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朝食 ~ブルーマウンテンのコーヒー~

豪邸に入ると、リビングと寝室があった。


 なんとお風呂もあった。


「おお、お風呂だ!」

「お風呂です。ナギ様、凄いです! しかも、既に湯が沸いています!」


 セドナの言うとおり、ローマ浴場のような円形の浴槽にお湯がタップリと入っていた。


 ナギとセドナをすぐに服を脱いで風呂に入った。


 10人は楽に入れる浴槽で身体を湯に浸す。


「おお……」

「最高です……」


 ナギもセドナも夢見るような心地になった。


 黒曜宮マグレア・クロスに突入してから風呂など入っていない。


 死ぬほど、汗をかいて血と泥に塗れてきた。


 それが風呂で洗い流せるとは……、これを天国と言わずしてなんと言おう。


 しかも、浴槽は温泉水で満たされていた。


 身も心も溶けるような幸福感だ。


「ああ……、なんかもう魔神との闘いとか止めて、ずっとここでお湯に浸かっていたい……」


「ナギ様、それは良くないと思います……、でも本音は私もそうしたいです」


 ナギがセドナの肩に頭を預けた。


 セドナの長い銀髪が湯船で広がり、キラキラと輝く。


 二人と暫く無言だった。


 あまりに気持ちが良すぎて声が出ない。


(やばいな。なんか堕落しそう……。このまま美味しいご飯を食べて、漫画を読んでポテチを食べながらゴロ寝して過ごしたい。永遠に働きたくない。闘いたくない……)


 なんかもう、永遠のニートになりたい……。


魔神なんか無視しようかな……。


 いや、さすがにそういう訳にはいかないか……。


「セドナ、あと30分くらいしたら出よう。湯船から出るのは悲しいが……」

「そうですね……。なんだか悲しいです」


 セドナが悲しそうな顔をした。


 セドナは乙女だ。風呂に対する愛着は俺よりも強いだろう。


 俺たちは暫し無言で温泉水に浸った。


 そして、30分後、俺とセドナは浴槽から出た。


 さて、次に風呂に入れるのは、いつになる事やら……。

 


 



