episode10
一話に出てきたあの二人のおはなし。
ねえ聞いてあの上司ちょーむかつくの!!だから君はいつまでもお茶汲みなんだって!それって差別的発言いまどき男尊女卑だなんてありえないわー。そういってカクテルを一気に飲み干した。うわ、バカお前酒弱いんだから一気に飲むんじゃねえってあいつがうるさくあたしを止める。もうほっといてよあー最近全然いいことありゃしない。大体にしてねえあんたにこうやって付きまとわれることもムカつく。なんで当たり前みたいな顔してあたしの横に座っているのよ。あの夜はね、そうちょっとだけ弱っていただけ。弱っていてちょっとキスしてえっちなことしたからってその気にならないでよね。このいん……痛っばか何もたたかなくていいじゃないの。なんて言っていると腕をつかまれた。出るぞなんてえっらそーに。でもお勘定はあいつが払ってくれたから文句は言えない。
いつかの夜みたいに外の空気は生暖かく、じっとりと肌にまとわりつく。ふらつくあたしを支える腰回りにあるあいつの手もいつかみたいにひんやりしていてなによこれ傍から見たら恋人同士みたいきっもーってケラケラ笑ってると強引にくちびるを塞がれて。冗談きついわーなんて言えなくてバカみたいに心臓の音が跳ねるから。ね、えっちしたい。そう言えば黙ってピンクのネオンが光るいかにもって建物にふたりでふらふらしながら入っていく。部屋に入った途端どちらからともなくくちびるを重ね合って強引にひったくるみたいにあいつはあたしのストッキングを破り捨てて弁償しなさいよ!って言えば黙れよって熱い息とともに言葉は飲み込まれた。なにこいつめっちゃうまいじゃんなんて動揺は隠しきれず震える声と変な音とかが響いて頭がくらくら。え、勃たない?またぁ?は?信じらんないやっぱいんぽ……また頭をはたかれた。ばっか。ばっかみたい散々期待させておいて。別に溜まってないわよさいてー変態えっちすけべ。まあ男を軽率にホテルに誘うあたしもあたしだけど。いつだって性欲も食欲も全部平等に湧いてくるんだから仕方ない。ベッドのスプリングが軋む。距離が縮まって抱きしめられたから身をよじって離しなさいよって言えば更にきつく抱きしめられた。大体にしてなんでこういう肝心な時に飲みすぎるかなーって言えば飲まなきゃやってらんねーよばかって。初めからこうなること期待してたのって聞いたらうんだって。下心ミエミエ。ってゆーか順序違くない?なにが、じゃなくて、ほら、もと他にいうことがさ、あるんじゃないの。やさしく髪を撫でてごまかさないでよ。わかんない、言葉にしてくれなきゃ。あっそ言ってくれないのばーかあんたなんか好きじゃないし大っ嫌い。まるで中学生みたいな喧嘩。起き上がったあたしをあいつはまたぎゅっと抱きしめる。ほんとお前ってバカな女。はぁ?なんであたしがバカにバカって言われんきゃなんないの?!なんて反論するけれど熱くなる体温はやっぱり否定できない。バカな子ほどかわいいっていうじゃんかなんて今更口説いてきたって遅いっつうの。ため息をつきながら、こんなバカにほだされるバカなあたしはそれでもまた恋をする。
比較的アブノーマルな恋愛を書いてみたくて、ちょっと現実離れしてると感じていただけたら嬉しいです。嘘と恋がいちおうテーマです。
好きな話があればぜひお聞かせくださいまし。
ここまで読んでいただきありがとうございました。




