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第9話 触るなって言ったのに

 装置の光が、ゆらりと揺れた。


「……まずい」


 クロの声が低くなる。


「リリア」


「うん?」


「その装置」


「触るな」


 私は装置をのぞきこんだ。


 石の台座の上に浮かんでいる光の球。


 中で、魔力がゆっくり回っている。


 でも、どこか不安定だ。


「やっぱり壊れてるよね」


「だから触るなって言ってるだろ」


 クロが言う。


「こういうのは専門の魔術師が――」


 そのとき。


 パチッ


 小さな火花が散った。


「わっ」


 光の球が大きく揺れる。


 魔力の流れが乱れた。


「リリア!」


 クロが叫ぶ。


「離れろ!」


「えっ」


 でもその瞬間。


 魔力が大きくうねった。


 ゴオォン――


 低い音が遺跡に響く。


 装置の光が、一気に強くなった。


「えっ」


「遅い!」


 クロが叫ぶ。


「暴走しかけてる!」


「ええっ」


 光がさらに膨らむ。


 部屋の空気が震える。


 床の石がガタガタと揺れ始めた。


「どうしよう」


「離れろって言っただろ!」


 クロが怒鳴る。


「爆発するぞ!」


「爆発!?」


 私は慌てて装置を見る。


 魔力の流れが完全に崩れている。


 ぐちゃぐちゃだ。


「やばい」


「今さら気づくな!」


 クロが叫ぶ。


「逃げろ!」


 でも私は装置を見た。


「……これ」


「なんだ」


「直せそう」


「は?」


 クロが固まる。


「いや待て」


「なに言ってんだお前」


 私は装置に手を伸ばした。


「リリア!」


「ちょっとだけだから」


 指先で、光に触れる。


 その瞬間。


 魔力が一気に崩れた。


 ドンッ!!


 衝撃が走る。


 光の球が弾けた。


 部屋の魔力がぐちゃぐちゃに乱れる。


「うわっ!」


 私は思わず叫んだ。


「失敗した!」


 魔力が荒れ狂う。


 床の石が浮き上がる。


 天井がきしむ。


 クロが叫ぶ。


「だから言っただろ!」


「ごめん!」


 でも次の瞬間。


 魔力が、ふっと止まった。


 暴れていた光が、ゆっくり収束する。


 さっきまで崩れていた流れが、


 少しずつ整っていく。


 部屋が静かになる。


「……あれ?」


 私は装置を見た。


 光の球は、さっきより小さくなっていた。


 でも。


 安定している。


「直った?」


 私は首をかしげた。


 クロは黙っていた。


「クロ?」


 クロは装置をじっと見ている。


 それから、私を見る。


「お前」


「うん?」


「今なにした」


「えっと」


 私は少し考えた。


「失敗?」


 クロは顔をしかめた。


「それは見てた」


 私は装置を見た。


「でも直ったよ?」


「……」


 クロは何も言わない。


 ただ、しばらく装置を見つめていた。


 そして、小さくつぶやいた。


「……偶然か?」


「なにが?」


「いや」


 クロは首を振った。


「なんでもねぇ」


 でも。


 クロのしっぽだけが、ゆっくり揺れていた。

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