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回廊

「申し訳ありません。カイン陛下、パンドラ殿下。俺の独断で進めてしまいました」


 俺がカイン陛下に謝罪すると、カイン陛下は軽く首をふった。


「いえ。ナギ殿の決断は間違ってはおりません。元々、ナギ殿一行という人類最強戦力をどうやって罪劫王バラキエルにぶつけるか、それが戦術の根幹でしたから」


「その通りやわ。それにこれでウチら人類連合軍は正々堂々と魔神軍13万と決戦できるわけやしね」


 パンドラ王女が、微笑する。


「むしろ問題はナギ殿一行が、罪劫王バラキエルの面前に行った時です」


 カイン陛下が、複雑な表情を浮かべた。


「失礼ながら、ナギ殿は……、その……」


 カイン陛下が、言いにくそうに言葉を濁す。


「皇帝よ。それ以上は言う必要はない。それらの罪はワシが負う」


 レイヴィア様が淡々とした表情で言う。


 俺はゴクリと唾を飲み込んだ。


 エヴァンゼリンやクラウディア、メディアの顔に苦悩の影がさす。

 俺も馬鹿じゃない。

 レイヴィア様の言葉の真意は分かる。


(もし、罪劫王バラキエルが人質の少女たちの命を盾に『俺たちの命』を要求した場合、切り捨てる判断と行動をレイヴィア様が背負うつもりだ)


 俺はなんと言えばいいのか分からず、うつむいてしまった。


「ナギ」


 レイヴィア様が、俺に視線をむけた。


「なんでしょうか?」

「罪劫王バラキエルと対面する前に言っておくぞ。良いか? あの少女達の身に何かが起きても、それはワシの責任じゃ。そなたに咎はない。忘れるなよ?」

「……レイヴィア様。それは……」

「問答をするつもりはない。そして、そなたは罪悪感を覚える必要もない」


 レイヴィア様は口を閉ざした。これ以上は話をするつもりはないという意思表示だ。


「取りあえず進もう。罪劫王バラキエルを直接見ないと対策も立てにくい」


 槍聖クラウディアが取りなすように言う。


「そうだな」


 俺は答えて、軍馬の腹を軽く蹴る。

 馬が軽くいなないて歩き出した。



◆◆◆◆



 俺たちは魔神軍の軍勢の真ん中を通り、『憂悶宮殿カストロ・ボニアス』の中に入った。

 魔神軍13万は、『誓約』に則り、俺たちに一切手出しをしなかった。


 魔物の軍勢の真ん中を堂々と進み、凱旋門のような門をくぐり、さらに馬を進めていく。

 宮殿が歯科医に映り込んできた。


「どうも、見ているだけで精神が不安定になる建物だね」


 勇者エヴァンゼリンが呟くように言う。

 俺も同感だ。


 統一感なく様々な様式美の建造物が、混ぜ合わさっているので観ていて心がザワつく。

 やがて、宮殿の扉の前に到達した。

 俺たちは馬を下りて、扉の前に立つ。


「『誓約』で安全は保証されているとはいえ、緊張しますね」


 メディアの声には不安が滲んでいた。


「まあな、でも入らないとどうしようもない」


 俺が答える。

 誓約を交わした以上、俺たちは罪劫王バラキエルの午餐会に出席しないといけないのだ。

 誓約を破ると魂が損壊する。つまり死亡してしまう。


 宮殿の内部に足を踏み入れるのは絶対条件だ。

 だが、緊張はするし、警戒心も出る。


「行くぞ」


 俺は扉に手を掛けて開けた。

 宮殿の内部は、魔法光の照明があった。

 ヴェルサイユ宮殿の鏡の回廊と似ている。


「この回廊を真っ直ぐ進んで下さい」


 罪劫王バラキエルの声がどこからともなく響く。

 俺たちは警戒しながら進んだ。


 アチコチに彫刻があった。

 悪魔、動物、植物、人間をモチーフにした彫刻もあった。


 どれも技巧的には優れているが、まったくと言って良いほど感銘を受けない。仏像つくって魂入れずとでもいおうか、安っぽい感じだ。


 回廊が荘厳な分だけ、彫刻の安っぽさが浮き彫りになっている。

五分後、回廊の奥に扉が見えてきた。


「さあ、その扉の先に私はいますよ」


 罪劫王バラキエルの声が再び響く。

 俺は扉を開けた。



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