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episode1

性描写がそこそこ含まれますのでご注意ください。

 あたしはね別に遊びたい訳じゃないのよ、ね、ほら、なにか本気になれるもの、そう、そう、本気な恋がね、したいのよ。あ、ちょっとぉ、飲みすぎじゃないし酔ってもないってば、ああん、もう、別にいいじゃない。グラス返してよ。え、男にフラれたからってやけ酒煽ってないわよ。ただね、ばっかみたい。あんなんに半年も振り回されて挙げ句の果てにたっかい財布なんかあげちゃってさ。ね、ホテル行こう。ばか、あんたと寝るつもりないわよ。だってもうほら、終電ないし、タクシー拾うの面倒じゃない。

 ビジネスホテルはせまいのに何故かこんな夜に限ってどこも満員だった。ようやく三軒回って見つけた都会の隅にひっそりと隠れたホテルにふたりで肩を組んで入る。ネオンが遠退いて何だか光が滲んで目が痛い。お酒臭いし。あ、これってあたしのか(笑)なんて言って部屋に入った途端、ヒールを脱いで窮屈なストッキングを破り捨てる。明日新しいのコンビニで買わなくちゃ。ふらつくあたしを支えるあいつの手は夏に不似合いなくらい冷たくて、けれど体は汗臭い。シャツのにおいを吸い込む。腰に回った手に指を絡めて、キスをするみたいに顔をふっと近づけると、首に腕を回されてそのまま安物のベッドに倒れ込んだ。そのままちゅっちゅっと中学生みたいなキスをして、舌を伸ばされたから絡めてくちびるの端を誘うみたいに舐めたらあたしのちょっとえっちなショーツに手が伸びてきた。このままセックスするのかなぁなんて回らない頭でぼんやり考えてたら、え、勃たないってマジ?あんたインポなの?って言えば眉をしかめられた。うわあ、ないわーって笑うと鼻と鼻の先がくっついて、お互いの酒臭い息で空気が震えて、あいつの指があんまりにも繊細に動くからちょっと濡れた。声は別に出ないし感じてないしばかすけべ。いやらしい。最高にいやらしいあたし。失恋していようと彼氏がいようといつだってあたしの体は正直だ。ほんとに勃たないの?って可哀想なあそこを指の先で触ってみる。お酒飲みすぎたってあたしの十分の一も飲んでないじゃないって笑ったらうるせぇよって抱き締められた。暑いし、汗臭いし、男のにおい。控えたって言ってたタバコのにおいもするし、うそつき禁煙できてないじゃん。けれど悪くない。

 笑ってるうちに何だか涙が止まらなくなって、あいつのシャツにぐしょぐしょの顔をおしつけ、そのまま恋人同士みたいに抱き合ってあたしたちは眠りについた。



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