4話 三日目の図書館
実家に帰省して三日目の朝、私は目覚ましが鳴る数分前に目が覚めていた。
何日も休んだおかけで積もった疲れはなく、体には力がみなぎっていた。
朝ごはんを食べ、今日は一歩前に進むことを決心し図書館に向かった。
図書館には待ち合わせの三十分前に着いたこともあり、まだメグミは来ていなかった。
家から持ってきた本を読み、メグミの到着を待つ。
しばらく待つと昨日に会った長身の女の子が図書館に入ってきた。
女の子はカウンタに向かうと本を返却する。
返却された本を遠目で見る限りは読んだことのない本に見えた。
「おはようございます。今日は早く来てくれたんですね。」
振り向くとそこにはやさしい笑みを浮かべたメグミがいた。
「おはよう。今日は待たせないようにしようと思ってね。」
メグミは席に着くと国語のテキストを取り出す。その日は国語を見ることになっていた。
メグミにテキストの問題を解いてもらっている間に、解答紙を読んでみるが、これなら解説できるとホットする。
メグミが時終わるまで、しばらくメグミを眺める。
真剣に問題を解いていて、こちらが眺めていることには気づきそうにない。
制限時間が来たので、解答と比較して謝っていた箇所を解説する。
解説しているとメグミは近寄ってくれるので、より近づいてもらえるように小さい声で話してみる。
予想通り、メグミはさらに近づき聞いてくれて、昨日より距離が縮まった気がした。
しばらくテキストの問題を解いた後に休憩時間となった。
私はメグミにいくつかの質問しなければならなかった。
「メグミちゃんは学校楽しい?」まずはジャブ程度の質問。
「うーん。楽しい時もあるけど、勉強とか色々大変です。」
「まぁそうだよね。友達づきあいとかは大丈夫?」
「友達づきあいですか。仲の良い友達といるときは楽しいですけど。」
「ふふ。メグミちゃんにも苦手な人いたりするの?」
「いますよ。ミキさんはどうだったんですか?」
「私?私は友達づきあいが苦手だった。一人で本を読んでいるほうが好きなくらい。」
「その気持ち、わかる気がします。」メグミは伏し目がちに話す。
「ところで、メグミちゃんは好きなこといたりするの?」次に重めのジャブ。
「えっ、好きな人ですか?」
「もしかして、もう誰かと付き合ってたりしてる?」
「いえ、誰かと付き合ったことないです。でも気になる人はいるかもです。」
私はメグミの話に身を乗り出す。
「詳しく教えて。」
「そんな……。図書館ですし恥ずかしいです……。」
「あら、ごめんなさい。」
「それならちょっと外に出る?」
「はい、それなら。」メグミは赤くなりながら言った。
図書館から少し離れたところにある喫茶店に着くとメグミは話し出す。
「私、学校に好きな子がいるんです。」
「……。へー。」
私は、なんとか声を絞り出したが、胸が詰まった。
「どんな子なの?」
「大人びていて、かっこいい感じなんです。」
「ふーん。同級生なの?」
「はい、でもそう見えないんですよ。」
「同級生なら、高二でしょ。子供っぽそうだけどね。」
「そんなこと……。でもミキさんからしたらそうかもしれないですけど。」
メグミのムッとした表情を見て、私はついつい苛立ちで想い人を悪くいうように言ったことを後悔する。
でも、メグミがその野郎に奪われることだけは阻止してやりたい、などと考えてしまう。
「で、その子はメグミちゃんのことどう思っているの?」
「友達かもしかしたらクラスメイトくらいかもです。あんまりお話する機会がなくって。」
「ふーん。じゃあまずは仲良くする機会を増やさないと。」
「ミキさんって、やっぱりモテたんですか?」
「えっ?私?私は……。多分モテてはなかったと思うんよ。
何回か告白されたことはあるけど、付き合ったことはないし。」
「何回も告白されているならモテてるはずですよ。」
「でも、私女子校だったんだよね。」
「えっ、っていうことは……。」
何か聞いて良いのか聞かない方が良いのかという目でメグミは見つめてくる。
「うん、そゆこと。」
「……。」
「私は共学なんですけど、好きになった子は女の子なんです。」
「え!?」重めのフックを返され、私は驚くしかなかった。