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何故、俺は怜と会う約束なんてしたのだろう。何を伝えたいのだろう。帰りの電車でずっと考えていたが、答えは出ない。いや、出ないというより、出そうとしていないと言った方が良いのか。麗奈に言われたことも、まだ決着をつけていないのだ。自分が嫌になってきた。こんなにも言いたいことが言えないのか……。おそらくそれは俺の一番悪いところ。伝えるべきことが上手く伝わらない。
「こんばんは」
怜はもう公園にいた。夜の公園。彼女の白いワンピースが消えかけそうな電灯の灯りでふわふわ揺れているのが微かに分かる。
「あっ、ごめん、来てもらっちゃて」
「先生が呼んだんじゃないですか」
慌てる俺をみて怜はおかしそうに笑った。
「どうしたんですか」
「あっ…いや…」
「言いにくいことでもありますか」
「ううん…というか、何も考えずに綾瀬のこと呼んじゃって…えっと…」
怜はもう一度笑った。ああ、テンパりすぎだ俺。
「今日綾瀬に言われたことがなんだか心に刺さって。あっ、言い方とかじゃなくて、質問に来ないって聞いたから少し気になって」
「それだけで私を呼び出したんですか」
怜は怒っているのだろうか。急に声が低くなった。
「うん…ごめんね」
「…では、私は期待していいんですか、先生に」
「え?」
「先生が私のこと好きかもしれないって思っていいですか」
「あっ…いや…」
教員としての自分と純粋な自分の気持ちがおり混ざる。ぐちゃぐちゃする。
「好きだよ」
ふと出た言葉だった。