経絡
祖父・相葉円心も寝技の達人だったが、女神ケレスもそれと同等レベルの強さだ。
そして、その技術は、津軽神刀流と同じである。
ナギはアキレス腱固めを防ぐ為に、女神ケレスの腹を足で押そうとした。
女神ケレスは素速くそれを防いで、両足でナギの左足を拘束する。
ナギと女神ケレスは正対しているので、女神ケレスの素足と純白のパンティーが、ナギには丸見えだった。
「あんまりマジマジと下着を見ないで下さい。照れてしまいます~」
「自分で脱ぎ捨てたんでしょうが!」
ナギが怒号する。
怒号するのは激痛がするからだ。
ナギの左足首に女神ケレスは容赦なく、アキレス腱固めを仕掛けている。
そのため、ナギの足首に激痛が走り抜ける。
「があっ!」
ナギは呻きながら、女神ケレスの足を解除した。
ナギの寝技の技術もまた見事だった。
黄金の髪と翡翠色の瞳をした女神の服の袖を掴む。
そして、引きこんで転がり、マウントを取る。
ナギは女神ケレスに馬乗りの形になる。
「おや、エッチな感じですね~」
女神ケレスは余裕を崩さない。
ナギはすぐさま、女神ケレスの腕関節を取ろうとした。
次の刹那、女神ケレスが、ナギの膝と肩を押した。
「うぉ」
ナギは驚いた。
女神ケレスが、巧みな身体操作で、ナギを翻弄して、逆にナギを押し倒す。
位置が入れ替わった。
女神ケレスが、ナギの腹の上に跨がり、馬乗りの形、つまりマウントを取る。
「逆転ですね~」
女神ケレスが、ナギを見下ろす。
女神ケレスは、パンツ一枚の姿で両足でナギの腹を強く挟む。
そして、腕はナギの右腕の関節とツボを抑える。
ツボは経絡とも言われる。
少林寺拳法でも、圧法というツボを攻める技がある。
人間の肉体には神経が集中している部分があり、そこを指で押さえられると激痛が走るのだ。
経絡などというと古臭いイメージがあるが、非常に実践的であり、アメリカ陸軍特殊部隊でも使用されている。
「くそ!」
ナギは悔しさに歯軋りした。
ナギの肉体が、金縛りにあったように動かない。
(こんな華奢な女性に手も足も出ない!)
ナギは胸中で歯軋りする。
女神ケレスは、人間の女性ではない。「神」だ。だが、外見が女性である以上、男として負けるのは悔しくてしょうがない。
しかも、女神ケレスは現在、純粋な体術でナギと勝負している。
そうである以上、劣勢である事は、ナギは女神ケレスに技術で負けているという事である。
その事実がナギのプライドを著しく傷つけた。
「まだまでですね~。ナギ様、それに私のパンティーにチラチラと視線が移動するのも良くありませんよ~、武道家失格です」
「男なんだから、しょうがないでしょう!」
ナギが叫んだ。
目の前にパンティー丸出しの美少女がいたら、見るに決まっている! そのせいで、集中力が削がれる。
なんていう罠だ!
いや、俺がスケベなだけだけど!




