマズかった。いや、チョコは甘くて美味かったが中に酒が入っていたんだ。
酒の匂いにさえ極端に酔うオレは、一発で酩酊しちまって、運悪くそこに敵対組織の組員がカチコミしやがった。
普段のオレなら銃弾ポン刀飛び交う切った張ったの荒事に何のそのと、無双状態なんだが、たかが菓子に入ってた酒如きに酔っ払ってまともに喧嘩も出来ない有り様であっさりと命取られちまった。
そうして呆気なく死んじまったそのあとは真っ暗闇の中をボーッと彷徨ってフヨフヨと長いこと漂っていた。
その間に色々と考えたさ。
自分のこれまでの人生を振り返ってみて。
ま、好き勝手生きたから後悔はしていない。
殺し殺される世界に自分から足を踏み入れたのだから。
ただ――――
もし、違う道があったなら、オレも違う人生を歩んでいたのだろうか。
そんなことを思ったら、そしたら急に暗闇の向こう側から眩しい光が差して、オレを吸い込んだんだ。
眩ゆい光の先――――
――――気が付いたらオレは血肉が溢れる臓腑の産湯に浸かって、この異世界に二度目の誕生をした。




