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第四章:暗くなる前に

第四章:暗くなる前に


SIDE:MAXIMA


小学校の頃は、暗くなる前に家に帰った。塾に行く子が増えてくると、出歩いたってどうってことないから暗くなっても外にいたりする。小さい頃は、暗くなると八つ裂きジョニーが出るからってみんな家に帰った。八つ裂きジョニーは夜道に現れて、帰る人の肩を叩く。そしたら、腕が落ちちゃうんだって。八つ裂きジョニーの手はナイフになっていて、生まれたときからだから切るのが上手い。気がついたら腕がなくなっていて、いつ切られたか全然わかんないんだって。私たちは最初から知っていたけど、転校してきた子は知らなかったから、他の町にはない話みたい。町によるもんね。だから、この町の変な「場所」って聞かれても、思い出さなかった。


私は、職員室に呼び出された。何かしたの?って聞かれたけどわかんない。なんでもないだろうと思ったのに、先生たちは本気だったみたい。


「槙島さん、何かあるんじゃない?」


最近学校が早く終わるのに、なかなか家に帰らない。学校には近所の人から電話があって、制服の子が夕方まで出歩いてて、まだ学校が終わってないし卒業するなら一度帰って着替えているだろうからあれは何?って聞かれたらしい。男性が一緒にいた。だいぶ年上で、二十代後半くらい。アルマって二十代なんだ、って言うとたぶん先生にいろいろ聞かれる。うーん、道案内したから、って言っておいた。道案内だし。何度もしているからたくさんの人が見ていてたくさんの人に聞かれているかもしれないけど、いつのどれとかわからないみたいで、そう?って言って教室に戻された。


何人か先生に話を聞かれた子がいたみたいで、何だったの?って私も聞かれた。道案内したとき、誰かに見つかったみたいと言っておいたからたぶん大丈夫。そしたら誰かが言い出した。どうする?その人が八つ裂きジョニーだったら、って。そんなわけないじゃん、ってみんな相手にしなかった。そんなわけないよ、って私も言っておいた。だって、アルマって。


SIDE:ARUMA


コンビニで弁当を買うと、醤油の袋がついていた。どこからでも切れます!と言いつつまったく切れない、なんてもうネタにもならないくらいみんな言っているのに、改善しようという気がないらしい。いっそ指先に十徳ナイフでもついていたらすぐに開けられるが、いくらオレが酔狂だからって醤油の袋のためにそんな魔改造はしない。腹が立って力を込めると、飛び散る。自前の変なコートについて……変だと思い始めたのは最近だが、黒いので目立たない。黒くなければもう着ていられないだろう。醤油を開ける前に説明書とか読んだ方がいいのだろうか。読まなくてもいいという商品だと思うのだが。


そんな現場をいつから見ているのか、後ろから槙島が話しかけてきて合流した。待っててくれれば貸すのに、と言ってメイク用だろうか、小さなハサミを取り出した。お前はそれで枝毛とかそういうのを切るのだろうに、醤油を開けるのに使われて嫌ではないのか、なんて無駄話はせずに弁当を食いながら今日行く場所はどこかと聞いた。だいたいの話を最初に聞いておけば、怪しい場所とどうでもいい場所がわかるだろう。そう思ったのだが。


「スーパーの裏の通り。よく猫が鳴いてるの」


どう変わってる?と聞くと、うーん……と考えた末に「なんか変!」。そんなものだろう。問題があるのは、そんなものだろうとわかりそうなものなのに一回聞いてみたオレではなかろうか。とにかくこの段階では区別がつかない。わかんねえものを叱りつけてわかるのなら国民全員百点満点、わかんねえから叱る必要がない。効果がないとわかっているからしない。世の酔狂どもはそれでなんとかなるとでも思っているのかみんなでするが、オレからすればアホらしい。向こうからすればオレがアホのようだが。


槙島に連れられてスーパーの裏通りに来る道中、百均ショップの近くを通った。この百均、電池がないんだよ!と言っていたが、そこそこ高いから置きたくても置けないんだろう。よく見たらあるしよ。単二はないもん!というのが槙島の言い分だが、単二なんて量販店でもほとんど見かけない。それを置いておけというのは酷だろう。ないものをダメ元で探すことはあるが。


