勇者の在り方~見た目で判断しちゃだめよ☆ 編~
とある事件によって、学校が騒がしかったのですが、少しずつ平穏を取り戻そうとしています。
それは一人の少年が行方不明になったから。
そう、あれは25日前のことだった____
私はあまり頭がよろしくないので、放課後居残りで先生から課題として渡された数学のプリントを仕上げて職員室まで提出しに行き、クラスの友だちと待ち合わせのために教室に戻る途中のことでした。
廊下で学校内一のイケメンと評判の伊藤達也(中身が超クズ)とすれ違った時のこと。
突然、彼の足もとに魔方陣が展開し、お約束のように彼を引き摺りこみました。
そしてさらにお約束で、近くにいた私が拒否権なしに巻込まれました。
次の瞬間にはお約束の如く、神殿の中にいました。
そして、可憐な超美少女は
「ようこそおいでくださいました。勇者様たち」
と言いました。
伊藤は『勇者様たち』という言葉に不信感を覚えたようで、辺りを見渡し私だと知るとあからさまに見下した目をして舌打ちをしました。
「では、さっそく国王様にお会いいたしましょう。私は、リリエラ・バルーンシタイフ。この国の聖女ですわ。以後、よろしくお願いします、勇者様たち」
国王様の所まで来ました。
どうやら、執務中だったようです。
聖女様はノックをせずにいきなり扉を開けたのです。
マジで、ビックリですね。
「国王様―――!勇者様召喚成功しました―――!褒めて、褒めて♪」
先ほどまでの凛とした感じが嘘のようにテンション高く、聖女様は国王様に気安く話しかけました。
驚きで思わず固まってしまいました。
国王様と一緒に執務をしている頭のよさそうな人たちは、『空気読め――!』と声にならない声を出して聖女様を睨みつけていました。
国王様は、私と伊藤を見ると申し訳なさそうな顔をして
「突然、異世界から誘拐してすまないな。だが、この世界は危機に陥っておる。こちらの言い分は自分勝手というのは分かっている。だが、申し訳ないが勇者たちよ。この世界のために戦ってはくれないか。なに、もちろん報酬は出す。時給で」
「時給っ!?」
「んっ?何かおかしなこと言ったか?歴史書によると、異世界から誘拐した勇者には時給で賃金を払うのが常識だと書いてあったのだが」
国王様は必要なことを説明して、最後にこう締めくくった。
「そうだ。忘れるところであったが、勇者として人としてこの世界ですべきことを終えたら、元の世界に戻れるぞ。ご苦労であった。勇者たちよ。今日は、ゆっくり休むがよい」
私は国王様の『人として』という言葉で伊藤を見てアイツはヤバいんじゃないかと思った。
伊藤をかんたんに言うと、『乙女ゲーム系小説のお花畑ヒロイン』の男版。
自分が媚を売りたい相手を本能的に嗅ぎ分け、それ以外を見下すという感じ。
美少女な先輩後輩・美人教師からは好かれていましたが、それ以外の女子や男子生徒・男性教師からは、徹底的に嫌われていました。
私ももちろん嫌っていましたが、それよりも娯楽対象物として鑑賞していました。
嫌っているのに、娯楽として見るのはおかしい?
いいえ、正しい行為なのです。
だって、殺意だけしか湧かない性格なのですよ!!!
伊藤は、元の世界に法律があったことを感謝すべきでしょう。
『殺人』は犯罪ですからね。
人間のクズを殺して、刑務所なんかに入りたくないですよ!
