34 きっかけ
踊るように舞ったレイヴンが、瞬く間にゴブリン2匹の首を刎ねる。
最後の1体についても、何もさせずに倒したつもりであったが、どうやらすでに仲間を呼んでいたようだった。
左右の壁から、すり抜けるようにしてゴブリンが姿を現す。
擬態しながら、自分たちに接近していたのだ。
そのうちの1匹が、少女に向かって棍棒を突きだすが、彼女は身じろぎ一つしない。しかとその目でメデューサを見据えたまま、きりっと弓をしぼって矢を放っている。
(……すさまじい集中力だ)
先ほどまで、おろおろとしていた少女と、同じ人物とは思えない。
レイヴンは感心しながら、ゴブリンの棍棒を叩き落とし、次いで、その胴体を2つに開く。
しかし、いくら動きがとろいとはいえ、メデューサのほうも、段々と少女の弓矢に慣れていったようだ。防戦一方だったが、ついには、回避の合間に石化の光線を放つまでの、余裕を見せるようになった。
「やっぱ……なしじゃダメか。でも、まだ溜まっていない……」
少女が何事か独り言ちる。
レイヴンは、そのすべてを聞き取ることがかなわなかったが、メデューサの反撃がなされたとき、すでに追加のエネミーも含め、ゴブリンの群れを全滅させていた。
少女へと向けられた光線を、レイヴンがその愛件で弾く。
「お疲れ……。あとは任せてもらおうか」
言うやいなや、レイヴンがメデューサに向かって飛び出していく。
対するメデューサも、石化の光線を放つが、それは断続的なものであるため、レイヴンを捉えることは決してない。もしも、メデューサが、連続した一つの光線を放つことができたならば、顔を上下左右に動かすことで、不規則な波形を作りだすことも可能だっただろう。
だが、そうではない。
線ではなく、点の攻撃では、いくらやってもレイヴンの速さに対応できないのだ。
肉薄。
メデューサも最後の抵抗をしようと、体中から蛇を召喚するが、どれもレイヴンに切り捨てられていった。
「おわりだ」
振り向きざまに、レイヴンはメデューサの頭をかち割った。そうして、ゆっくりと納刀する。
メデューサを倒したことで、足が元に戻ったのだろう。戦闘の終了を見計らって、レイヴンのもとに少女が駆け寄って来ていた。そのまま、走る勢いに任せて、少女がぶるんと激しく頭を下げる。レイヴンの黒色にも似た濃い紫色の髪が、ふわりと宙を舞った。
「あ、あの! 助けていただき、ありがとうございました!」
「……。まあ、気にするな。俺も以前、似たようなことをされた」
罠場に踏みこむという、少女よりも遥かに致命的なミスをしたのだが、それを正直に話すのは決まりが悪かったために、レイヴンは少しだけ嘘をついた。
レイヴンが立ち去ろうとすれば、少女は彼の見ているまえで、おもむろに自分の放った矢を回収しはじめる。
(そうか……。弓だと撃ったあとに、どうしても拾わないといけなくなるのか)
抱いた感想を何気なく、レイヴンは少女に向かって話す。
「難儀だな」
言葉足らずな物言いだが、何を言わんとしているのかは容易に察せられたらしい。だが、レイヴンの予想に反し、少女は両手を大きく左右に振っていた。
「そんなことないですよ。矢は戦利品として認められていないので、色んな方が快く融通してくれるんです」
少女が指摘するとおり、弓の本体はともかくとして、その矢をゴールドマンは評価していない。どれだけ集めようとも、一切、無益なものとして扱われるのだ。だからこそ、拾ったものはゴールドマンではなく、弓の使い手に渡すという形に落ち着いたのだろう。
しかし、レイヴンはこれまで、落ちた矢を見つけても、気づかぬふりをして来た。自分の糧にならないからだ。
まさか、プレイヤーの間で、そんな協力がなされていたとは知らず、なんだか自分が、とても卑劣な人間のように感じられてしまい、レイヴンはショックを隠せなかった。
「そ、そうだったのか……」
(次からは、俺も拾って譲ろう)
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