こいつの母親の小顔マッサージ器の規格なんてぶっちゃけどうでもよく、単二電池が必要だからメーカーが無理をしているのだろうなんて話も知らん。最初の予定通り、裏通りに行った。どこかで猫がみゃあみゃあ鳴いている。どこだろうね、とか言ってるが裏手にドブ川。小さな橋があって、その下あたりだ。あそこじゃねえのか?と聞くと、あんまり渡ったことがないから気がつかなかったらしい。地元というのはどこに何があるかだいたいわかっているから余計な道を使わず、案外通らない道が多い。こいつに案内されて大丈夫だろうか。それでもオレよりはわかる、という完全相対評価で頼らざるを得ない。自分がこんなにダメなヤツで泣けてくる。


その近くにある公園が、少し気になった。異次元回廊が、たまーに開くかな。槙島に聞くと、昔一回か二回、ここで遊んだという。友だちと夕方まで遊んで、早めに帰った。学校からだってそんなに遠くないと思うが、早く切り上げたらしい。暗くなると怖いし、というガキならではの理由だ。何か出るかも、という槙島の感覚はその辺のハッタリ同業者よりよほど確かだ。オレはミナカタより弱いなら皆ハッタリと思っているが、業界全員口をそろえて「厳しすぎる!」と文句を言う。これくらいはできないと頼りにならないだろう、オレはミナカタのことを主に財政面で頼っているのでこいつは悪く言わない。


とはいえ槙島が同業のヤツより確かだ、となったのはここ数日。話を聞くに、それ以前は「見る」以外のことはできなかったらしい。できないというか、しないというか。発想自体がないからやったことがなく、できたかどうかはわからないという。アルマはどうやってできるようになったの?なんて聞かれても「バトル漫画のマネをして遊んでいた」なんて言えるわけがなく、偶然だよと言っておいた。教えてよ!と言われても教えない。その代わり力の使い方を教えてやった。いくらなんでも多少は制御できないとこっちも気が気でない。


指先に白い光を出してみせる。槙島は真似して青い光を出した。オレが出したのは陽の気、活性化に使う。槙島が出したのは陰の気、沈静化。まあこの辺は「光と闇」とか「白と黒」とか「プラスとマイナス」とか、使うヤツによって表現がぼちぼち違う。電池の逆側だと思えばいい、と言うとタイムリーなのでなんとなくわかったようだ。マイナス同士は反発する、と教えようとしてもう一度陰の気を出させると、白い。それは陽だ、と一応言っておいたがこちらが陽を出せばいいだけ……そう思ったのに、お互いに出し直してこっちは陽、向こうは陰。なんでも真似するくせに、なんでここが真逆なんだよ!向こうに陰を出しっぱなしにさせてこっちが合わせるとようやくそろった。近づけると、手が押し返される。磁石と同じだ、と大雑把に教えたが、陰と陽はまったく逆のまま。こんなんで大丈夫だろうか。


ぶっちゃけ教えることとかこれくらいしかない。一番簡単な理屈以外は結局全部邪魔、最終的にいらないとなるので言わない方がいい。修行場でバカを見たのでよく知っている。自分でやってりゃ習得が三年早かった。わざわざそんな遠回りをさせるなんて嫌がらせをすると自分が小さくて悲しくなるのでこれだけ、あとは陰と陽をどう使うかだけだ、と言っておいた。もっともオレだってここから先は何ができるか知らない。自分の両手でそれぞれため込んでぶつけたって暗いところが明るくなるだけ、「光と闇の転換魔法」はご大層な名前からは想像もできないほど役立たずだ。もっと技相応の、「アカル・クナーレ!」とかでいいと思うが、ご大層な呼び方をしたがるヤツがたくさんいるのでもう大層な名前がある。ハッタリばかりの業界だ。


陰と陽を両方使うのがすでに器用とされる不器用軍団でできた業界だからそんなもんで、両手でそれぞれなんてやると腰が抜けるほど驚かれる。こいつらは右手と左手でじゃんけんができないのだろうか。そこまでできるのはどうやらすごいようだから、槙島には無理に教えなかった。当たり前に両方出しているのがすでに出来過ぎなのに、お前ならできるだろうなんてもう言いたくもなかった。


