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奇跡を叶えるダンジョンと、レイヴン――遺志を継ぐ者 16,000PV感謝!!!!  作者: 西芭企画
前編 ダンジョンの謎と別解組
30/115

30 帰郷

 悪化した空気に、リョウスケが呆れたようにユウトを宥める。全員より、年齢が10歳ほど離れているだけあって、リーダーのリョウスケは、こういったことに慣れているのだろう。


「よさないか。ソロでの活動も、立派な一つのやり方だよ。……でも、レイヴン。今度からうかつに罠場に入るのは、やめてほしいな」


「それは重々承知している」


 レイヴンとしても、それは十分に自覚していた。大層懲りたことは、リョウスケも容易に想像できたはずだろう。それでも、言わなくてもいいことを、あえてリョウスケが口にしたのは、彼なりに失望感を露わにしたかったのだろうか。


「僕たちはまだ、10層に残るつもりだが、レイヴン。君はどうする?」


 ダンジョンから引き返すつもりならば、途中まで送っていくという気遣いだった。

 無下にするのは忍びない。

 受け取るのが社交的な対応だろう。


「俺はもう……。階段まで案内してもらえるなら、助かる」

「わかった。一緒に行こう」


 無言のまま4人が歩く。

 先行するユウトが、時折、偵察した結果を報告してくれるため、エネミーと遭遇することは滅多にない。ほとんど戦闘という戦闘をするわけでもなく、レイヴンは9層へと向かうことができていた。


「ありがとう。ここでいい」

「……そうか。それじゃあ、また。同じ白塔にいるんだ、どこかで会うこともあるだろう。そのときはよろしく頼むよ」


「ああ」


 手を振るリョウスケに会釈を返し、レイヴンは出口を目指して足を進める。

 満身創痍で、十分に戦うことのできない体。

 そんな状態で、ダンジョン内を歩行するのは、非常に怖い体験でもあったが、これまでのことを振り返るいい時間にもなった。


 3層までついてしまえば、今の体であっても恐れるに足りない。

 もちろん、だからといって道草を食ったところで、得られるものは何もないだろう。この辺りであれば、これから先も、休養を取らずに来られるが、戦利品の獲得は見込めない。糧食につながらないのであれば、大人しく家で、体の治療に専念したほうが賢い判断と言えた。







 やがて、レイヴンは故郷のカラサに戻って来ていた。

 ずいぶんと長らく実家には戻っていなかったので、部屋の中が砂埃だらけだ。まずはその掃除からしなければならないだろうが、姉にあいさつするほうが先だろう。


 そう考えたレイヴンは、玄関をUターンして家の外に回る。

 荷物はない。

 そもそも、レイヴンの装備はゴールドマンから借りているにすぎないのだ。一時的にカラサに帰ると告げた時点で、ゴールドマンが、それらをレイヴンに貸したままにしておく道理はなかった。


 簡素な墓。

 その前に座ったレイヴンが、姉に軽く手を合わせる。


(ただいま、姉ちゃん。帰って来ちまったよ……。ごめん、まだ約束は果たせていないんだ)


 造りが粗雑なだけあってか、もうすでにぼろくなりはじめている。


「ついでに自分で作りなおすか」


 材料も、適当に見繕えばいいだろう。なんなら、白塔までの道で勝手に調達してしまっても、いいかもしれない。


 そこでふと、レイヴンは違うことを連想した。


(あれ? そういや……ダンジョンで亡くなった人って、だれが遺体を運びだしているんだ?)


 今まで、レイヴンはプレイヤーの亡骸を見かけたことがないのだ。まさか、ダンジョン内にそのまま放置されているわけではあるまい。ダンジョンはかなりの人間を殺して来たのだから、それだと目にしないほうが不自然である。


 だが、すぐに頭を振って、レイヴンは余計な考えを追い払った。

 エルヴァに関係のない話であるのに、墓の前で、ずっと姉の嫌っていた白塔のことを考えるのは、よくないように思われたからである。


(大体、ソロのほうが珍しいんだしな……)


 パーティーであれば、死に物狂いで仲間を助けるだろう。自分が聞かされて来た死者の数というは、だいぶ盛られたものだったようだ。


 レイヴンは自嘲気味に笑って、家の中へと戻っていった。

 コメントまでは望みませんので、お手数ですが、評価をいただけますと幸いです。この後書きは各話で共通しておりますので、以降はお読みにならなくても大丈夫です(臨時の連絡は前書きで行います)。

 次回作へのモチベーションアップにもつながりますので、なにとぞよろしくお願いいたします。(*・ω・)*_ _)ペコリ

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