メディア
メニュー画面のままではダメなのか?
疑問に思う俺に女神ケレス様が助け船を出してくれた。
「ナギ様、メニュー画面は見ての通り、進化しました。いつまでもメニュー画面では、素っ気ないでしょう~? 可愛い名前をつけてあげて下さいな。それに名前には大事な意味があるのです~。ナギ様とメニュー画面の魂は連結しています。ナギ様が、名付ける事により、名前を得たメニュー画面はさらに魂の繋がりを強めて、力を増します~。絆が深まるのです~」
「ああ、そうですか」
俺は得心した。魂と魔力の関連性については、俺もこの世界にきてから、女神ケレス様や、大精霊レイヴィア様に教えてもらった。
そして何より、実体験で得た経験で理解できる。
「名前か……」
俺は顎に手をあてて、暫し沈思した。
メニュー画面の名前……。
何か、この可愛らしい幼女に適した名前にしてやりたい。
ふと閃いた。
メニュー画面だから、……メディアはどうだろうか?
メディアは、古代ギリシャで崇められていた女神の名前である。
メニュー画面ともじってメディア。
安直かも知れないが、メディアという名前は響きも美しいし、可愛らしい感じがする。
この8歳くらいの外見の幼女にはピッタリだ。
「メディア、という名前はどうだ?」
俺はメニュー画面に、優しく尋ねた。
「メディア……。素晴らしい名前です。ありがとうございます。ナギ様」
メニュー画面、改め、メディアが、嬉しそうにはしゃぐ。
メディアの黄金のツインテールが、キラキラと輝きながら揺れる。
うん。可愛い。
セドナ達もメディアを微笑ましそうに見る。
「可愛い子ですね」
セドナがお姉さんぶって、妹を見るような眼で言う。
「ありがとうございます。セドナお姉様」
メディアが、嬉しそうにセドナに近づいて言う。
「私が、お姉様……ですか?」
セドナが、頬を染めて微笑を浮かべる。
本気で嬉しそうだ。
まあ、こんな可愛らしい幼女に「お姉様」なんて言われたら、どんな女性でもイチコロだろう。
しかし、あの毒舌で皮肉屋で、お調子者のメニュー画面が、進化するとこんなに純朴な性格に変わるのか。
有り難い。これで俺はメニュー画面に不快な思いをされずに済む。
セドナも凄く嬉しそうだな。
「そ、そうですね。私は10歳ですし、メディアよりもかなりお姉さんですね」
セドナが、薄い胸をそらして言う。
「はい。これから、どうぞ色々と御指導下さい、セドナお姉様」
メディアが、セドナの手を握る。
「は、はい! 任せて下さい。私は、メディアのお姉さんです!」
セドナが、メディアによって陥落した。
そうかセドナは妹が欲しかったのかもな。
まあ、メディアは外見が8歳くらいだし、セドナの妹役にはちょうど良い。
そして、俺はふと思った。
たいした事じゃないが、軽い疑問が浮かんだのだ。
「なあ、メディア」
「はい。何ですか? ナギ様」
メディアが、セドナの手を握りながら俺に紫瞳をむける。
「その姿は、8歳くらいの少女の外見だけど、どうしてその姿になったんだ?」
女神ケレス様によって進化したならば、別に幼女の姿でなくとも良かったのではないか?
俺が脳内でメニュー画面と話していた時は、16歳か、17歳くらいの女性の声だった筈だ。
なんで、17歳くらいの少女の姿ではないのだろう。
俺はずっとメニュー画面を、17歳くらいの女性だと感じていたので少し違和感があるのだ。
「私が、女神ケレス様から神力を頂戴し、自らの意志でこの容姿を選びました」
メディアが答える。
「そうか。どうして8歳くらいの幼女になったんだ?」
俺が問うとメディアが、俺に微笑をむけた。
「それはもちろん、ナギ様が重度のペドフィリア野郎ですので、ナギ様の性癖に合わせて差し上げました」
俺は即座にメディアにむけて右ストレートを放った。
閃光のような右ストレートだ。
メディアは、
「うわおおおっ!」
と叫びながら、熟練のボクサーのようにダッキングとウィービングで回避した。
「何をするですか! こんな可愛い幼女にむかって右ストレートはないでしょうが!」
メディアが、セドナの後ろに隠れながら叫ぶ。