SIDE:MAXIMA


日が暮れたあと家に帰って、夕飯を食べたあとに部屋に戻って、アルマに教えてもらった光の違いで遊んでいた。ベッドの中で指先を光らせる。青、白、青、白。左手で青を出して、右手の白と比べてみる。じゃんけんみたい。そしたらお父さんが帰ってきたみたいで、話し声が聞こえる。しばらくしてお母さんに呼ばれて、慌てて指の光を消して階段を降りた。先生に聞いたんだけど、って放課後のことを聞かれた。うん、そうだよ。迷ってたから。ウソは言ってないけど、全部言ったら怒られるかもしれない。私の話はしてくれないけど、私の放課後の話はしたいみたいだし。私の放課後は、今とても楽しい。ここでやめちゃうなんて、きっと後悔するよ。


次の日も、アルマが来るのを改札の前で待っていた。窓の外から電車を見ていても、いつもどれに乗っていたのかわからない。今日はわかるかな、と思って窓の外を見ていると、名前を呼ばれた。いつも聞いていた大きな声は、学校でしかしないと思っていたからビックリした。中田先生は、わざわざ駅に来ていたらしい。何かあったのかな、と思ったら私を探してたって。何してるんだ、って怒られた。もうすぐ高校だから、この駅から電車に乗るでしょ。ほら、せんちめんたるじゃーっていうヤツ。何言ってるのか私もわからないけど、本当のことを言うときっと怒られる。ここに来れなくなったら……きっと嫌な思いをする。慌てていると、アルマが改札から出てきた。何してるんだ?って感じで不思議そうに見ていたから、声を張り上げた。


「先生、大丈夫だよ!知らない人にはついていかないよ、変な大人とか!」


アルマはじとっとこっちを見たあと、何も言わずに駅を出ていった。とにかく一度帰ったことにして、私は逆の出口に走った。ぐるっと回って踏切を越えて、反対側に出るとアルマがお稲荷さんの前で待っていた。ごめんごめん、学校の先生がね!私はなんでもないと思っていたけど、アルマに聞かれた。


「怒られたのか?」


……怒られてない。そう答えると、アルマはそうかって言ってあんまりしゃべってくれなかった。全然大丈夫だよ、先生気にしすぎなんだよ!いくら言っても興味がないみたいで、しばらく二人で歩いていた。


「……無理しなくていい」


オレの仕事だから自分でできる。変な大人にはついていくんじゃない。そんなことを言われて、私は悲しかった。違うよ。そんなんじゃない。私も行きたいの。アルマはライターを取り出して、またしまった。今、大事な時期だろ?いつもと全然違って、相手にしてくれない。アルマは、他の大人と同じように自分の話を始めた。


「この業界はな、ダメなヤツが集まるんだ。いつも嫌気が差す。這いずり回って金にもならねえ。そんな場所にいるヤツが、まともなはずないだろ」


来ない方がいい。私はそのあと、何も言えなかった。何もないなら帰るんだ、危ないだけだぞ。そう言われて、私は一生懸命しゃべろうとしたけど、何も出てこなかった。アルマは行ってしまって、私はついていけなかった。


SIDE:ARUMA


真っ昼間からミナカタに電話した。見通しが立たなくなったから、遅れが出る。……。それだけかい?と聞かれて、ようやく話すことがないと気がついた。気にしたことはないが、オレが電話をかけてくる時間はだいたい同じらしく、こんな時間にかけてくるんだから何かあったのだろう、と気を遣われた。何もねえよ。いつも通りのことをして、いつも通りの話をした。いつもと変わらない。流したつもりだったのに、「誰か一緒なのかい?」と聞かれた。まさか地元の中学生に協力してもらっているなどとはミナカタにも言えないので適当にごまかしていたが、話をしたからには誰かが一緒だった。地蔵相手にしゃべるヤツだってたまにはいるが、オレは地蔵なんて少年に大志を抱かせる偉人の像とさほど変わらないと思っているので、あれに向かってしゃべろうなんて思わない。なんでもねえ、言葉の綾だ。そう言っているのに、声に元気がないというので怒鳴りつけた。うるせえ!と叫んで勢いで電話を切り、さすがに自分でもわかった。気が立っている。こんなのいつも通りだろうといくら言い聞かせても腹の虫が治まらなかった。


SIDE:MAXIMA


公園でブランコをこいでいた。中学生がやることじゃないけど、ベンチは小学生で埋まっていたからこっちしかなかった。帰った方がいいのかな。帰ると、また戻ってこれるか不安だった。私も戻れないし……アルマには、聞いてほしかった。きっとわかってくれる。もうわかってるのかもしれない。でもそんなのは、もう一度会わないと意味がない。明日も駅で待ってるのは、いけない気がした。でもアルマの後は、もう追えなかった。


