1話 帰省初日の出会い
私、ミキは社会人になり何回か目かの夏休みに迷いに迷って実家に帰ることにした。
帰省を決めた理由は、住んでいるところで何もすることがなかったからだ。
ただ、実家でも何かすることがあるわけではない。
実家に帰ると懐かしい匂いに心が踊る。まだ日も高いので高校時代に良く通っていた図書館に向かう。
ぐるりと図書の中をみて回る。全体的に何も変わっていないようで、通っていた時と同じ匂いがする。
本を手に取る。それは時に良く読んでいた恋愛小説だ。
女子高生二人が屋上で出会い、強い結びつきを得て、新たな一歩を進もうとする作品だ。
しかし、そのエンディングは二人のスタートを示していたが、その後の高校を卒業した後の二人は描写されていない。
それはまるで、その後も結びついていくことも、その時点で終わることも想像できてしまい、私は気持ちが悪かった。
何回も読んでいるので、さっと読み終わると周りの景色を見る。
そこにいる人は十数年前にいた人たちと変わらないような人たちがいた。
ご老人もいるし、中年のおじさんやおばさん、そして小学生。
女子高生の女の子がいた。
長い黒髪をして、あどけない顔をした少女が、静かに本を読んでいた。
その本は、高校時代に私も読んだことのある少女小説だった。
話したい、私はそのときなぜか強く思った。
気持ち悪がられるかもしれないが、その少女と話がしてみたくなったのだ。
年齢が一回り以上は離れているので気持ち悪がられそうで恐れを感じる。
結局、私には無理だった。
私は気づけば図書館を出て、自転車に乗り、帰途についていた。
情けないことに、ただじっと見ていることしかできず、胸が苦しくなり敵前逃亡してしまったのだ。
あの小説の主人公なら突き進んだだろう。でも彼女たちは両方とも女子高生だ、と言い訳のように思う。
自転車でぼんやり家までの田舎道を進む。私は昔から畑を見ることが好きで、ぼんやりと眺める。
青々とした草原や木々を見ることで、都会の喧騒で疲れた心が癒されることを感じる。
心が癒されたことと、あの少女を見れたことだけども、帰ってきて良かったと思う。
実家に着くと家には誰もいなかった。
スマホを見ると、祖母の家に集まっているから来るようにと連絡があった。
夕ご飯もそこで一緒に食べるようだ。
祖母の家は、実家から数分程度と近くにあり、小さい頃は良く通っていた。
今でも、帰省する度に顔を見せに行っていた。
祖母の家に着くと、祖父母の車ではない見たことはあるが見慣れない車が止まっていた。
そして、玄関を開けると、靴が何足もあった。なんとなく嫌な予感がした。
「こんにちは」と声をかけるも誰も出ないので、そのまま入って奥の広い和室に向かう。
和室は小さい頃によくいた場所で、私はそこが好きだった。
しかし、そこが親戚の集いで色々な人が集まるときは嫌いだった。
慣れ親しんでない人たちが集まっていて、その人たちと楽しそうに話す必要があったからだ。
悪い予感は半分は的中した。
居間には親戚が一堂に集まっていた。知っていれば来なかったのにと思うが、それが母親策略だったのだろう。
騙されてしまったからには諦めて、「こんにちは」と愛想よく言う。
「あら、ミキ、おかえり」祖母や叔母に返答され、集まった親戚から言葉をかけられる。
そして、「ミキは奥の席に座ってね。」と祖母にそう言われ、私は、はぁー面倒だなと思いながら、指定された席に座る。
「ミキが来たから、そろそろご飯食べ始めようかしら。」
祖母がそう言うと、叔母は調理場の方を向いて、「メグミご飯食べるわよ。」と声をかける。
トタトタトタと音がした。そして、図書館で見た少女が部屋に入ってきた。