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無益


エヴァンゼリンが、バアルに殴打され吹き飛ばされた。20メートル以上吹き飛ばされたエヴァンゼリンは宙空で身体を捻ると大地に着地した。


(厄介だね……)


エヴァンゼリンは口から血の塊を吐き出すと聖剣を構えた。20メートル先にいるバアルに灰色の瞳を投じる。


エヴァンゼリンは、既に左肩と右の太ももをバアルによって切り裂かれ、血が大量に流れ出ていた。


「何をしても無駄だ。心を読む私に勝てる者などおらぬ」


バアルは淡々とした声で語った。


「悪いが諦めるつもりはない。何があろうとどんな犠牲を払おうと僕は魔神を殺す」


エヴァンゼリンの双眸に殺意の光がゆれた。


「復讐か……。くだらぬ。そして無益だ。丁度良い、お前の魂は質がよさそうだ。イシュトヴァーン王とともにお前の魂もここで頂くとしよう」


金髪碧眼の少年の姿をした罪劫王が氷のような視線をエヴァンゼリンに射込んだ。





【場所:王都アリアドネ】

【サイド:人類の5カ国の連合軍】


◆◆


ほぼ同時刻。

王都アリアドネ。

王都を包囲する魔神軍の背後に、五カ国の軍隊が到着した。

ヘルベティア王国の同盟国であり、人類側の5つの国家群。


グランディア帝国


ヘルベティア王国


アーヴァンク王国


エスガロス王国


オルファング王国


の5つの王国軍が、魔神軍十五万の背後で展開して布陣する。


十万をこえる人間の大軍が隊列を組み、軍旗と槍が陽光を浴びて黄金の海となる。



ヘルベティア王国軍は、一番近い要塞から強行軍をへて到着した2万。その他の4カ国も、2万近い軍勢をそろえている。


アーヴァンク王国の王マクシミリアンが、軍隊の最前列に出て指揮を執る。マクシミリアン王は46歳。醜怪な容貌に肥満した身体の所有者である。一見、愚鈍に見えるが、歴戦の古豪として名高い。


「魔神軍め。なぜ、こちらに反応せぬ?」


マクシミリアン王は魔神軍の反応が鈍いことを不思議に思った。奴らは邪悪だが、決して愚かではない。だが、何故、こちらに向けて布陣をかえようとしない?


(何らかの作戦か? こちらに背後を見せることにどんな利点がある?)


人間同士の軍隊で相手が背中を見せているならば、一切躊躇せずに突撃する。それが定石だ。


だが、相手はモンスターの群れだ。油断はできない。何をしでかすか検討もつかぬ相手なのだ。


「陛下! 王都アリアドネのヘルベティア王国軍からの魔導通信です。王都に侵入した5万のモンスターの兵士が全滅したそうです!」


伝令兵が声をあげる。


「ほう。それは豪気な。ヘルベティア王国軍も中々やるではないか」


マクシミリアン王は讃仰の心とともに言った。


「いえ、ヘルベティア王国軍ではありません!」


「なに? では誰がモンスター達を全滅させた?」


「一人の少女が魔法にて壊滅させたとのことです!」


「はあ?」


マクシミリアンは太った顔に、マヌケな表情を浮かべた。一体この伝令兵は何を申しておるのだ?


「あの空に浮かぶ少女が、5万のモンスター達を一瞬で鏖殺したそうです!」


マクシミリアンは伝令兵が指さす空を見た。


肥満した王の視線の先。そこには桜金色ピンク・ブロンドの長い髪をなびかせ、灰色の服をまとった美しい少女が浮遊していた。





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