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第14話 やめたはずの依頼

 掲示板の前で、私は腕を組んでいた。


「うーん」


「悩むな」


 紙がたくさん貼られている。


 討伐、採取、護衛。


 いろいろある。


「どれにしようかな」


「簡単なのにしろ」


 クロが即答する。


「絶対それがいい」


「えー」


 私は一枚の紙をじっと見る。


「これとか」


 クロが読む。


「……魔力装置の点検」


 沈黙。


「やめろ」


「え?」


「やめとけ」


「なんで?」


 クロは真顔だった。


「この前の忘れたか」


「覚えてるよ」


 私はうなずく。


「失敗したやつでしょ?」


「その結果が問題なんだよ」


「でも直ったよ?」


「だからだ!」


 クロが声を荒げる。


「普通は直らねぇんだよ!」


 私は少し考えた。


「でも今回もなんとかなるかも」


「ならねぇ!」


 クロはため息をついた。


「いいか」


「装置系は触るな」


「見ても近づくな」


「できれば存在するな」


「無理だよそれ」


 私は笑った。


 そして依頼書をぺりっとはがす。


「あ」


「おい」


「これにする」


「やめろって言っただろ!」


「大丈夫だって」


 私は受付に向かう。


「なんとかなるよ」


 クロは空を見上げた。


「……終わった」


 依頼の場所は、街の外れの倉庫だった。


 古い木の建物で、人通りも少ない。


「ここだね」


 私は扉を押した。


 中は薄暗い。


 木箱と道具が並んでいる。


 その奥に――


 小さな装置があった。


 台の上に置かれた、金属と石の塊。


 うっすらと光っている。


「……あれだな」


 クロが低く言う。


「点検って書いてたよ」


「見るだけだ」


「分かってる」


 私はうなずいた。


 そして一歩近づく。


「見るだけ」


「そうだ」


「触らない」


「そうだ」


 私は装置の前に立つ。


「ふむ」


 クロがじっと見る。


「どう?」


「……ちょっと不安定だな」


「やっぱり?」


 私は装置をのぞきこむ。


 中の光が少し揺れている。


「壊れかけ?」


「そこまでじゃねぇが」


 クロが言う。


「放っとくと面倒になるタイプだな」


「じゃあ直した方がよくない?」


「よくねぇ」


「なんで?」


「お前が触るからだ!」


 私は少し考えた。


「でもさ」


「なんだ」


「触らなかったら」


「?」


「失敗もしないよね」


 クロは一瞬黙った。


「……そうだな」


「じゃあ大丈夫だよ」


「何がだ」


 私はにこっと笑った。


「触らなければいいんでしょ?」


「そうだ」


「じゃあ――」


 私は手を伸ばした。


「おい」


「ちょっとだけ」


「触るな!」


 指先が装置に触れる。


 その瞬間。


 パチッ


 小さな火花が散った。


「あ」


「ほら見ろ!」


 クロが叫ぶ。


 装置の光が大きく揺れる。


 ぶん、と音がする。


「やばい?」


「やばい!」


 光が不規則に明滅する。


 さっきより明らかに不安定だ。


「ごめん!」


「謝ってる場合か!」


 クロが怒鳴る。


「離れろ!」


 私は慌てて一歩下がる。


 そのとき。


 ふっ


 光が、消えた。


「……え?」


 私は目を瞬かせる。


 装置は静かだった。


 さっきまでの揺れもない。


 完全に止まっている。


「止まった?」


 私は首をかしげた。


 クロは何も言わない。


「クロ?」


 クロは装置を見ている。


 じっと。


 さっきより真剣な目で。


「……おい」


「うん?」


「今、何した」


「えっと」


 私は少し考えた。


「失敗?」


「それは見てた」


 クロはゆっくり言った。


「でも結果は」


 装置を見る。


「……止まってる」


 私はうなずく。


「直ったね」


 クロは黙った。


 そして小さくつぶやいた。


「二度目だ」


「え?」


「いや」


 クロは首を振る。


「なんでもねぇ」


 でも。


 そのしっぽは、ゆっくりと揺れていた。


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