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「別に変なところには連れていきませんから」
「あっ、いや…」
「私、いろんな所を探検するのが好きなんです。前に電車を使わないで帰ってみたら新たな道を発見したんです」
でもこの近道はちょっと怖いですけどね、と彼女は付け足した。
「ゆうくん」
小学生の時、少しの間だったがうちの近所に住んでいた少女を思い出した。少女は背が小さくてちょこまかしてて、いつも新しいことを発見しては俺に教えてくれた。それがいつも可愛くて、うんうんと一生懸命に話す少女にこちらも必死で相づちをうっていた。
「先生、こういう道好きですよね」
「えっ」
変な声が出た。あの子に似ていたからだ。
「なんか好きそうだなって」
「うん、好きかも」
俺がそういうと、彼女はにっこり可愛らしく微笑んだ。
「私は高校2年D組の綾瀬怜です。思い出しますか?」
「え…?」
先程俺がふと思い出したあの時の子と名前が同じ気がする。
「ゆうくん」
ここでまた見つけた。
「あのときの子…?」
「覚えてくれていたんですね」
「うん…」
「そんなことより、遅れますよ!いくら近道でも遅刻はしますからね」
はっと現実に戻り時計をみると大変な時間に。
「やっべ!!」
俺は少しもやもやした気分を抱えながら学校へダッシュした。