4:招く
「だったら、オレの血をくれてやる」
この時のオレは、はっきり言ってなにも考えていなかったに等しい。
あの時、初めて会った日に言った自殺願望のような望みではなく、本当になにも考えていなかったとも言える。あえてこの時に、何を考えていたのかというと、この子供にこれ以上誰かの血を吸って欲しくなかったのだろう
ただ、なぜそう思ったのかは未だに理解できないでいる。
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「えっ?また自殺希望なの?」
子供に驚きと呆れの顔と声音でそう聞かれて思い出した。自身が1度、この子供に「血を全部吸ってくれ」と伝え、拒否された(?)ことを・・・・
「ちがっ、」
「生憎と、そんなお情けをかけたくないし、かけられたくもないよ」
その目には、映るモノすべてに対しての冷ややかな眼差しだった。それは、この子供が本気で思っておりそれを伝えているのだとわかる
なぜ、こんなにも冷たく冷めた眼をむけるのか、どこにでもいる小学生の子供のような眼をして笑ったり、病気について純粋に訪ねてきた、あの眼差しとは似ても似つかぬ対称的な眼だ
だから、その眼差しを受けてオレは思ってしまった。この子供は本当に、さっきまでと同じ子供なのだろうか?と・・・・
「あ、・・・・ち、・・・・・・・・」
「怖いか?恐ろしいか?自分より底辺の存在に睨まれてる。そんなことが恐ろしいか?」
底辺の存在だと思ったことはない。言っている意味がわからない。叫びたい声が沢山あったが、声は声とならず、言葉は紡がれない。
そんな時一瞬だけ、本当に見間違いだと言えるような一瞬だけ見えた、哀しそうな顔が、オレを動かしてくれた。
「・・・・・・・・なんで、そんな哀しそうな顔をしたんだよ」
「は?」
子供が本当に訳がわからないといった顔をしたので、アレが無意識で出てきた表情だとわかった
「さっき、哀しそうな顔をしたろうがッ!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・寝言は寝てから言え」
冷めた目で言うが、さっきの凍てつくような冷めた眼とは違い、「何コイツ、頭でもイカれた?とうとう頭イカれちゃったの?」といった可哀想なものを見る目だ
「頭イカれてねぇーよ!」
「うぉッ!!こちらの言いたいことがわかるかのようなツッコミ!!」
「目は口ほどに物を言うって諺を知らねぇーのか?」
「知ってるぞ!口を見るより目を見た方がお得なんだろ!!」
・・・・・・・・・・・・なんだろう。この力の抜ける言い返しは
さっきまでが殺伐としていたハズなのに、この子供によって、コロコロと場の雰囲気を変えられている感
そして、思い出した。この場に居続けるとヤバイ
「とりあえず、こっちに来い!このままここにいるのはヤバイ!」
「えっ?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あっ!」
やっと気づいたらしく、大人しく手を引かれながら歩く子供。そして、救急車に連絡を入れておくためにも、携帯を片手に電話した
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その後は、救急車を呼び、そのまま家へと帰宅した。例の子供と共に
「ほぇーー。マンションなんだぁ~」
辺りをキョロキョロみてる分には子供らしく見えるのだが
「アンタ、見ず知らずの子供を連れてきて平気なのか?」
心配そうにこっちを見る時は、子供らしくなかった
「平気だよ」
「いや、だって、考えても見ろよ!」
「ん?」
「ベッドの下にエロ本隠してたりしたらアンタ気まずくね?」
「ブッ!!」
・・・・前言撤回。コイツはバカな子供だった
「後、子供誘拐とか「ちげぇーよッ!!」
妙に、言葉を知っているバカな子供だった