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第2話 最初の相棒は毒舌ネコでした

「……で?」


 目つきの悪い黒猫が、私をじっと睨んでいた。

 闇の中でも分かる。

 これは、絶対に性格が良くない目だ。


「なんでお前、さっきから失敗するたびに強くなってんだ?」


「え?」


 私はきょとんとして、首を傾げる。


「うーん……たぶん、スキル?」


「疑問形で言うな」


 黒猫は、はぁっと深いため息をついた。


「普通、失敗したら落ち込むか、死ぬかのどっちかだろ」

「そっかぁ」

「納得するな」


 なんだろう。

 口は悪いけど、ちょっと面白い。


「ネコさん、ここで何してたの?」


 私がそう聞くと、黒猫は一瞬だけ視線を逸らした。


「……罠に引っかかった」

「あっ」


 よく見ると、黒猫の足元には壊れかけの魔法の檻がある。

 どうやら、長いこと閉じ込められていたらしい。


「じゃあ助けるね!」


 私は勢いよく檻に手をかけた。


「待て」

「え?」

「その触り方、絶対――」


 バキッ。


「あ」


 力加減を完全に間違えた。

 檻は派手な音を立てて崩れ落ちた。


 ――失敗しました。


 いつもの感覚。

 体が、また少し強くなる。


「……なんでだよ」


 黒猫が、信じられないものを見る目で私を見る。


「今の、完全に失敗だろ」

「うん!」

「なんで嬉しそうなんだよ」

「だって強くなったから!」


 私は胸を張った。


「ね、ほら」


 試しに、その場で軽くジャンプする。

 さっきより、さらに高く跳べた。


「……頭おかしいのか?」

「よく言われる!」


 黒猫は無言になった。

 しばらく私を観察したあと、ぽつりと言う。


「……名前は」

「リリア!」

「そうか。俺はクロだ」


 クロ。

 ぴったりな名前だ。


「よろしくね、クロ!」


 私が笑顔で手を差し出すと、

 クロは露骨に嫌そうな顔をした。


「距離感近い」

「え、ごめん」


 でも、クロは逃げなかった。


「……お前、このまま一人で冒険するつもりか?」

「うん!」


 即答すると、クロは頭を抱えた。


「やめとけ。死ぬ」

「さっき死ななかったよ?」

「今回はな」


 クロは、私を真っ直ぐ見た。


「そのスキル、使い方次第じゃ……相当危ない」

「でも楽しいよ?」

「楽しいで済む話じゃねぇ」


 少しだけ、声が低くなる。


「……だから」


 クロは、観念したように尻尾を振った。


「しばらく俺が付いてやる」

「え、ほんと?」

「勘違いするな。監視だ」

「相棒ってこと?」

「違う」


 でも。


 クロは、私の肩にひょいっと飛び乗った。


「……死なれると困るだけだ」

「ふふ、ありがとう!」


 こうして私は、

 毒舌で、態度が悪くて、でも優しいネコと

 一緒に冒険することになった。


 たぶん――

 これからも、たくさん失敗する。


 でも大丈夫。


「ね、クロ! 次はどこ行こっか?」

「まずはまともに歩け。転ぶな」

「それは無理かも!」


「……はぁ」


 クロのため息が、

 ダンジョンに静かに響いた。



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