54 今後の方針
これからのことを考えるうえで、アヤネが持つ奇力器については、その詳細を知っておく必要がある。
そう判断したリョウスケは、親御を思い出すトリガーにならないよう、慎重に言葉に選びながら、アヤネに対して説明を求めた。
「恥ずかしいんだが、僕たちは、その奇力器についてほとんど何も知らないんだ。一般的なことでも構わないから、軽く話してみてくれないか?」
「いいですよ。奇力器っていうのは、基本的には、武具とはあまり関係のない装備品の形をしているとされます」
言いながら、アヤネは例示をするように自身の腕をたくし上げる。
そこに現れたのは紫色のブレスレットだ。
どう見たって、それが戦闘とは関係のない装飾品であることは、明瞭である。
「解放した際の効果と、連続して使用できる回数の上限は、その奇力器によってまちまちです。例えば、私の剛腕だと、3発までなら壊弩士になれます」
以前にアヤネの話していた、ライカンスロープを討伐したという話は、まさしくこれであろうと、レイヴンは独り深くうなずく。
「上限という言葉遣いが、ちょっと引っかかるな。それだと、アヤネは羅刹に対して、あと2射の余力を残していたことにならないかい?」
「いいえ、そうじゃありません。この奇力器の中にあるエネルギーは、すでに空です。解放を再度行うためには、また溜めなおす必要があります。元々、1回分の力しか溜まっていなかったんです」
「どうすれば、溜まる?」
「エネミーを倒していれば、次第に使用可能になります。ごめんなさい、感覚的なことなので説明が難しいんです」
「いや、こちらこそすまない。別に、責めているわけじゃないんだよ」
リョウスケは慌ててそう言うが、現に羅刹との戦闘で負傷したネヴェリスカは、溜め息を吐かざるをえなかった。
「もっと早くに言ってほしかったわ」
さすれば、トロルとの戦い方だって大きく変わったはずだと、言外に責めるネヴェリスカに、アヤネは縮こまって謝罪することしかできなかった。
「すみません」
だが、同じソロプレイヤーとしての活動が長かったレイヴンには、少女の心配が自分のことであるように理解できた。
ゆえに、ネヴェリスカに向かって口を開く。
「奇力器に相性ってのがあるのかないのか、俺にはいまいちわからんが、アヤネが土壇場まで言い出せないのは無理ないだろう。珍しい力を持った装備品なら、殺して奪うプレイヤーがいても不思議じゃない。俺たちがゴールドマンから、奇力器を貸し与えられていないことからしても、アヤネのそれが自前のものであるのは、割とすぐに察せるからな。どうしたって警戒しがちになる」
「……ふ~ん。肩を持つのね」
そこそこにレイヴンと、前線で協力して来たネヴェリスカとしては、彼が自分ではなく、アヤネの味方をするのが気に入らなかったようだ。
一方のリョウスケは、レイヴンが想像するような、無法者がいないと信じたそうだったが、理由自体には一応の理解を示すのか、まだ口を挟もうとしていなかった。
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