57 リベンジマッチ
アヤネの奇力器が復活するまでには、丸2日かかった。この間、攻略組が18層に到着したといううわさは、だれも耳にしていない。
もっとも、奇力器の状態は、外部から確実に調べられるものではないため、アヤネの感覚だけが頼りであり、本当にエネルギーが溜まったのかを、判別する術はない。
再び羅刹と相対する別解組。
当然のようにトロルの腰は完治していたが、今度のレイヴンたちは、集団から飛び出すことをしない。
いかにも落ち着き払った様子で、アヤネの状態を見ている。
「頭部にあてれば、それだけで勝てる」
「っていうか、そうじゃなきゃ倒せないでしょ。あたしたちにできることなんか、ほとんどないって」
「は、はい……」
レイヴンたちの言い方では、アヤネがプレッシャーを感じてしまうだろうと、リョウスケは苦笑いを浮かべながら、少女の肩に手を置いた。
「失敗したら、また挑戦すればいいだけだから、気楽にいこう」
「はい、リーダー!」
昨日の調子では、どうなることかと思ったが、一晩経ったことでリョウスケも心の平穏を取り戻したらしい。さすがに、年長者だけあって気配りがうまいと、レイヴンは舌を巻きながら、二人の顔を眺めた。
深呼吸。
真剣な表情で、アヤネが弓を番えていく。
直後、奇力器の力が解放され、弓幹が異様にたわむ。その姿は三日月を通り越して、もはやUの字に近い。
ずどん。
弦から離れた矢が、一直線にトロルへと向かっていく。
対する羅刹も、アヤネの攻撃を覚えていたのか、腕を前に伸ばして初めてまともに防御の姿勢を取った。
轟音。
手のひらに直撃した矢は、桁違いの威力で手首から先を吹き飛ばすが、トロルの顔面にダメージは一切入っていない。
(クソっ……)
「「まずいね」」
また倒せずに撤退かと、喫緊の問題にいら立つレイヴンとは対照的に、リョウスケとヴァリーラは深刻な声音で独り言ちる。
数秒考え、ようやく意味を理解したレイヴンは、隣に佇むネヴェリスカの肩をつかんでいた。
「今ここで決着をつける!」
反射的に駆けだしたネヴェリスカだが、状況を理解したわけではない。詳しい説明を求めようと、レイヴンの横顔に視線を送った。
「どういうこと?」
「ちょっとずつだが、たぶん羅刹は学習していっている! 今回も倒せなかったら、次に遭うときはもっと面倒な状況になっているってことだ!」
ヴァリーラといい、リョウスケといい、頭の回転の速さが尋常ではない。
たった一瞬で、そのことに気がつけるものなのかと、レイヴンは内心、舌打ちをしていた。
自分が事態の重要さを理解できたのは、あくまでも先に二人がつぶやいていたからだ。
きっかけがなければ、今もネヴェリスカと同じように呆然としていただけだろう。
(だが、どうする?)
倒すと決めたはいいが、具体的な戦術を考えていたわけではない。
レイヴンはその方法に悩んでしまい、口元に手をあてながら黙りこんだ。
だが、ネヴェリスカはそんなに真剣に考えるものではないと、レイヴンに向かって肩をすくめた。
「要するに、あいつに防がれないようにすればいいんでしょう? 切り落としちゃいましょう、両腕」
「なっ……」
乱暴なやり方だが、たしかにそれが確実だ。
そう言うと、ネヴェリスカはレイヴンの胸を小突く。
まるで、あまり一人で気負うなとでも言外に伝えているようだ。
「……」
その動作で、思っている以上に己が緊張していたことを自覚したレイヴンは、ゆっくりと息を吐いて肩の力を抜いた。
「やるぞ!」
「ええ、簡単よ」
自分に言い聞かせるように、ネヴェリスカはウィンクをしてみせた。
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