この世界に来てからは、旅に必要な剣術や武術、野営に必要な技術を学びました。
そして、この世界の常識とマナーを。
もちろん、文字も。
異世界人としては、この世界の常識やマナーは必要最低限でもよいのですが、元の世界で伊藤の魅了に罹っていない常識人からは伊藤は『歩く非常識』と呼ばれていました。
そんな伊藤と同類にされたくない私は、私の教育係に頼み込んでこの世界の常識とマナーと文字を教えてもらうようにしたのです。
私に剣術を教えてくれる先生と武術を教えてくれる先生は、私が理由を言うと深く納得してくれました。
ちなみに伊藤は、『チート能力』と『魅了の力』を得たようで、その力たちのおかげで美女と美少女を侍らせているようです。
はっきり言ってしまえば、この世界では『学ぶ』ということを能力に頼り切って一切していません。
そんな伊藤が旅立ったある日のことです。
たまには休息も必要だと言って、国王様と王妃様と聖女様とお茶をしていました。
そこに、城に勤めて間もない下っ端の青年が息を切らして、お茶をしている部屋まで来ました。
それは、大きな領の領主様からの報告書だったのです。
伊藤とその仲間(笑)たちが、各地で迷惑を掛けまくってみんなが迷惑してるというもの。
私は報告書を読んでいるのを聞くたびに恥ずかしくなりました。
王様はすぐに立ち上がり、報告書を持って来た青年に国政を担う部下たちを集めるよう言いました。
そして、国王様と王妃様はこの部屋を出て行きました。
「マリカ様にはまだお教えしていませんでしたね。あなたの世界でいう『チート能力』をこの世界で授かった者は、勇者として出来そこないですの」
「そうなんですか?てっきり、そういう能力がないと」
「いえ、そうではありません。そういう能力がないと彼はこの世界で生き残れないから神様より与えられただけ。本来なら、マリカ様のようにこの世界で新たに能力を得られないような方しか勇者にはなれません。だって、魔王という存在自体が『チート』なのですから」
なるほど。この世界は、チート否定な世界でしたか。
これなら、物理で魔王を殺れる可能性があると密かに私は笑みを深めました。
そして、旅立ちの日。
私について来てくれるのは、剣術の先生・武術の先生・この世界の常識と文字を教えてくれた先生・マナーの先生です。
あのお茶会の日、国王様と王妃様があわてて部屋を出て行ったのはこの日のためだったのです。
伊藤と仲間たち(笑)の所業の酷さに、私の旅の計画を一から練り直してくれたのです。国の頭脳たちで。
マジでスマンと思い、心の中で土下座しました。
伊藤の所業を塗り替えるべく、私は旅の間は『一日一善』を心がけました。
伊藤が浸食していない地域をルートにしているので、旅はいたって平穏です。
旅の途中は酒場により、『男の勇者で美女美少女を侍らしている奴は要注意。対応策を徹底せよ!!!』というのを噂で広めるのをお願いしました。
酒場の店主は、先日魔物に襲われているのを助けたことにより、快く他の酒場や旅館・商人たちに伝えることを了承してくれました。
これで、旅の愁いを少しは晴らすことができそうです。
伊藤の所業は同じ世界の者としては、良心に悪いですよね。
ついに来ました魔王城。
そこには、伊藤と仲間たち(笑)が無残にもボロボロになって転がっていました。
彼らが戦ったため、魔王城内が瓦礫ができたり、内装に傷がいったりしています。
伊藤は私たちを見ると、
「日下部。やっと来てくれたんだな。遅すぎるぞ!お前のせいで、俺はこんな目に遭っているんだからな!さっさと魔王を倒して、俺に手柄をよこせ!そうすれば、国に戻った時に俺はもっとちやほやされる!」
伊藤がそういうと、私の先生たちは視線を鋭くした。
私はというと、伊藤を思い切り何度も踏みつけた。ついでに、そこら辺にあった手軽な大きさの広辞苑サイズの瓦礫を伊藤の顔に何度か気の済むまで落とした。
それを見た魔王の顔色が悪くなった気がしましたが、きっと気のせいですね。絶対に。
私の行動を見た魔王が、
「おい、そこの勇者!なに仲間を攻撃しているんだ?俺を倒しに来たのではなかったのか?」
私はその言葉に視線を鋭くし、殺気全開にして魔王を殴り倒しました。
気がつけば、魔王は虫の息でした。
あれっ!?
魔王って、もっともっと強いはずでは?
