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第3話 初クエストは失敗だらけ

「で、次はどこ行く気だ」


 ダンジョンを出たところで、クロが肩の上から聞いてきた。


「うーん……ギルド?」

「やっぱりか」


 呆れた声だけど、否定はしない。

 どうやら、ちゃんと相棒として付き合う気はあるらしい。



 冒険者ギルドは、相変わらず賑やかだった。


「初クエストなら、これだな」


 クロが前足で掲示板を指す。


「薬草採取。危険度低。報酬も安い」

「簡単そう!」


「“簡単そう”で判断するな」

「え?」


 言われたそばから、私は依頼書を一枚引き抜いた。


「じゃあ、これにするね!」


 ――害獣駆除(森の奥)。


「……は?」


 クロが固まった。


「待て待て待て」

「なに?」

「それ、初心者向けじゃねぇ」


 依頼書をよく見る。


「危険度:中」

「あ、本当だ」


 完全に確認不足。

 つまり――


 ――判断ミス。

 立派な失敗だ。


 体が、じんわり強くなる。


「……今、わざとか?」

「ううん、普通に見落とした!」


 クロは頭を抱えた。


「勘で生きるな……」



 森の奥は、思ったより暗かった。


「なんか、雰囲気あるね」

「引き返せるうちに引き返せ」

「でもクエスト受けちゃったし」


 その瞬間。


 ガサッ。


「――来るぞ」


 クロの声が低くなる。


 茂みから飛び出してきたのは、角のある狼型の魔物だった。


「おっきい!」


「感想言ってる場合じゃねぇ!」


 私は慌てて剣を構える――が。


「え?」


 足元の根っこに引っかかって、派手に転んだ。


 ――失敗しました。


「今それやるな!」


 でも、体は軽い。

 さっきより、はっきり分かるくらい。


「いける気がする!」


「その自信、どこから来るんだ……!」


 魔物が突っ込んでくる。


 私は反射的に、剣を振った。


 狙いは外れた。

 完全な空振り。


 ――失敗しました。


「ちょ、ちょっと待って、今強くなって――」


 次の瞬間。


 私の剣が、信じられない勢いで魔物を吹き飛ばした。


「……は?」


 クロと声が重なる。


 魔物は木に激突し、そのまま動かなくなった。


「……勝った?」

「……勝ったな」


 クロは、じっと私を見る。


「お前、戦い方がめちゃくちゃだ」

「うん!」

「なのに結果だけ合ってる」


 ため息。


「最悪だ」



帰り道。


「今日分かったことがあるよ」


 私が言うと、クロは嫌な予感しかしない顔をした。


「聞きたくねぇ」

「失敗って、種類があるんだね」


 転ぶ失敗。

 確認しない失敗。

 狙いを外す失敗。


「どれも、違う感じで強くなる」


 クロは、しばらく黙っていた。


「……その感覚、覚えておけ」

「?」

「失敗できなくなった時、役に立つ」


 いつもより低い声だった。


「失敗できなくなる時?」

「そうだ」


 クロは、森の奥をちらりと見た。


「この世界はな。

 失敗を許さない相手が、必ず出てくる」


 私は少しだけ考えてから、笑った。


「そっか。でも――」


 肩に乗ったクロを見る。


「その時も、きっと大丈夫だよ」

「どこから来るんだ、その自信……」


「クロがいるから!」


 クロは一瞬だけ目を逸らした。


「……調子狂う」


 でも、そのまま肩から降りなかった。


 ――この時はまだ、知らなかった。


 次の依頼が、

 **「失敗したら終わり」**の仕事だということを。


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