正気
私の新作小説『【無双転生】~世界最強の魔導剣士は、異世界旅行を楽しみたい~』が、大好評連載中です。宜しければ、こちらも読んでみて下さい。
宜しくお願い申し上げます。
「セドナ! 目を覚ませ!」
ナギが、叫ぶ。
セドナとナギは交戦していた。
『アポロンの月桂冠』で、精神を支配されたセドナは、ナギを本気で攻撃していた。
《白夜の魔弓》で、ナギにむけて矢を速射する。
ナギは、神剣〈斬華〉で、矢を払い落とす。
(なんていう事だ)
ナギは矢を払い落としながら愕然とする。
まさか、セドナに攻撃されるなんて。
ナギはセドナを見た。
銀髪金瞳。
完璧な美貌をもつ美しい少女。
妹のように思っている愛しい少女。
この異世界で出会った家族のような存在。
それが、俺にむかって本気で攻撃している。
ナギの剣閃が鈍っていた。
精神的な動揺がナギの体を鈍らせる。
コロシアムを飛翔しながらセドナの矢を躱すが、回避する動きさえも鈍い。
(どうすれば良い?)
セドナを見た。
セドナの頭部にある黒い月桂冠。
『アポロンの月桂冠』。
あれのせいでセドナが、精神支配されている。
カエサルを先に倒すか?
だが、セドナを放っておくわけにはいかない。
ナギとセドナはコロシアム内を飛翔して、攻撃と防御を繰り返した。
ふいにセドナがナギに接近してきた。
セドナの《白夜の魔弓》が、唸る。
《白夜の魔弓》の先端についている短剣。
《白夜刀》が、ナギの喉笛めがけて襲いかかる。
一切の容赦の無い斬撃。
人を殺す斬撃だった。
「ぬうっ!」
ナギは戦慄して、セドナの斬撃を後退してかわした。
セドナが二撃目の斬撃をナギに見舞う。
ナギの脇腹を狙った斬撃だ。
ナギは神剣〈斬華〉で、弾き返した。
「セドナ! 正気に戻れ!」
ナギが叫ぶ。
セドナは無言だった。
そして、無表情のままだった。
人形のような顔のまま、サイボーグのようにナギを襲う。
セドナが、魔法を無詠唱で放った。
『水晶の散弾』
水晶が、散弾のようにナギに襲いかかる。
ナギは魔法障壁で、散弾を防ぐ。
魔法障壁に水晶の散弾が衝突して、轟音がなる。
(どうする? 考えがまとまらない)
精神が動揺して、思考が鈍る。
どうしても、良い思案が浮かばない。
苦悶するナギに対して、メニュー画面が、言った。
『ナギ様、一時的にセドナ様を昏倒させるか、もしくは勇者エヴァンゼリン様と、交代するべきです』
「しかし、それではセドナは……」
『落ち着いて下さい。ナギ様は、セドナ様にたいして思い入れが深すぎます。ナギ様は混乱しておられる。この状態では戦線が膠着するだけです!』
メニュー画面の叱咤にナギはわずかに冷静さを取り戻す。
『勇者エヴァンゼリン様と槍聖クラウディア様が、セドナ様と対峙する。
そして、ナギ様はカエサルを倒すのです。カエサルを倒せば、セドナ様は元に戻ります。
いつものナギ様なら、すぐにそう判断される筈です。ナギ様ほどの御方が、どうしてこんな簡単な事に気付かないのですか?』
メニュー画面が、厳しい声を出す。
「確かにそうだ……」
ナギは得心した。
俺ではセドナ相手に冷静でいられない。
冷静さを失えば闘いは負ける。
カエサルの罠なのだ。
こんな簡単で見え透いた罠に、どうして俺は気付かなかった?
ナギは自分が混乱していた事をようやく悟った。
ナギはセドナと距離を取り、セドナが放つ矢を弾き返しながら、エヴァンゼリンとクラウディアたちを見た。
クラウディアが、カエサルに太股を切られている光景が目に飛び込んだ。
(むこうもピンチか)
一瞬で、エヴァンゼリンたちも劣勢であると分かった。
大精霊レイヴィアと大魔導師アンリエッタが、黒い鎖で捕縛されている。
『エヴァンゼリン!』
ナギが念話を使った。
『交代する! 俺がカエサルを倒す! エヴァンゼリンとクラウディアは、セドナを抑えてくれ! すぐにカエサルを倒してセドナを解放する!』
『了解! ボクとクラウディアで、セドナを抑えるよ!』
エヴァンゼリンが、カエサルと剣を交えながら念話を返す。
『了解した。カエサルは私達では手に負えん。ナギに任せる』
クラウディアも闘いながら応答する。
ナギ、エヴァンゼリン、クラウディアの三人が合意した。
その刹那、カエサルが笑った。
「そうはさせんよ」
邪悪で狡猾な笑いだった。
そして、百戦錬磨の猛者だけが出せる威圧感に富んでいた。
カエサルの独語は小さいが、なぜかナギ、エヴァンゼリン、クラウディアの耳に強く響いた。
ふいにセドナの美しい銀髪の上にある月桂冠が輝いた。
黒く邪悪な光りを放つ。
セドナが、人形のような無表情のまま、《白夜刀を両手で引き抜いた。
白銀色の美しい短刀をセドナは両手に持つ。
そして、左手の短刀を自分の首に刺そうとした。
「止めろ!」
ナギが叫び、セドナにむかう。
そして、セドナの手首を掴んでセドナが首を短刀で貫かぬように止めた。
その刹那、隙が出来た。
セドナが、ナギの腹部を刺した。
「あ……」
ナギが自分の腹部を見た。
セドナの短刀が、ナギの腹部に突き刺さっていた。
「セドナ……」
ナギは黒瞳をセドナにむけた。
銀髪金瞳のグランド・エルフの少女は、無表情のままナギを見つめた。
仕事が無事に一段落つきまして、ようやく定期的に最新話を書いて、投稿できる状態になりました。
この物語の最終話とラストは既に決めてありますので、どうか完結するまでお付き合い下さい。
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