元の世界のゲームでは、魔王って倒すのにもっと時間がかかってましたよ。
私が考え込んでしまっている間に、マナーの先生が魔王に止めを刺しました。
そして、剣術の先生と武術の先生が伊藤と仲間たち(笑)を拘束しました。
伊藤は、この世界において『犯罪者』認定されたのですね。
なんて思っている間に、今度は私の足元にあの魔方陣が展開され、気がつけば元の世界に戻っていました。
あっ、早く教室に戻らないと。
友だちとの待ち合わせ時間に遅れてしまいます。
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(聖女視点)
もうっ、異世界召喚っていえば聞こえがいいけど、だたの誘拐じゃない。
何も知らない少年少女をこちら側に無理矢理呼び出すって、罪悪感が半端ないわ。
今回誘拐してしまった勇者様たちの方で問題なのは、美少年の方。
「大丈夫です。俺が魔王を倒して、この世界に平和をもたらします!」
と元気いっぱいに宣言しちゃったのよ。
頭が湧いているとしか思えないわ。
普通顔の少女はその美少年の発言を聞いて、「うわーっ、コイツまた馬鹿なこと言っちゃっているよ」的な顔をして呆れてるのよ。
うん、分かるわその気持ち。
あーあっ。今回の召喚も片方だけ失敗かなぁ。
いいかげん、こっちの神様も向こうの神様も異世界召喚なんてやめればいいのに。
案の定、美少年(多分、中身クズ)は『チート能力』と『魅了の力』を得た。
普通顔の少女、マリカ様は異世界補正の定番『言葉補正』のみ。
美少年の方はチート能力で調子に乗っているんだけど、私はそれを見てバッカじゃないのと思ったわ。
この異世界召喚での『チート能力』と『魅了の力』っていうのは、【勇者失格の証】。
つまり、出来そこないね。
異世界召喚の本当の意味は、元の世界での害悪を更生させるためにある出来事。
その比較対象者は、巻込まれ被害者。
被害者を見て、自分の悪いとこを直せって意味なのよ。
被害者にとっては、迷惑な話よね。
それにしても、美少年はうざいわ。
自分の容姿を利用して私を口説いてくるのよ。
それにしても、聖女の意味を分かっているのかしら。
神様と信仰に心を捧げて純潔を守るって意味なのよ。
美少年に比べて、マリカ様は勉強熱心だわ。
絶対に、美少年を見てこの異世界召喚の本当の意味を悟っているわね。
マリカ様は教育係に、
「旅に出るなら、武術も必要です」
「元の世界で剣術を嗜んでいたんで、こっちでもやろうと思います」
「人様に迷惑をかけないように、この世界の常識とマナーを学びたいです」
「文字が読めないと絶対に困ることになりますよね。次は、文字を」
と学ぶことに意欲的。
元の世界に戻れない可能性も考えてるのかしら。
そんな心配なんて、マリカ様なら必要がないのに。
マリカ様の様子を見て、美少年は蔑み見下しているのを私は見て、美少年の利用法を思いついた。
さっそく、国王様に提案しなくては!
おっ、廊下の曲がり角を覗くと国王様が見えます。
「国王様――――♪」
私は全力で廊下を走り、国王様を呼びました。
あっ、うっさい大臣もいるわ。
「いいかげんにしやがれ、聖女様。聖女様といえど、国王陛下に何たる不敬......」
うっさい大臣がなんやら文句を言ってるんだけど、いつも通り私は左から右に聞きながしたわ。
「で、聖女様。何の用だ?」
「国王様、美少年の利用法を思いつきました」
「クズ?」
「はい。勇者じゃなかった少年の方です」
「ああ、アイツか」
「はい。『クズ・ホイホイ』にできるんじゃないかなーって。」
「おお。異世界日本で有名な『例のホイホイ』か」
「『魅了の力』を持っているんでできるかと」
「そうか?『魅了の力』は、人間的に出来そこないしか効かないぞ」
「だからこそですよ」
「ほぉ...」
国王様は、考え込んでしまいました。
いるんですよねー。どの国にでも、国の害悪が。
おバカな貴族令嬢やワガママな貴族令嬢が、『(偽)騎士(笑)』や『(偽)宮廷魔術師(笑)』になっているのよ。
まあ、女性騎士や女性宮廷魔術師がいるのはこの世界でこの国だけだけどね―――。
ちゃんとしてる女性たちだっているのよ。
でも、『(偽)騎士(笑)』や『(偽)宮廷魔術師(笑)』は美形の優良株を自分のモノにすべくそういう職業になっているの。
国の税金をなんて思ってるのかしら。
平民のみなさんは、汗水たらして稼いだお金をタダで国にあげてるわけじゃないのよ。
国に税金を納めているのよ。
私?
こんな性格だけど、聖女としての仕事はちゃんとしてるわ。
あぁ、そろそろ孤児院に顔を出さなきゃいけないわね。
マリカ様も行くかしら?
あの子たちに会いに行くのは日々の癒し~♪
孤児院にいる子どもたちにマリカ様と会いに行き、元気充電できた翌日。
どうやって、美少年を利用しようか考えている途中にマリカ様が剣術の訓練をしている訓練場まで歩いてきてしまった。
そこはなぜか、むさ苦しい男どもが山のように積み上げられていた。
...積み上げられていた。
えぇ――――っ!?