「あれ?先輩?」


……青山さん。そういえば家がこの近くだ。もう二年生が帰る時間で、もう大丈夫なの?って聞くと青山さんは隣のブランコに座った。どうしたの?って聞かれたけど、言っても仕方がない。見えない人は、誰も信じてくれない。おかしな子だって思われたくなくて、ずっと前から言えなかった。青山さんは、あんまりたくさん聞かなかった。その代わりずっと隣のブランコに座って、少しずつ話を聞いてくれた。がんばって元気を出さないといけないと思ったけど、足に力が入らなくて、日が暮れるまで二人でブランコに座っていた。一番星が出始めた頃に、私は無理に立ち上がって帰ることにした。青山さんに迷惑がかかる。帰りたくはなかったけど、帰った方がいい。元気は、まだ出ていない。


青山さんは自分の家と逆方向に歩いて、私を送ってくれた。立ち止まりそうだけど今だけ家に帰ろうとして、私は無理に笑って手を振った。青山さんは手を振り返して、元気出して!って言っていた。青山さんが角を曲がると、誰かがその後をついていったように見えた。帽子を目深にかぶって、顔はわからなかった。でも……。私は怖くなって、青山さんの後を追った。


SIDE:ARUMA


……今日はまったく仕事が進まなかった。自分一人でも進むことは進む、と踏んでいたのにほとんど進捗がない。なにせ仕事が探し物なのに、景色を見ても頭が回らないのだから見た意味がない。明日もう一度同じ場所を回るのか。はあ、とため息をついて、ライターを取り出して火をつけていた。火をつけてどうするつもりだったのだろうと考えるとやることがない。タバコは一度吸い過ぎてアレルギーが出てから吸っていない。だからライターなんて「吸いたいなあ」という後腐れで持っているだけ、そもそも使うことがない。オレはなぜ火をつけたのだろう。自分の行動が袋小路に入って、火の向こうをぼんやりと見ていた。きらびやかな内装の店。こんな住宅地の近くに店を出して売れるのだろうか、と一瞬思ってハッとした。店の中に、見たことのある女。眼魔!走り出すと蜃気楼のように店が消えたが、女はふらりと出てきて歩いていった。ここで会ったが百年目だ!さっさとケリをつけて……こんな町は出て行ってやる。オレは無駄に力んで眼魔を追った。


眼魔の化身の女は、闇夜に紛れるように歩いていったが腕の立つ魔導師なら追跡は容易、戦って勝てなくとも尻尾をつかめば反撃の糸口になる。オレは女を追い、公園にやってきた。昨日、槙島に光の違いを教えた公園だ。そんなことはどうでもいい、考えたくない。公園の片隅に眼魔の化身を見つけて迎撃しようとしたが、すぐ近くを女の子が通った。見たことがある女の子だ。確か、この町で最初に眼魔と接触したとき……。おい!と焦って叫んだのが逆効果で女の子の目が泳ぎこちらを見た。つまり眼魔と反対側。女の子の背後で笑う女を見て剛健を発動し一気に走り、眼魔の化身と一瞬の攻防。女なのは姿だけ、その膂力は黒魔法で強化した肉体を簡単にはじき返しこちらの手が痺れた。幸い女の子と眼魔の間に割り込むことができ、逃がそうとしたのだが。


女の子は驚いていたが、今はそれどころではない。眼魔の化身はひゃひゃひゃと笑うとまるで折り重なっていたように次から次へと増えていった。周りの景色が歪み、向こうがどう歩いているのかもわからない。オレは霊視ができるから多少なり見えるが、女の子はまず無理。現にどう見たって本人が慌てている。一人だけ逃がすわけにもいかず、ここで応戦。異次元回廊が大きく開いていなかったからだろう、眼魔が以前のような大きな力を持ってきていないのが救いで、戦うどころかおそらく耐えきればなんとかなる。向こうだって決定打がないから目くらましに走っている。どこかから飛んできた触手が、オレの頬を深く切り裂いて血が噴き出した、ように見えたのだろう。女の子は悲鳴を上げたが大丈夫だと言っておいた。


