31 復活のレイヴン
およそ1か月の療養期間を経て、レイヴンの体は、本調子に近いところまで回復していた。
この間、レイヴンの予想に反して、彼と村人との交流は驚くほど多かった。
村の反対を押し切って、正面からダンジョンに向かったわけではないが、好ましく思われていない白塔に、レイヴンは自ら進んでいったのだ。てっきり、勘当に近い扱いを受けるのではないか、というレイヴンの想像とは無縁の、平和な生活を彼は送ることになっていた。
さすがに、3年も一人で出ていけば、いくらなんでも心配するということなのだろう。
よく生きて戻って来たと言わんばかりの出迎えに、少々、レイヴンは困惑する羽目にもなった。
「また行くのか?」
レイヴンが簡単に準備体操をしていれば、そう話しかける者があった。
ディアヴォである。
年の差は、レイヴンの父親と呼ぶには近すぎるし、兄と呼ぶには離れすぎているような、なんとも言えない具合である。
エルヴァと、それなりに付き合いがあったため、他の村人よりは、いくらかレイヴンのことを気にかけているらしかった。
「ええ。まずいですかね?」
ダンジョンに向かえない間、他人の農地で働かせてもらうことで、レイヴンは食いつないでいた。自分の土地と呼べるものは、長らく手入れがなされていなかったので、とても飯の種を作れそうな状態ではなかったからである。
二度と戻らないつもりで出ていったレイヴンとしては、少し決まりが悪かったため、ディアヴォの顔色を窺うように尋ねていた。
「……。いいんじゃないか」
疲れた様子でディアヴォは言う。
そうして、すべてを諦めたような目でカラサの風景を眺めていった。
「どうせ、お前一人が出て行ったところで、何も変わらん。好きにしろ」
良い意味でも、悪い意味でもということなのだろう。
レイヴンが消えても、カラサはこれ以上悪くならないし、加えてダンジョンの言い伝えは、貧困を解消しないと、ディアヴォはそう決めつけているのだ。
(……)
自分も、ずっとこの村で生活しつづけていれば、いつかは似たような考えを抱くのかもしれない。
そう思ったレイヴンは、何も言葉を返さず、ただゆっくりとした足取りで白塔を目指していた。
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