マリカ様の剣術の先生である騎士団長に聞くと、その積み上げられた男どもはマリカ様に剣術で負かされたのだとか。
マリカ様、強すぎ。
うわっー、これじゃ美少年のような『チート能力』必要ないわ。
恐るべし!異世界少女。
「聖女様、どうしたんですか?」
「マリカ様、実は____」
美少年を利用して、この国の税金の無駄遣いをさせている害悪をホイホイさせたいことをマリカ様に話しました。
「その害悪たちって、美女と美少女なんですよね?」
「はい。そうですよ。でないと、あの中には入れませんわ」
「なら、絶対に大丈夫ですよ。アレは、美女と美少女限定でモテますからね」
「本当にっ!?」
「はい。ですので、伊藤を一部の害悪ホイホイに利用したいのでしたら、優秀な女性騎士や女性魔術師には伊藤の所業を暴露して伊藤に近づかせない。伊藤を労わるとの名目で、伊藤と害悪を一カ所の大きい場所に集めてパーティーを開催する。その日は、優秀な女性たちは外出禁止なんてどうですか?ありきたりですが...」
「う~ん、こちらの目的がばれそうな気もしそうなのですが...」
「もちろん、大丈夫です。ああ見えて、頭のいいバカですから」
「...。」
「本当に、大丈夫ですよ。美女と美少女さえいれば、どんな不自然すぎる状況だろうと気にしません。その相手たちを落とすことだけしか考えませんから」
「本当ですか?」
私は不安ながらも、マリカ様の提案を国王様に話した。
国王様も、うっさい大臣も不安になりながらも、他にいい案が思いうかばず、ダメもとでマリカ様の提案した方法を実行したのです。
それにしても、ビックリしました。
まさか、こんなアホな...いえ単純な方法で、成功するとは!
すげぇな、美少年。
国の不安材料を一手に引き受けちゃったよ。
うわー、うわー、うわー。
いつもは小言を言ううっさい大臣でさえ、同類同士で固まっているのを見て顔を引き攣らせてる。
「アレらは、さっさと旅に出させるか」
と、うっさい大臣が呟いているのを私は聞かなかったことにした。
数日後、うっさい大臣は上手いこと言って美少年と仲間になった同類たちを城から追い出した。
これからは、マリカ様に生き残るために本格的な教育をしてあげないと。
私たちの現在の目的は、勇者であるマリカ様を怪我一つなく元の世界に戻すことよ。
当り前のことじゃない。
こちらの都合で呼びよせて、怪我をして帰らせるなんて悪魔の所業ができるわけじゃなわ。
マリカ様は、美少年と違って優秀だから足手まといさえ追い出せばなんとかなるわね!
マリカ様が旅立って二ヶ月後、マリカ様は無事に元の世界に戻られた。
引率の騎士団長によると、旅の間は順調すぎて少し不安になったとのこと。
そして、最後にマリカ様がいともカンタンに魔王を倒したことを国王様に騎士団長が報告したわ。
そこに現れる、魔王。
「おー、久しぶりだな。人間国の国王。あの娘、この『異世界召喚の本当の意味』を知りながら、全力で俺を殺りにきたぞ」
実は魔王、敵じゃないし不死身なんですよね。
なので、召喚された本物の勇者でも殺せません。
それにしても、チート級でありながらなんでボロボロのまま?
「ん?なんだ、聖女。おー、そうかそうか。俺の傷の治りが遅いから驚いているのだな。あの娘は、歴代の勇者の中でもかなり強者でな。俺の回復力が追いつかないのだよ」
なんか騎士団長が思いっきり視線を逸らしているようなので、気にしないであげた。
きっと、聞いてはいけないことがあるのかな―?
この世界で、魔王が魔王である理由はこの世界と勇者様がいる異世界のため。
勇者様を異世界に巻込んだクズは、いずれ異世界にいる異世界人に被害をもたらす『害悪』となる。
彼は魔王と名乗っているが、魔族たちを束ねる王ではない。
魔族たち、それも人の言葉を話し心がある魔物たちの中でも、彼が一番強くて知恵があるから魔王と名乗ることを神様から許されている。
本物の勇者様たち一行が狩った魔物たちは、人間や魔族・他種族に被害をもたらす魔物。
所謂、この世界に迷惑をかける者たち。
魔王の役目は、この世界に召喚されたクズを『封印』すること。
封印なんて大層な言葉を使っていますが、ようはクズに幻影魔法をかけどこかに生涯監禁すること。
幻影魔法をかけられたクズは、魔法をかけられた影響で死ぬまで監禁されていることに気付かないけれど。
それしても、今回はすごいわ。
異世界のクズとこの世界のクズが...っ!!
この時、私は知らなかったわ。
私とうっさい大臣と国王様とマリカ様が、クズに対するアホすぎる計画で歴史に名を残すなんて。
これって、人に隠したい黒歴史を歴史上に残すってことと同じでしょ!?
これ以降、この世界では勇者召喚の際にアホすぎる計画を実行します。
それにしても、クズクズ人に対して言う聖女ってどうなんでしょう?
日下部茉莉香(マリカ様のこと)と聖女は伊藤達也を『クズ』と言っていますが、オブラートに包みまくって暈しまくった表現で使っています。
読んでくださり、ありがとうございました。