「血が出れば怖いか。安いホラーだな」


出血があれば動揺し、グロテスクな傷口を見れば吐き気がする。そういう人間の生理的嫌悪は、恐怖とは根本的に違う感情だが混同するヤツが多い。そういうヤツらは自分から血が出たように見えれば集中力をなくして一気に弱体化、相手にならなくなる。裏を返せば手の内を知っていればどうということはなく、気を強く持てばほとんど効果がない。驚いたら思うつぼだ。事実ダメージはまったくなく、ほっとけばいい。そう思っていたのが、オレが他の連中と変わらないヘボだという証拠だった。


「アルマ!」


……嫌な声がした!それと同時に、発光。強烈なフラッシュのような光が背後から数秒間、周りを照らした。夜とは思えないくらいまぶしく、むしろ光りすぎて何も見えない。眼魔の化身の女が出していた幻術は一発で吹き飛んだ。そして、幻術ではないものだけが残る。目の前の女の一人は姿が吹き飛んで、その下から帽子を目深にかぶったいかにもな変質者が出てきた。手には、刃物?やたらデカい!とっさに剛健を使って腹に一発食らわし、後ずさった相手にダメ押しで攻撃白魔法を撃ち込んだ。男はどうやら異形の者で、刃物だと思っていたのは手首と直結した硬質の皮膚。外殻に近いのだろうか。帽子の下には、海棲生物のような殻を持った不気味な色の顔があった。……たぶん元は人間だったのだろう。なぜこうなったのかは、想像もつかなかった。次元の向こうは地獄ですらなく、そこにいる者がどうなるなんて誰も見たことがないから、わかるわけがない。しかし、オレには溶けて消えていく男よりも見たくないものがある。背後の声の主。悲しいかな、こっちはわかろうと思えばわかってしまう。


背後にいた槙島は、ごめんね、と謝った。オレは謝られる覚えがない。……むしろオレが謝るのだろう。この町に長くいるつもりはない。すぐに終わらせるから、その間は頼む。自分で何を言っているのかわからなかったが、槙島がバカみたいに「任せて!」と叫んだら一日のわだかまりが少しだけなくなったようで、なんだか安心した。青山という女の子は、光が強すぎてしばらく前が見えなかったがすぐに視力が戻った。要はビックリしただけなので「なんだったの?」って感じらしい。夜道には不審者が出るから気をつけろ、と適当に言っておいた。青山という子は、オレをまじまじと見て深く納得していた。非常に遺憾だが、向こうからすれば大差はないのだろう。


SIDE:MAXIMA


次の日から、槙島の学校の教員に見つからないように、と見つかったとき逆効果になる下策を主戦略とした眼魔捜索網を展開した。眼魔の化身は突然吹っ飛んだので何も手がかりが残らず、探し直し。槙島が使った光と闇の転換魔法は、教えた覚えがないのに完璧だった。槙島曰く、オレが使うのを一回見たらしい。使ってたっけか。ここに来てから必死になったことしかないのでよく覚えていない。まあこれでオレにできて槙島にできないことがほぼなくなった。他の細かい技術は全部応用だから理屈の上ではできる。オレができると言わないと槙島はできると思わないので、自分ではしないようだが。


町は今大混乱。特に事件があったわけではない、と思っているのはオレと槙島だけらしい。光と闇の転換魔法は、手加減しないと連鎖反応を生む。光に変わった闇はドミノ倒しのように周りを引っ張って変化させ、なんでも聞いた話では二つ向こうの町までしばらく夜が吹き飛んだとか。日が沈んだのに明るくなったぞ!ボールがそろったのか!なんて言うヤツがたくさんいたらしい。ボールがそろったら暗くなるんだ、知ったかぶりめ。テレビの特集とかどこかの調査団とか、まあ誰がどれだけ集まったってわかるわけないので放っておく。そんなことだから学校の教員とかいくらでも避けれた。一つだけ困ったのは。


「アルマ君、何してるんだ!クレームが止まらないじゃないか!」


電話の向こうでミナカタが大慌てだった。光と闇の転換魔法は、オフィシャルにはオレしかできない。だからオレのチョンボだと思われているらしい。違う!違うが、違わない。どう言い繕っても結局どこかでオレのヘマが絡む。未来ある若者には、責任を押しつけない。オレはなんて立派なんだ。未来ある若者は、また無責任にオレを引き回した。



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