雨の日の新聞配達
悪夢は、すでに始まっていた――。
雨の日の新聞配達。重圧から逃れたはずの青年に突きつけられた、恐ろしい真実とは。極上の恐怖を描くショートホラーです。
今日は朝から雨だった。それも、小雨などではなく、土砂降りと呼ぶに相応しい前代未聞の大雨だ。
もう、ビニールシートが被せてあっても新聞は濡れてしまうのであった。
僕はしまいに面倒臭くなって、新聞を放り出してしまおうと思ったのだ。━━自転車でコケて新聞は川に流されてしまったと報告すればバレることはないだろう。川はすさまじい濁流と化していた。
新聞を川に投げ捨て、僕は「やった、これで解放される」と小さく笑った。
濡れた合羽を脱ぎ捨てるように自転車に跨がり、来た道を全速力で引き返す。しかし、家に向かっているはずなのに、なぜか川沿いの景色から離れられない。どれだけペダルを漕いでも、横には濁流が不気味な音を立てて流れていた。
ハッと息を呑み、胸の前に吊るした配達鞄へと視線を落とす。
固く閉じられていたはずのビニールシートの隙間から、ドロリとした川の水が溢れ出していた。そして次の瞬間、鞄の中から、ズブ濡れになった自分自身の顔がこちらを見上げていた。
僕はもう、流されていたのだ。
【了】
お読みいただき、ありがとうございました!
日常のすぐ隣にある違和感や、雨の日に潜むジワジワとした恐怖を感じていただけたなら幸いです。
次回作も準備中ですので、ぜひまた覗きに来てくださいね。評価や感想もお待ちしております!