寝室に入るとベッドが一つあった。


 天蓋付きの巨大なベッドだ。


 そのベッドの両端に丸いテーブルがあり、俺とセドナの寝間着が置いてあった。


 俺は夜想のローブを脱いだ。


 黒を基調として銀で装飾されたローブを丁寧に畳んでテーブルの上に置く。


 そして、絹服の寝間着を着た。


 俺が振り返り、ベッドに入ろうとした。


 セドナが着替えていた。


 薄い清楚なネグリジェである。


「絹服ですごく着心地が良いです。まさか敵の根城で戦闘中に絹服を着てベッドで眠れるなんて……」


 セドナの黄金の瞳に感動の色が浮かぶ。


 俺も感動してるよ。こんな快適な寝間着で寝れるなんて天国だ。


 いや、ここは神界だから、天国みたいなもんか。


 俺とセドナはベッドの中に入った。


「なんだか、ナギ様と一緒に寝るのが久しぶりな気がします」


 セドナが、そう言って俺に両手両足をからめる。


 セドナの柔らかい肉体の感触が俺に伝わる。


 セドナの彫刻のように均整のとれた腕、足が、俺の肉体に密着し、甘い匂いが鼻孔をくすぐる。


「そうだな。俺もそんな感じがする」

「なんだか……、ずっとナギ様とこうしていたいです……」


 セドナが、俺と鼻先に触れ合う距離で微笑する。


 絶世の美少女の笑みに俺はドキリとした。


 10歳の少女だが、なんだか最近、『女』を感じるような……。


 いや、気のせいだな。あくまで俺はセドナのお兄さん役だ。


 俺はセドナの身体に両腕を回した。


「セドナの身体は柔らかいな」

「あ、ありがとうございます……」


 セドナの尖った耳が先端まで赤くなる。


 可愛い反応だ。


 子猫を見てるみたいだ。


 俺はそのままセドナを強く抱きしめた。


「お休み、セドナ」

「はい。お休みなさい、ナギ様」


 俺は瞳を閉じた。


 すぐに眠気が来た。


 セドナが寝息が聞こえた。


 セドナは寝息さえも可愛い。


 だんだん、眠気が強くなる。


 やがて、俺は強い眠りの中に落ちた。




◆◆◆◆◆◆





朝に俺とセドナは目覚めた。


 いや、ここは神界だから、朝かどうかは正確には知らないが、朝日のような陽射しがあるので多分、朝だろう。


 とにかく、俺もセドナも熟睡できた。


多分、十二時間くらい寝ていたと思う。


 凄い深い眠りだった。


 こんなに熟睡したのは初めてだ。


 そして、目覚めると同時に気付いた事がある。


 肉体も精神も完全に回復している。


 そして、身体全体がエネルギーで満ちていた。


 飛躍的にレベルアップしているのが自分でも分かる。


「すごいな。身体から気力と魔力が溢れそうだ」

「私もです。こんなに魔力が満ち溢れたのは生まれて初めてです」


 俺が言うとセドナが答える。


 俺もセドナも、身体から蒸気のように魔力が揺らめいている。


 女神ケレス様の神力が、俺たちに注ぎ込まれたのだろう。


 俺たちは着替えると食堂に行った。 


 そこでは地球の五ツ星ホテルのような朝食が置いてあった。


 ブルーマウンテンのコーヒー。

 エッグベネディクト。

 パンケーキ、

 スープ。

 フレッシュジュース

 焼きたてのクロワッサンなど、各種様々なパン。

 綺麗に整えられたサンドイッチ。

 キャビアを添えたサラダ。


 最高だ。


 俺とセドナは、食堂のテーブルについた。


 清潔な部屋で内装は白に統一されている。


 白い椅子。

 白いテーブル。

 白いスーツ。


 部屋の隅に青い花瓶があり、百合の花が生けてある。


俺たちは、さっそく朝食を食べ始めた。


 まずは、ブルーマウンテンのコーヒーを飲む。


「美味い。この柔らかい渋み……最高だな」

「香りも素敵です」


 俺とセドナは感歎した。


 ブルーマウンテンはコーヒーの苦味が、柔らかいのだ。


 カフェインで脳が冴える。


 そして、クロワッサンを千切って食べる。


 これも美味い。


 柔らかいパン生地が口の中でサクサクと音を立てる。


 パンの甘味が口内に充満する。


 キャビアを添えたサラダをフォークで食べた。


 キャビアが舌に乗り、その後はで潰す。


 良い食感だ。


 大量のキャビアがサラダに添えてあるので、野菜を一緒に食べる。


 うん、野菜とキャビアが口の中で混ざり合う。


 野菜にキャビアは意外に合うんだな。


 なんだか、俺もセドナも腹に少し入れたら、食欲がドンドン促進されてきた。


 エッグベネディクト、サンドイッチなどをドンドン頬張る。


「美味いな」


 俺が食べながら言うと、セドナも幸せそうに、


「最高です」


 と答えた。


 俺と銀髪金瞳のグランド=エルフは、朝食をたらふく食べた。


 ブルーマウンテンのコーヒーを飲み干して、その後、ポットから注いで二杯目のコーヒーを二人で飲む。


 暫く、二人で雑談しながらブルーマウンテンのコーヒーを楽しんだ。


「素敵な時間だな」


 こうやって、ノンビリと朝食を味わうと、心が落ち着く。


「幸福を感じます。ナギ様と一緒ですから……」


 セドナが、頬を染めて上目遣いで言う。


 可愛いヤツだ。


 というか、セドナのような絶世の美少女がすると上目遣いの破壊力が凄まじいな。 


 しかし、名残惜しい、もう少しこの居心地の良い豪邸でノンビリした。 出来るなら、あと10年くらいノンビリしたい。


 だが、そういう訳にもいかないだろう。


 俺はブルーマウンテンのコーヒーを飲み干した。


 俺に合わせるようにセドナもブルーマウンテンのコーヒーを飲み干す。 よし。気合いを入れ直そう。


 俺はパンと自分の太ももを叩いた。


「よし、行くか。早く、黒曜宮マグレア・クロスを攻略しないとな」

「はい。ナギ様の仰せの通りに」


 俺とセドナは立ち上がり、豪邸から出た。

    



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