潔癖主任、猫耳生える
タイトルまんまです。深くは考えないでください。
にゃー…
まぶたをあけ、手をのばす。
黒い画面が変わり、アラームが鳴りだす前にタップして止める。
いつも通りの時間だ。
素早く起き上がり、コーヒーのスイッチを入れて洗面台へ。
軽く水で顔を洗い、ジェルを頬から顎にまんべんなく塗る。シェーバーを滑らせ、生命力の衰えない憎き芝を刈りとっていく。
メガネはリビングの所定位置にある。
ぼんやりとした視界だが、鏡を見ずともすべてを把握できている。
歯を磨いたら、優雅な朝のコーヒータイムだ。
毎朝、時間に余裕をもって過ごすようにしている。
私はメガネをかけ、ニュースのチェックをする。
コーヒーを一口含み、今日のプレゼンテーションの内容を反芻した。
チーム対抗の社内コンペだ。だが振り分けられる予算は小さくない。
幾度もリハーサルを繰り返した。魅力ある提案内容に、利益の完璧な分析。問題は見当たらない。
私は余裕の笑みを浮かべ、まるで成功が約束されているような陽の光に目を細めた。
皆も緊張しているだろう。少し早めに行くか。
カップを片付け、テーブルを拭き、全自動掃除機のボタンを押す。彼は機械的な可愛らしい返事をして誰より早く仕事を始めた。
スーツに着替えた私は再び洗面台へと行き、くしで髪を――――
にゃー
…………………ハッ
気を失っていたように停止していた。
幻聴が聞こえた。ここはペット不可のマンションだ。そんなもの、いるはずがない。
それよりも。
それよりも、鏡に映っているものが問題だ。
震える指でメガネのフレームをあげた。
頭部にふたつ、黒い三角形の何かがついていた。