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その場は凍りついたような、とにかく静かで暗い空間に変わった。緊張が走る。今まで好きになったこととはわけが違うのだから。でも、やっぱり俺の気持ちはこういうことなんだろうか。
「本当ですか…?」
怜は恐る恐る聞いた。彼女も相当びっくりしているようだ。というかどちらかというと彼女が驚くべきなのである。俺の方が驚いてどうする。
「う、ん、ほんと」
「なんでこんなこと言うんですか。私、こういうの嫌いなのに」
そう言うと怜は下を向いて黙ってしまった。ああ、失敗した。急に、しかも教師に告白され生徒の彼女はどう解決するのか分からなかったのだろう。
「ごめん、やっぱりキモいよね俺」
俺は彼女の方へ近寄った。彼女はなおうつむいている。
「ほんとに、ごめん」
「本当に謝罪の気持ちを持っているのですか?」
怜はそう言うと顔を上げてにっこりと微笑んだ。
「私も、ずっと先生のこと好きでした。何年も前から」
怜は俺のことを兄として好いていたわけではなく、異性として昔から見ていたということなのか。
俺はうれしくなって口元が緩んだ。
「ほら、やっぱり謝る気持ちなんてないんじゃない」
「あっ、いや、これは…」
「嘘です。からかっちゃいました、すみません。でも、私は目立ったことが嫌いなんです」
「うん…というかすでに俺がアウトな気がする」
「そうですね。だから、私が卒業するまでは会うのを控えましょう。私だって受験もあるんですから」
「そう…だね」
怜の言葉に納得はしたものの、せっかく両思いになれたのに会えないだなんて、それはつらい。だが、色恋沙汰に没頭していては勉強がおろそかになるだろうから彼女に従うしかないのだ。
「でも、私、先生のところにたくさん質問しに行きますね」
「え、いいの…?」
「そんなの、もういいんです。私は先生が好き。先生もそうでしょ?」
「…うん」
年下相手に言い負かされていく気がする…。まあこういうところが好きなのかな。
「じゃあさ、俺もひとつ言っていい?」
「ええ、どうぞ」
「2人のときはため口で、名前で呼んで」
言った後気づいた。俺すごく気持ちが悪い。だが怜はふふ、と笑って俺を前から抱きしめた。
「わかった、ゆうくん」
彼女のぬくもりはやさしく暖かく、俺もその細い体を抱きしめ返した。
やっと両思いになれたところで、次回で完結させようと思います。
だいぶふっとばして終わりますが…ご了承ください。