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第6話 勘違いされてる気がする

 ギルドの扉を開けた瞬間。


 ざわっ、と空気が揺れた。


「……ん?」


 私は首をかしげた。


 なんだろう。

 なんだか、みんなこっちを見ている気がする。


「おい」


 肩の上で、クロが小さく言った。


「見るな」

「え?」

「周りを見るな」


 そう言われると見たくなる。


 私は、ちらっとだけ視線を動かした。


 目が合った冒険者が、慌ててそっぽを向いた。


「……?」


 別のテーブルでも、ひそひそ声。


「やっぱりあの子だ」

「例の……?」

「失敗を利用するっていう……」


 私はクロを見る。


「ねぇクロ」

「言うな」

「なんか変じゃない?」


 クロは深くため息をついた。


「変なのは最初からだ」


 受付に向かうと、受付嬢がぱっと顔を明るくした。


「リリアさん!お帰りなさい!」

「ただいまです」


 私は袋をカウンターに置く。


「依頼の魔力結晶、取ってきました」

「確認しますね」


 受付嬢は袋を開けた。


 中の結晶を見て、目を丸くする。


「……すごい」

「え?」

「傷がほとんどありません」


 クロがぼそっと言った。


「まあ、途中で危なかったけどな」

「えっ」


 受付嬢の目が輝いた。


「やっぱり……!」


「なにが?」


「失敗を利用する戦い方、本当だったんですね!」


 私は固まった。


「……え?」


 後ろのテーブルで、椅子が引かれる音。


「やっぱりそうか」

「見極めてるんだよ」

「一度崩してから、最適解を……」


 私はクロを見る。


「なにそれ」

「俺に聞くな」


 受付嬢は興奮気味だった。


「普通なら、魔力結晶に傷をつけないように慎重に作業するんです」

「はい」

「でもリリアさんは違う」


 受付嬢は力強く言った。


「一度崩れかけた魔力の流れを、逆に安定させた」


 私は瞬きをした。


「えっと……」

「魔力暴走の直前を見極めて、あえて揺らすなんて……!」


 周囲の冒険者たちが、うなずいている。


「やっぱ天才だ」

「怖くてできねぇよ」

「度胸が違う」


 私は小声でクロに言った。


「ねぇ」

「なんだ」

「これ、誤解じゃない?」


 クロは即答した。


「大誤解だ」


 受付嬢はまだ続けている。


「しかも、途中で誰かに見られていた可能性もあるんですよね?」

「え?」


 私は思わず顔を上げた。


「どうしてそれを?」


 受付嬢は笑った。


「森の入口で、別の冒険者が言ってたんです」


 私は嫌な予感がした。


「『あの子、わざと失敗してる』って」


 ギルドの空気が、またざわめく。


「やっぱり」

「観察してたんだな」

「わざと危険な状況に……」


 クロが頭を抱えた。


「……終わった」


「なにが?」


「もう訂正できねぇ」


 私は困ってしまった。


「でも、失敗は普通に失敗だよ?」


 そう言うと、周囲が静まり返った。


 そして――


「深い……」

「哲学か……」

「やっぱり違う」


 誰かが感心した声を出した。


 私はクロを見る。


「ねぇ」

「なんだ」

「やっぱり変じゃない?」


 クロは、諦めた顔で言った。


「もう諦めろ」


 その時。


 受付嬢が、新しい依頼書を取り出した。


「実はですね」

「はい?」


受付嬢は少し声を落とした。


「ギルドマスターが、リリアさんに会いたいそうです」


 クロのしっぽが、ぴたりと止まった。


「え、なんで?」


クロは、ぼそっと言った。


「目立ちすぎたんだよ、お前は」



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