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罪劫王ディアナ=モルス



女神ケレスは、ナギ達が神界から出なくてはならない時間になったと告げた。


 これ以上、ナギがいると神律に違反するのだそうだ。


「本当はもっと長く滞在して、英気を養って欲しいのですが~。申し訳ありません~」


 女神ケレスが、ナギ達に謝罪する。


「いえ、十分、休息を取れました。心から感謝申し上げます」


 ナギが代表して礼を言う。


「その、ケレス様。これはボクの個人的な好奇心で聞くんだけど……」


 勇者エヴァンゼリンが、女神ケレスに質問した。


「はい。なんでしょうか?」


 女神ケレスが答える。


「このままボク達が神界に居座り続けるとどうなるのですか?」

「そうですね~。神律に違背した事になりますから~。ナギ様の故郷の地球という惑星がある宇宙が、3分の1ほど消滅しますね~」


 女神ケレスは、ノンビリとした口調で言う。


 ナギ達の顔が蒼白になった。


 いつも無表情な大魔導師アンリエッタでさえも顔面蒼白になっている。


「ちなみに残り時間は、あと14秒ですね~」


「「すぐに黒曜宮マグレア・クロスに転送して下さい!」」


 ナギ達が叫ぶ。


「分かりました~。では当ホテルへの、またのお越しをお待ちしております~」


「そういうの要りませんから! 早く!」


 ナギが叫ぶと同時に、ナギ達の身体が白い光りに包まれる。


 次の刹那、ナギ達は黒曜宮マグレア・クロスに転移した。







 白い光が弾けて、消滅した。


 ナギ達の視界が白い光から、通常の状態に戻る。


 黒曜宮マグレア・クロスに転移したナギ達の眼前に、ひびわれた赤土の大地が広がっていた。


 地平線まで続く、草木が一本もない荒れ地。


 空は赤黒く染まっている。


 ナギたちは、この空間に充満する殺気と魔力に身を堅くした。


 全身に緊張が走り抜ける。


「この魔力は……」


 ナギが神剣〈斬華〉の柄を握る。


「……間違いない。罪劫王ディアナ=モルスの魔力……」


 大魔道士アンリエッタが答える。


 以前、王宮で罪劫王ディアナ=モルスは、自らの映像を魔法で投影して、宣戦布告してきた。


 その時に、罪劫王ディアナ=モルスの魔力の波長をナギたちは覚えていた。


 魔力には各人の波長というものがあり、人それぞれが違う。


 例えるならば声や指紋と同じだ。


 その人間の魔力を感知すると、誰の魔力かが特定できるのだ。


「ようやく当たりじゃな。この黒曜宮マグレア・クロスには飽きていた所じゃ」 


 大精霊レイヴィアが、好戦的な微笑をする。


「レイヴィア様に賛成だよ。ボクは一刻も早く、黒曜宮マグレア・クロスを出て外の空気を吸いたいよ」


 勇者エヴァンゼリンが同意する。


「しかし、肝心のディアナ=モルスはどこに?」 


 槍聖クラウディアが周囲を見渡す。


 次の刹那、罪劫王ディアナ=モルスが、ナギ達の前方30メートルの地点に出現した。


 ナギ達が、一斉に武器を取って身構える。


 罪劫王ディアナ=モルスは、右の手の平をナギ達にむけた。


「『腐食ディア黒霧オルド』」


 罪劫王ディアナ=モルスが、自身の異能を詠唱した。


 同時に、罪劫王ディアナ=モルスの右手から、黒い霧が吹き出して、ナギ達に襲い掛かった。


 ナギは全身の肌が粟立つのを感じた。


 本能的に罪劫王ディアナ=モルスが放った黒い霧が危険だと悟る。


「避けろ! あの黒い霧に触れるな!」


 ナギの号令に全員が退避する。


 だが、『腐食ディア黒霧オルド』の黒い霧は、ナギ達の予想を超えて速くナギ達に襲い掛かった。


 退避しようとしたナギ、大魔道士アンリエッタ、大精霊レイヴィアの肉体の一部に『腐食ディア黒霧オルド』の黒い霧がかかる。


 ナギの左腕の一部が黒い霧に触れる。


 大魔道士アンリエッタの左足、大精霊レイヴィアの胸にも、黒い霧がわずかに触れた。


 激痛がナギの左腕を襲う。


「ぐう」


 ナギは左腕の前腕に激痛を感じた。


 黒い霧に触れた部分が、腐っていく。


 大魔道士アンリエッタの左足、そして、大精霊レイヴィアの胸も、黒い霧が触れた部分が激痛とともに腐る。


 大魔道士アンリエッタと大精霊レイヴィアはともに苦痛で顔をしかめた。


 ナギ、大魔道士アンリエッタ、大精霊レイヴィアは治癒魔法を使って、傷の治療をした。


 そして、罪劫王ディアナ=モルスと距離を取る。





読んで下さり、ありがとうございます。

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