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「悠?どうしたの」
幼馴染の麗奈はグラス片手にこちらを心配そうにみていた。
「あっ…いや何も無いよ」
「就活、忙しい?学校の先生だっけ?私には考えられないなー、子どもの相手は出来ないよ」
「つったって、中高生だしな。結構大人なんだよ」
「ふーん…」
「お前は?音楽家目指してんだろ?」
「あたしは…まぁ一応ね、だけど先行き不安だよ」
麗奈はバイオリン奏者でプロ目指して頑張っている。一度コンサートに行ったことがあるが、すごく上手いと感じた。
「…お前彼氏いねーの?」
俺は酔っていた。というか2人ともなんだか知らないが普段より酔っていた。
「今はいないよ。あたしはさ…」
「ん?」
「…あんたは?」
「いねぇよ」
ふとあの女子生徒を思い出す。
「そう…フリーか…」
麗奈はこちらを見た。
「何?」
「いーえ、なーんも」
彼女は少し笑っているように見えた。そしてグラスをゆらゆら揺らして遊んでいた。
「酔ってるなー私」
「そろそろ行くか」
「んー、だね」
お互いこういうところはさっぱりしているので気が合うのだ。好きな時に帰る。それだけのことだがなかなか他の奴とはそうはいかないから。
「じゃ、また。飲みたい時またメールして」
「うん。じゃあね」
帰り際、いつも俺は麗奈を家まで送ることを申し出るのだが決まって彼女はきっぱり断るのだった。友情でなくなってしまうかもしれないから、と。俺はやはり恋愛音痴なのだろうか。あまりそういうことはわからない。
家に着き水を一杯飲む。口の中が酒臭い。いつもより飲んだかな。ふわっと広がるお酒の感触に誘われながらベッドに堕ちていった。時計の音がやけにうるさい。