竜王バハムート
ナギは罪劫王ディアナ=モルスを見た。
赤紫の長い髪。赤紫の瞳。端麗な顔。二十歳前後の美女の姿。
白い装束に身を包み、全身が黒い霧で覆われている。
外見は人間だが、全身から滲み出る猛悪なオーラが、怪物である事を物語っている。
ナギたちは、罪劫王ディアナ=モルスと距離を取りつつ身構える。
「アンリエッタ、レイヴィア様、負傷は?」
ナギが、自分の後方にいるアンリエッタとレイヴィアに振り返らずに問う。
「……もう治った」
「ワシも魔法で完治したわい」
アンリエッタとレイヴィアが答える。
ナギは自分が直した左腕の前腕を見た。
奇妙な事に服が腐食せず、内部の肉体だけが腐った。
腐食の速度は凄まじく、あの黒い霧にあと3秒も触れ続けたら、腕が腐り墜ちていただろう。
「よく来たな。相葉ナギ。ここまで辿り着けたのを褒めてやろう」
罪劫王ディアナ=モルスが、全身から凶悪な殺意と魔力を吹き出しながら言う。
「運が良いことに仲間が優秀なんでね。無事にここまで辿り着けた」
ナギは罪劫王ディアナ=モルスを観察しながら言う。
頭をフル回転させて、弱点や能力を推理する。
こちらから、仕掛けようかと思ったが、罪劫王ディアナ=モルスの全身が黒い霧で薄く覆われている為、攻撃を躊躇していた。
「残念だったな。罪劫王ディアナ=モルス。せっかく集めた仲間たちは全員消えたぞ」
ナギが挑発する。
観察する時間を稼ぐ為にナギは舌戦を選んだ。
だが、罪劫王ディアナ=モルスは嘲弄の笑みを浮かべた。
「奴らは駒だ。仲間などではない。しかも、下等な駒だった。お前達の内、一人さえも討ち取る事が出来なかった。惰弱で、役に立たぬ連中だ。こんな事なら、最初から私が出れば良かった」
罪劫王ディアナ=モルスが一歩前に出る。
「まあ、良い。ここでお前達を全滅させれば同じ事だ」
「出来るかな?」
ナギ達が武器を構える。
「容易くできる。私の異能『『腐食の黒霧』は、この世に存在する全ての有機物を腐食させる事ができる」
罪劫王ディアナ=モルスが、自らの異能を説明した。
誓約によって、自分の能力や秘密を相手に知らせると、自分のステータスを底上げできるのだ。
罪劫王ディアナ=モルスの能力が、秘密の開示とともにレベルアップしていく。
「生命ある存在は全ていつかは滅びる。お前達が生命体である限り、私に勝てる可能性は皆無だ」
罪劫王ディアナ=モルスが宣言する。
「お前も生命体に見えるがのう。少なくとも外見は人間じゃ」
大精霊レイヴィアが、桜色の瞳を罪劫王ディアナ=モルスにむける。
「私を人間ごときと一緒にするな。私はリッチー。『不死者の王』だ」
罪劫王ディアナ=モルスは、蛮刀を虚空から取り出した。
リッチーとは、人間が禁術をもちいて、最上位のアンデットであるリッチーに転生した者の事だ。
強大な魔力と、膨大な魔力の知識を持ち、その圧倒的な魔導の力は天災レベルの魔法を操る能力を持つ。
しかも、罪劫王ディアナ=モルスは魔神の加護を受けている。
その強さは計り知れない。
「『闇の主』たる魔神に逆らう愚か者どもめ。『神』に逆らった罰を受けるが良い」
リッチーが、蛮刀をナギ達にむける。
「『神』? 女神ケレス様に聞いた話だと、お前の飼い主である魔神とやらは『僭神』という神々の中でもレベルが低い神様だそうだな」
ナギが、嘲弄する。
敵を怒らせるのも兵法の内だ。怒りで精神が乱れた者は必ず能力が低下する。
「僭神とは神を僭称する紛い物だろう。『魔神』などどご大層な名乗りを上げているが、『神もどき』と呼称を変えた方が良いんじゃないか?」
「貴様ァア!」
罪劫王ディアナ=モルスが、怒りの咆吼を上げた。
そして、
「竜王バハムートよ。来たれ」
と召喚術を発動した。
罪劫王ディアナ=モルスの召喚術により、空に魔法陣が展開する。
そして、竜王バハムートが出現した。
全長30メートルを超えるドラゴンが、咆吼する。
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