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神器ミスティルテイン

 だが、ディアナ=モルスはリッチーであり、肉体に痛覚を感じる機能が薄い。


 無表情のままナギに横蹴りを放ち、ナギを吹き飛ばす。


 ナギは後方に吹き飛ばされると、クルリと宙空で回転して、地面に着地した。


 罪劫王ディアナ=モルスと近接戦闘を行ったせいで、ナギの肉体の胸、腹、手足が、『腐食ディア黒霧オルド』で腐食する。 


すぐさま、大魔道士アンリエッタが、後方から治癒魔法でナギの肉体の腐食を治癒する。


 ナギは罪劫王ディアナ=モルスに黒瞳を向けて観察した。


「まずいな……」


 罪劫王ディアナ=モルスの切断された左腕がすぐに生えていき、元通りになった。


 しかも、魔力がほとんど減っていない。


 こちらは、肉体が損傷して体力が減少している。


(このままの状態が続けばジリ貧だ。いずれは体力と魔力の限界がくる。それに剣撃では致命傷を与えにくい)


 ナギの顔に冷たい汗が流れた。


罪劫王ディアナ=モルスはリッチーだ。


 痛覚が鈍く。魔力総量が大きいのですぐに斬撃からのダメージから回復してしまう。


(何か、対策を練らないと……)


 ナギがそう思った時、メディアが念話テレパティアを飛ばしてきた。


『ナギ様』

『どうした?』


 ナギは罪劫王ディアナ=モルスと斬撃を交えながら念話テレパティアを飛ばす。


『罪劫王ディアナ=モルスの『腐食ディア黒霧オルド』は、なぜ罪劫王ディアナ=モルスには効かないのでしょうか?』


 メディアが問う。


『?』


 ナギは、


(確かにその通りだな……)


 と思った。


 罪劫王ディアナ=モルスは『腐食ディア黒霧オルド』を、常時、肉体に黒い霧の鎧のようにしてまとっている。


 なのに、罪劫王ディアナ=モルスには『腐食ディア黒霧オルド』による損傷がない。


『もしかしたら、罪劫王ディアナ=モルスの体表に何らかの術式があり、『腐食ディア黒霧オルド』の効果を無効化しているのでは?』


 メディアが仮説を述べた。


(そうか。もしかしたら……)


 ナギは、先程切り落とした罪劫王ディアナ=モルスの左腕に視線を投じた。


 地面に落ちた罪劫王ディアナ=モルスの左腕にはまだ『腐食ディア黒霧オルド』の効果が残っており、黒い霧のように左腕には『腐食ディア黒霧オルド』がまとわりついている。


 ナギは、罪劫王ディアナ=モルスと苛烈な剣撃を撃ち合いながら、タイミングを測った。


 やがて、横薙ぎの斬撃を放つと、跳躍して罪劫王ディアナ=モルスと距離を取り、罪劫王ディアナ=モルスの切断された左腕の近くに移動した。


 そして、《軍神オーディアンズ使徒マギス》を発動した。


 軍神オーディンから授けられた神器の一つ『ミスティルテイン』を宝物庫アイテム・ボックスから取り出す。


 神器の権能はナギの脳内にインストールされており、必要だと感じた時、本能のように自然とその時々に必要な神器が取り出せるのだ。


 ナギは『ミスティルテイン』を手に持った。


 『ミスティルテイン』は、折れた剣の形状をした神器で、突き刺したモノを空間転移する権能がある。 


 先端は、ギザギザで、フォークのようだ。


 ナギは『ミスティルテイン』を罪劫王ディアナ=モルスの左腕の人差し指を切断して、剣先に突き刺した。


 権能が発動し、罪劫王ディアナ=モルスの人差し指が空間転移する。


 罪劫王ディアナ=モルスが、間合いを取ったナギにむかい蛮刀を振り下ろしてきた。


 ナギは神剣〈斬華〉で蛮刀を受け止める。


 直後、罪劫王ディアナ=モルスに異変が生じた。


 罪劫王ディアナ=モルスの顔が苦悶に歪む。


「これは一体……」 


 罪劫王ディアナ=モルスの肉体が痙攣した。


「効いたようだな」


 ナギは罪劫王ディアナ=モルスを横蹴りで吹き飛ばした。蹴りを放った足は『腐食ディア黒霧オルド』の効果で、腐食したがすぐに治癒魔法で癒やす。


「私の身体にいったい何をした?」


 罪劫王ディアナ=モルスが腹部を押さえて、地面に片膝をつく。


「お前の腹部に、お前の左の人差し指を転送しただけさ」


 ナギは罪劫王ディアナ=モルスの腹部を指さした。


 罪劫王ディアナ=モルスの顔が驚愕に染まった。


「お前は『腐食ディア黒霧オルド』は万物を腐食させる、と言っていた。だが、なぜかお前自身は『腐食ディア黒霧オルド』によるダメージがない。

だから仮説を立てた。もしかしたら、お前の体表に何らかの術式があり、それが『腐食ディア黒霧オルド』の効果を無効化しているんじゃないかとな。なら、お前の内部はどうか? 

 お前の内部には『腐食ディア黒霧オルド』の効果があるのではないか? そう考えたのさ」


 そして、どうやら予想通り効果があったようだ、とナギは言う。


 罪劫王ディアナ=モルスの肉体が見る見るうちに腐食していった。


「まさか……。私の体内に転送できるなんて……」


 罪劫王ディアナ=モルスが苦悶のうめき声を出す。


「俺がどんな神器を持っているかまでは把握できていなかったようだな」


 正直、ミスティルテインという神器がなければ勝利は難しかったかもしれない。


 ナギは黒目に憐憫を宿して、腐食していく罪劫王ディアナ=モルスを見た。


「くそ……」


 罪劫王ディアナ=モルスは絶望した瞳をナギにむける。


 わずか十数秒後、罪劫王ディアナ=モルスの全身が腐食し、肉塊とかして崩れ去った。


 罪劫王ディアナ=モルスの消滅とともに、竜王バハムートも消滅した。「終わった……」


 ナギは神剣〈斬華〉と神剣〈骨斬り〉を納刀した。そして、二つの神剣を腰の剣帯に吊す。


 罪劫王ディアナ=モルスを倒した事で、黒曜宮マグレア・クロスも消滅するだろう。


 仲間達がナギの元に近づいてきた。


「ナギ様、すぐに治療を致します」


 セドナが、ナギに治癒魔法をかける。


「助かるよ」


 ナギはセドナの銀髪を撫でた。セドナが嬉しそうに頬を染める。


「強敵でしたね」

「ああ、神器がなければ、どうなっていたか分からない。軍神オーディン様に感謝するよ」


 ナギは微笑した。 

  


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