出会い
昔から温めていたネタを投下させて頂きます。
長いお話になると思いますが宜しくお願いします。m(__)m
―― その日、世界に福音が齎された ――
ここはヴェツレムのナレザという小さな町。
貧しい農村であるその町は飢饉と疫病に見舞われていた。
村人は皆飢えと病に倒れ、日に日に人が天へと召されていった。
その日その村のとある家、古いレンガ作りの小さな家の小さな部屋。
ひび割れた窓から覗く薄暗い小汚い何もない部屋の隅で、
少年は虚ろな目をしながら蹲り天井を見上げ空腹に耐えていた。
「……おなかすいたな」
誰にも聞こえないようなか細い声で呟いた。
彼の両親はもう居ない
彼の兄妹ももう居ない
食料はもう何も無い
日々の生活も困難になった少年は雑草や木の皮、時には庭を走るねずみを
食べて命を繋いでいた。
――だがもう終わりだ
度重なる飢饉と疫病の蔓延で木々は枯れ生物は死滅していた。
加え町の外には魔物が徘徊し街や村で自警団や傭兵を雇い守っていたのだが、
飢饉で収入の途絶えたこの村ではそれも叶わず、村の中にも
獰猛な魔物が現れるようになっていた。
――この村は無くなる筈だった
外が五月蠅い。
どこから嗅ぎつけたのか、窓の外には狡猾な薄黒いカラス達が鳴き、
死した少年の肉を貪らんと目を光らせた。
そんな折、集まっていたカラス達が四方へと散っていった。
体格2mをゆうに超え灰の毛を持つ半人半獣のワーウルフが、
餌の匂いを嗅ぎつけやってきた。
ドガッ!
バキッッ!
メキメキメキッ!!
薄い板で作られた玄関の扉はワーウルフの怪力で抉じ開けられ、
無残にも砕け散った。
「グルルルルルル」
――ん、誰か来たのかな。まぁいいか
最早死を受け入れるしかない少年は何かを悟り、静かに目を閉じた。
床がメキメキと音を立てこちらに近づいてくる。
――刹那
ガキンッッッ!
少年の部屋へと続く廊下で突如として響き渡る金属音。
続いて扉をぶち抜く斬撃。
ザシュッ!
ズドン!
爆音と共に吹き飛んでくるワーウルフだった亡骸。
「っぶねー、こいつかなりヤベー奴だろ」
「ああ、だけど俺達に気付かなかったな、なんでだろ?」
「ここに誰か居るんじゃないの?」
濛々(もうもう)と煙る廊下の向こうから数人の人の声が聞こえる。
「あ、やっぱり。男の子が居るわよ」
廊下からひょっこり覗き込んだ女性の目の先に少年は蹲っていた。
虚ろな目で女性を見上げる少年。
「こんにちは、大丈夫だった?」
仰ぎ見た見知らぬ女性は冒険者の様相で、明るい色のローブに身を包み、
銀色の綺麗な髪をしていた。
所々敗れたり解れ汚れたその姿に、これまでの冒険の苛烈さが見て取れた。
「……もしかして喋れない?」
――少年はここで初めて自分は助かるかもしれないと思った
短めで区切ってますがこれ位の方が読みやすいですよね?
次話はキャラ紹介メインです。