8話 五日目 新たな始まり
四日間の休み経て、元の生活に戻る日が来た。
残念ながらこの町を去る必要がある。
好きだったあの小説と同じように、私はメグミとシキの二人の行く末がわからないまま去る落ちになるのだろう。
ただ一つ確実なのは、私自身の恋は一歩引いてしまったので、ここで終わり、ということだ。
どこから聞きつけたのか、メグミは一人駅まで見送りにわざわざ来てくれた。
「お姉ちゃんができたみたいで、嬉しかった。」
「ふふ。私も妹ができた気がしたわ。」
私は愛想よく答えたが、本当は妹ではなくもっと別な関係になりたかった。
電車はすでに来ていて、私は乗り込む。
「もし東京に来ることあったら、教えてね。待ってるから。」
「はい!」メグミは手を振る。しかし出発までまだ数分あった。
「ふふっ。出発はもう少し後よ。」
私は笑みを浮かべはいたが、寂しく言った。
本当にここで終わり、っでいいのだろうか。
今までと同じように、私の気持ちは何もなかったかのように消えていくのだろうか。
終わらせたくない。
私は、思いだけはちゃんと伝えたい、と思った。
この短い時間だったけど、私は確かに彼女に恋心を抱いていたはずなのだ。
気づけば、私は急に電車から降りて、メグミに近寄り肩を掴んでいた。
メグミは目を見開き、驚いた表情をしている。
「メグミちゃん、本当は私はメグミちゃんのこと好きだったんだ。」
メグミの顔にパッと笑みが浮かんだ。
「知ってました。」
「え?」
「何となく一緒にいるときの感じとかで伝わってきてはいました。」
「……。え?」
「それに、貸してもらった本も読んでて、想いは伝わりました。」
「……。え?」
「あと、ミキさんの話聞いていて、あのブログの作者はミキさんだと知ってたんです。」
「えっ!?」
「私、気が多いのかもしれません。でも私もミキさんともっと仲良くなりたかったです。」
メグミは照れたような顔をしていた。
間も無く電車が発車するとアナウンスが入る。
私は電車に乗る必要があったが、メグミに連絡先を素早く手渡す。
「これ、私の連絡先。」
「ありがとうございます、連絡しますね。」
電車の扉が閉まり、動き出した。私はメグミに手を振るとメグミも姿が見えなくなるまでずっと振り返してくれた。
私は胸が熱くなることを感じていた。
この夏の五日間、結局私は攻めることができずに終えてしまった。
しかし、諦めるわけにはいかない。なんといっても繋がりは残ったのだ。
確かにこの夏だけでは決められず、行く末はわからないままだ。
でも次の冬に勝負をかけることに決めたのだった。
続く
ご一読頂き、ありがとうございます。
今回はあっさりと書いてみました。
五日間は短いので、どこまで関係発展させられるかと思いましたが、あまり進んでませんでしたね笑
次は冬休みの五日間です。
関係がどこまで進むかわかりませんが、今回よりは深い仲になるはずです。
ご一読頂ければ幸いです!