表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/197

プロローグ  死闘

2025年7月29日、ピッコマでコミカライズの先行配信がスタートします!

作画は、潮ナユタ先生です。皆様、ピッコマでコミカライズをお楽しみ下さい。

 巨大な悪魔が雄叫びをとともに、俺めがけて斧を真横に薙いだ。跳躍して後退し、巨大な斧から身をかわした。


 悪魔の斧が頬をかすめ、鮮血が飛び散る。


 俺は神剣〈斬華〉を握りしめ、敵の足めがけて、袈裟懸けに振り下ろそうとした。


 次の刹那、凄まじい衝撃が俺の左側面をおそった。激痛とともに体が吹き飛ばされる。


 20メートル以上吹き飛ばされて、迷宮の壁に叩き付けられた。


 悪魔の尻尾が、俺の死角から攻撃したのだ。


「ぶふォッ」


 口から血が、吹き出た。


 背中と左肩に激痛が走り、視界が一瞬暗くなる。


(意識を失うな! 死ぬぞ!)


 俺は自分を叱咤して、四つん這いの姿勢で《敵》を見据えた。


 俺の瞳に怪物が映り込む。


 迷宮の主。悪魔アンドラス。


 体長3メートルを超える巨躯。


 山羊に似た頭部、背中にはコウモリのような羽。


 下半身は黒い蜘蛛。


 尻尾は巨大な蛇。


 悪夢のような醜悪な外貌から、凶悪な殺気と魔力が吹き荒れ大気が鳴動している。 


 片手にもった巨大な戦斧には華麗な装飾がなされ、青白い幽鬼のような光を発していた。


 俺は俯せの姿勢で床に倒れた。


 悪魔アンドラスは床に倒れた俺を見て勝利を確信して近づいてきた。


 醜悪かつ獰猛な笑みが、悪魔の顔貌に浮かぶ。


  悪魔アンドラスは、巨大な戦斧を両手もちにして高々と掲げた。


 次の刹那、俺は全身をバネにして飛び起き、神剣〈斬華〉を逆袈裟に切り上げた。


 左下から右上まで、斜めに剣光が光る。


 神剣〈斬華〉から、魔力で形成された斬撃が飛ぶ。


 青い血が中空に飛び散った。悪魔の血だ。同時に悪魔の脚が斬り飛ばされて宙に跳ね上がる。


 悪魔は絶叫した。驚愕と苦悶に悪魔の顔が歪む。


 俺は全身を弾丸のようにして跳躍し、横薙ぎの斬撃で、悪魔の首を切り落とした。


 切断された悪魔の首から、青い血が奔流のように噴き出した。

 

 床に悪魔の首が、ゴトリと落ちる。


 首を失った悪魔はゆっくりと後方に傾き、やがて地響きのような音とともに床に倒れ込んだ。


 悪魔に視線を投じた。


「悪いな……。これは騙し討ちだ……」


 悪魔を倒した剣技は、津軽真刀流つがるしんとうりゅうの奥義の一つだ。


 奥義といっても負傷したふりをして俯せになり、その後、全身の筋力を使って跳ね起きて逆袈裟に切り上げる、それだけの技だ。


 卑怯だと言う人もいるかも知れない。


 だが、これは戦国時代に使われた剣法で、単純だが実戦では有効だ。複雑すぎる技は、現実の殺し合いでは役に立たないことが多い。


 悪魔アンドラスの首から神剣〈斬華〉を引き抜き、血振りをして鞘に収める。


 俺は悪魔の死骸から降りて部屋の出口にむかった。


 扉を開ける。


 銀髪の少女がそこにいた。



 少女は美しかった。 



 幻想でつくられたような完璧な美貌。処女雪よりも澄んだ白い肌。


 年齢は10歳前後で、黄金の瞳には涙があふれていた。


 少女の黄金の瞳が、俺の姿を鏡のように映し出す。


「ご主人様!」


 銀髪の少女が、俺めがけて飛び込んできた。


 俺は苦笑して、少女を抱きしめた。銀色の髪から甘い匂いがした。


「大丈夫だよ」


 俺は、少女の背中をポンポンと叩いた。


 少女は、そのまま俺の胸に顔を埋めて、震えながら俺に強くしがみついた。


 やがて少女は、端麗な顔をあげると、


「ご主人様。怪我はありませんか?」


 と言った。


「少しある。でも生きてるよ」


 俺は微笑を浮かべた。少女を安心させなければならない。


 この世界の、あらゆる恐怖と危険から彼女を遠ざけたい。


 この子は俺しかいないのだ。俺が護らねばならない存在であり、彼女が生きていることで俺も護られている。


 俺はふいに自分の右手が震えていることに気付く。


(ああ……怖いなぁ……)


 今頃、恐怖が襲ってきた。


(当たり前か……。俺は17歳で、ついこの間まで単なる高校生だったんだから……)


 ふいに緊張感がとけて、床に膝をついた。


 銀髪の少女が、あわてて俺に治癒魔法をかける。


 俺の体が淡い光に包まれ、負傷した箇所が治癒されていく。


 やがて、回復した俺は、床に倒れた悪魔の死骸を見やった。


「さて……あの悪魔を喰おうか?」


 俺が、そう言うと少女は微笑みながら、


「はい」


 と、答えた。

 


お読みいただき、ありがとうございました!

少しでも「面白い!」「続きが読みたい!」と、思っていただけたら、

『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると幸いです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 8メートルもある敵を袈裟懸けと首への刺突でしとめることが出来るのか!?体格差を考えると少し太い針が刺さったくらいのような気もする。刀が突き刺さったままというのも違和感がある。抜こうをす…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