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第4話 失敗できない依頼

ギルドの掲示板の前で、私は腕を組んでいた。


「うーん……」


「うーんじゃねぇ」


 肩の上から、クロが呆れた声を出す。


「読め。ちゃんと読め」

「読んでるよ?」


 依頼書は一枚。

 文字は少なめ、条件は多め。


『依頼内容:魔力結晶の回収

 失敗した場合、報酬は支払われない

 評価は大きく下がる』


「これって、失敗しちゃだめってことだよね」


 私が言うと、クロはしっぽをぴしっと振った。


「当たり前だろ」

「珍しいね、こんなの」

「だから嫌なんだ」


 クロは依頼書をじっと見つめている。


「こういうのはな、腕に自信があるやつが受けるもんだ」

「じゃあ、私じゃん」


 クロが振り向いた。


「どこに自信があんだ」

「失敗できるところ?」


「できねぇって書いてあんだろ!」


 ギルドの受付嬢が、少し困った顔でこちらを見ていた。


「えっと……こちら、最近評判になってる方にお願いしたくて」

「評判?」

「はい。失敗を恐れない、独特な戦い方だと」


 クロが私の肩で固まった。


「……誰がそんなことを」

「え、褒め言葉じゃない?」


「違ぇよ」


 依頼は、森の奥にある魔力結晶の回収。

 壊すと魔力が暴走するため、慎重な作業が必要らしい。


「つまり」

「つまり?」

「失敗したら終わりだ」


 クロは低い声で言った。


「報酬も信用もな」

「でも命は?」

「そこまでは書いてねぇ」


 私は少し考えてから、うなずいた。


「じゃあ、大丈夫だね」

「何がだよ」


「命があれば、失敗してもやり直せるし」


 クロは頭を抱えた。


「そういう問題じゃねぇ……」


 受付嬢が咳払いをした。


「お引き受け、いただけますか?」

「はい!」


 即答だった。


 クロが抗議の声を上げる前に、私は依頼書にサインしていた。


「お前なぁ……!」


 ギルドを出たあと、クロはずっとぶつぶつ言っている。


「今回は慎重にいくぞ」

「うん」

「無茶すんな」

「うんうん」

「失敗すんな」

「……それは無理かも」


 クロが私をにらんだ。


「おい」

「だって、私だよ?」


 歩きながら、私は森の方を見た。


 確かに、失敗できない依頼。

 ちょっとだけ、いつもと違う。


 でも。


「なんとかなる気がするんだよね」


 クロは深いため息をついた。


「……その根拠のない自信、どっから来るんだ」

「クロがいるから!」


 一瞬だけ、クロは黙った。


「……調子狂う」


 そう言いながら、肩から降りる気はないらしかった。


 森の入り口が見えてくる。


クロが、小さく舌打ちした。


「……やっぱり嫌な匂いがする」

「匂い?」

「魔力じゃねぇ。人のだ」


その意味を、私はまだ分かっていなかった。


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