喧嘩友達
「じゃかましい! 誰がペドフィリアだ!」
俺は怒鳴った。怒りで脳味噌が焼けそうだ。
「あの……ナギ様。どうかされたのですか?」
セドナが、オロオロしながら俺とメディアを交互に見る。
「ペドフィリア? なんじゃそれは?」
大精霊レイヴィア様が、首を傾げる。
「……ペド? 『地球』という異界の呪文?」
大魔導師アンリエッタが、白髪を指でクルクル弄びながら呟く。
ペドフィリアという単語は、セドナ達には理解できていないようだ。
「メディア」
俺は金髪ツインテールの幼女に黒瞳をむけた。
「なんですか? 私の愛しい、尊敬するナ、ギ、様?」
メディアが、俺を挑発して声を刻む。
「発言を撤回して貰おうか。そうしなければ報いは受けてもらうぞ」
俺は断じてペドフィリアではない!
そもそも、同い年以上の女性でないとエッチしたいとは思わん!
これだけは命をかけて断言する!
俺は拳を握りしめて、メディアに詰め寄る。
だが、メディアは狡猾にもセドナを抱きしめて、セドナを盾にした。
「セドナお姉様、ナギ様が怖いです~。私は怒られるような事はしてないと思うですよ~」
さっきと口調を変えてより、子供っぽいキャラを作って、メディアはセドナに哀願する。
「あの、ナギ様。私はナギ様のする事は全て正しいと確信しております。ナギ様はこの宇宙で最も偉大な御方ですから。でも……、メディアはまだ子供です。もしかしたら無礼があったのやも知れませんが、許してあげて頂けませんか?」
セドナが、庇うとメディアは、
「セドナお姉様、大好きです!」
と甘い声をだして、セドナにより強く抱きつく。
「大好きだなんて……、照れてしまいます……」
セドナは、耳まで頬を染めて膝立ちになりセドナを抱きしめた。
ダメだ。
セドナは既にメディアにやられた!
仕方ない。セドナが言うなら、まあ許してやるか。
暫し、俺は首をふり、冷静さを取り戻した。
「そうだな。俺も大人げなかった……」
俺はメディアを見た。
セドナは俺に背をむけた状態でメディアを抱きしめる。
そして、セドナの肩の上に顎を乗せたメディアは、
「へっ」
という俺を小馬鹿にする笑いを浮かべていた。
殺したい。
本気で殺したい。
かつてこれ程の殺意を覚えたのは初めてだ。
罪劫王よりも、魔神よりもコイツが憎い!
「うん。これからの旅も楽しくなりそうな予感がしますね~」
女神ケレス様が、ほんわかとした口調でのたまう。
天然ボケの女神様の声で一挙に怒りが冷めた。
まあ、良い。
考えてみると、メニュー画面の頃と性格が同じで、なんとなくスッキリもした。
品行方正で、皮肉や毒舌のないメニュー画面なんて味気ないよな。
こいつとは気の合う喧嘩友達くらいでちょうど良い。
ずっとそうやって来たんだ。
「メディア」
俺がメディアに微笑をむける。
「なんでしょうか、ナギ様」
「これからも宜しくな。頼りにしてる」
俺は本心から言った。
メディアは小馬鹿したような笑いを消して、真面目な顔になり、
「はい。ナギ様の為に働くのが私の使命です。私も頼りにしてますよ、ナギ様」
メディアは笑みを浮かべた。
良い笑みだった。




