冒険はここから
この画面をいったい何回見たのだろう。
画面いっぱいに表示される「ゲームクリア!」の文字。このゲームは、単に魔王を倒すだけの育成型ゲームである。しかしこのゲームひとつ難点がある。それは、「やっとクリアできた」と思ってもクリアできたら今度は隠しキャラ・隠しアイテム・裏ボス等を出すために振り出しに戻されるのである。このゲームは発売日からあまり日が経っていないためパソコンで調べても有力な情報が手に入らないのである。そのため僕はインターネット経由でネット友達のある人から情報を仕入れていた。「こんなあまり人気のないゲームをやっていた奴がいたとは」と、思ったが「それは自分が言えることではない」そう思ってパソコンを閉じ、いま説明した、僕が手こずっている目の前のゲームを手に取り「最初から」のボタンを押した。最初は城にいる王様に話しかけ、街の人々に手当たり次第話を聞いて一番目のボスについて調べることだった。たかがこの作業をするのにとても時間がいる。それは何か、理由は簡単だ。王様がいる城だとはいえ街の人が多すぎだ。「ざっと1000人はいるんじゃないか?」と、思うほどの量だ。「完璧にクリアしたらこのゲームを作った人に文句言ってやる!」この言葉を胸に刻みながらやっと1000人はいるであろう街の人に話を聞いた。時計に目を向けると始めた頃から既に2時間が立っていた。今は午前3時、こんな時間にもなってゲームをしている自分がいるだなんて以前は思いもしなかっただろう。
なぜこんなことになったのかは遡ること3年前、幼稚園からの親友がある事件に巻き込まれ、その時僕をかばってそいつが死んだ。それからというものあの日のショックで僕はしゃべることができなくなってしまった。学校のともだちだった人からはいじめを受け、先生にも見捨てられた。見捨てられたというよりも、生徒を守るべき先生が何もしてくれないのである。一度自殺も考えたがそれでは身を挺して僕をかばってくれたあいつに申し訳ないと思って、そういったことを考えること自体をやめた。が、やはり外の世界に対して不安があるため今はこうしてニート状態になっている。引きこもっているから引きニートといったところであろう。時間が経って少しはしゃべれるようになってきた。今はネットでの知り合いにしか信用していない、親のことも信頼はしているが少し怖いと思うときもある。過去のことを思い出しすぎると頭が痛くなるので目の前のゲームに集中した。