39 ケンタウロス
聞けば、すでに北側の調査は完了しているらしい。残すところは、フロアの南側だけだという。
最初に出会ったときから、もうそんなに進んだのかと、レイヴンが作業の速さに驚けば、彼の解釈は少し間違っているようで、リョウスケは簡単に訂正していた。
「ちょっと違うかな。北側の道には、12層へとつづく階段があるんだけれど、そこを除くと、すべてのルートが一つのところに集まっているんだよ。ただ、その終着点っていうのが、どうにも罠場っぽくてね。奥を調べるために中を覗いてみたいんだが、さすがに後回しにしたいかなって。……まあ、結果的に持ち越したのは大正解だったかな。レイヴンが加わってくれたおかげで、希望が見えたよ」
期待してくれるのはうれしいが、10層の羅刹を倒せたのは、ほとんど偶然のようなものだ。
今度からは、最初からネヴェリスカと連携して戦えるとはいえ、あまりに大きな公算を持たれても困る。11層の羅刹を倒せる保証はない。
「手を抜くつもりはないが、買いかぶるなよ」
「するわけないでしょ。ここにいる連中は、どうせあたしがいなきゃなんにもできないんだから」
(たしかに……)
別解組の肝が、ネヴェリスカにあることは疑いない。
攻撃も防御も、すべては彼女をどれだけ活かすことができるのか、という部分にかかっている。
だが、ネヴェリスカの反則的な動きと比べてしまえば、大概のプレイヤーは、平凡という評価にならざるをえないのではないかと、レイヴンは少しだけ眉をひそめる。正当な比較対象ではないと、レイヴンは言いたかったのだ。
やがて、5人の前にはケンタウロスが現れていた。遠目には、奥にもう1体同じエネミーがいるように見える。
「念のため、迂回しますか?」
ユウトの提案に答えたのは、レイヴンだった。
「ついさっき、似たような距離で遭遇したが、ケンタウロスのほうは何もして来なかったぞ?」
「本当ですか?」
ユウトは訝しむようにレイヴンに尋ね返すが、リョウスケは別のことを考えたらしい。
「それは興味深いね。今なら、ちょっとくらい無茶ができるから、せっかくなら試しておきたいかな」
リーダーがそう言うならばと、ほかのメンバーは言葉を発さない。
恐るおそる、ケンタウロスの横を別解組が通り抜けていくが、結果はレイヴンから言われていたとおりだった。
背後にまで遠ざかったエネミーを、注意深く見つめながら、ネヴェリスカがつぶやく。
「あいつらと戦ったプレイヤーは、みんな自分から切りかかったってこと? 馬鹿じゃないの」
レイヴンも似た感想を抱くが、リョウスケは異なる意見を出す。
「まあ、僕たちもレイヴンから聞かされなきゃ、刃を交えていたと思うし、そんなに貶めてあげるなよ」
そうして全員の体から、多かれ少なかれ緊張感が抜けたとき、横から一匹のハーピーが、別解組へと向かって飛びこんで来たのだ。
それと同時に、いまだケンタウロスを目視していたネヴェリスカと、奥のエネミーを凝視していたレイヴンとが、全く一緒の単語を叫んでいた。
「「構えろ!」」
2体のケンタウロスが、いつの間にか弓を番えていたのである。
(どういうことだ……)
全員が同じ疑問を抱く中、エネミーの群れとの交戦がはじまっていた。
コメントまでは望みませんので、お手数ですが、評価をいただけますと幸いです。この後書きは各話で共通しておりますので、以降はお読みにならなくても大丈夫です(臨時の連絡は前書きで行います)。
次回作へのモチベーションアップにもつながりますので、なにとぞよろしくお願いいたします。(*・ω・)*_ _)ペコリ




