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episode9

ゆるい兄弟モノ(義理ですが)

 「ねえ、ごめんね。おにいちゃん」


 真夜中に重ねたくちづけも、カーテンから漏れる月明かりもすべてすべてが。ねえ、おにいちゃん。縛られる、ってどういう気持ち?くすくす笑って顔を近づける。眉間に皺が寄る男なんて大嫌いだと思ってたけれど貴方なら素敵に感じちゃう。ああ、手首、ちょっと痛いのね。ごめんね、あと少しだから我慢してね。そういうとおにいちゃんは泣きそうな顔をするからたまらなく胸が締め付けられて、壊したくなる。愛してるわ、貴方を。実の妹のように私を愛してくれる貴方を。でもごめんなさいね、私は貴方を一度も、おにいちゃん、だなんて思ったことないの。


「り、こ」

「なぁに? おにいちゃん」


 どうしてこんなこと、と掠れた声が耳元で響く。囁かれているみたいでどきどきする。縛られた両手をよじりながらおにいちゃんは縄を解こうとするけれど動けば動くだけ縛られた部分がよじれて赤くなってとっても痛そう。シーツの上を右手が這い、そのままおにいちゃんの首筋をなぞって唇の中に人差し指を入れてかき混ぜて、ね、かみ殺して。私をかみ殺して。できないなら、黙って犯されていて。結婚だなんて、私聞いていない。嫌よ、私を愛してくれなきゃ。だって誰より貴方を見ていたもの。


「ねえおにいちゃん私を愛してる?」

「あい、してる」

「妹として、じゃなくて?」


 おにいちゃんは否定も肯定もしないから、意地悪したくなってそのまま唇をこじ開けて舌をねじ込んで私の唾液を流し込んであげた。むせ返る姿は扇情的で、男の人に色っぽいなんて初めて思った。なあ莉子、ごめんな。今のこの人は私を撫でることすら許されない状況。ねえおにいちゃん私を憎んで。こんなに貴方を傷つける私を憎んで嫌って愛して。そして一生、一生忘れないような、傷痕を残して。お互いに。殺してくれたっていいのよ。でも貴方はやさしすぎるからそんなことできないわね。でも黙って他の女にもっていかれるのは嫌なの。だって十三年も貴方を好きだったから。

 甘い果実は食べなければそれが甘いだなんて知らなかった。報われないやさしさならいっそ壊れてしまえ。甘いことを知ってしまったから求めずにはいられない。バカね。私も貴方も。ねえ嫌いになって。嫌いなんて言われたらきっと傷ついちゃう。でも少しは諦められるかもしれない。ね、早く嫌いって言ってよおにいちゃん。

 それでも嫌いだなんて言ってくれないからたまらなく切なく苦しくておにいちゃんの胸の上で私はただ泣くことしかできなかった。

兄弟モノって実は結構地雷です(なんで書いた)

次が最終話になります。

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