表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

怪談 ~腕を捜す者~

作者: 武内 修司
掲載日:2016/07/24

夏のホラー企画も宜しくお願いします。『特選怪談』です。

 腕を捜す者

 その家の裏手には小さな丘がありました。鬱蒼とした雑木林となっており、立ち入る者も殆どいません。その一部を削ってその家は建っていたのでした。

 家には、四人家族が暮らしていました。子供たちは二階に、両親は一階に寝室がありました。ある日、中一になる長男が夜中、ふと目を覚ましました。天井の方から物音がしていました。あちらこちら、何かがうろついています。動物でしょうか?しかし鳴き声一つ聞こえません。いつの間にか、寝てしまいました。

 翌日の夜も、長男は目を覚ましました。やはり天井の方から物音が聞こえてきたのです。やはりあちらこちらを動き回っているのですが、しかし昨夜より近い様です。しかも、それはどうやら誰かが歩き回っている様に思えます。しかし、すぐに再び眠ってしまいました。

 その翌日の夜も、やはり長男は目を覚ましました。やはり何かが動き回る音がします。しかも、それはベッドの横、部屋の中でした。そちらへ首を向けようとして、体が動かないことに気付きました。金縛りです。恐怖心が湧き上がってきます。音の方へ、辛うじて動く目だけを向けます。誰かが、います。髪の長い、女性のようです。何か探しているのか、俯き加減にうろついています。どうすることも出来ぬまま、その姿を追っているうちに、女性は近付いて来ました。髪に隠れて顔は判りません。しかし、着ている服は赤く、右腕が肩から無い様なのはわかります。

 遂に彼のベッドの傍らへ、来ました。顔を覗き込んできます。額が砕かれ、顔から首筋、胸に至るまで赤く染め上げられています。明らかに、この世ならざる者です。その口が、掠れた声を絞り出しました。

「腕は、どこ?」

彼の意識は飛んでしまいました。気が付いた時には、もう翌朝でした。昨夜の事は夢だったと無理やり納得させ、朝食のために降りてゆきました。卓に着いた弟に、昨夜隣の部屋の兄がうろつく音がうるさかったと文句を言われました。夢ではなかった事を改めて思い知らされた長男は、昨夜の出来事について話しました。兄弟揃っての熱心な調子に、初め悪戯か何かかと思っていた両親も信じる気になり、腕を捜す事になりました。近くで女性のバラバラ死体が発見されたというニュースを見ていたのも、手助けしていた事でしょう。

 その日から一家全員が一階で寝ることにし、周囲を探してみましたが、見つかりません。次は裏の丘です。発見したのは、長男でした。コンビニ袋やゴミ袋で何重にも包まれていました。破いた中から現れたのは、細い、女性のものと思われる右腕でした。人指し指に金の指輪が嵌められていました。警察を呼ぶと、現場検証が行われました。

 数日後、犯人の男性が逮捕されました。別れ話のもつれが原因だったそうです。これ以降、二度とこの家に、彼女が現れる事はありませんでした。

 その後、郵便受けから一つの指輪が見つかりました。それは、あの右腕のものとよく似ていました。それは感謝の証なのでしょうか?それとも…。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