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奇跡を叶えるダンジョンと、レイヴン――遺志を継ぐ者 16,000PV感謝!!!!  作者: 西芭企画
前編 ダンジョンの謎と別解組
19/115

19 体毛で覆われていない部位。

 全速力で逃走したレイヴンには、確実にライカンスロープを撒いた自信があった。

 しかし、その15分後には、再び同じエネミーとレイヴンは相対していた。

 ライカンスロープは、その鋭敏な嗅覚を利用し、レイヴンのことを着実に追跡していたのだ。


「つくづく面倒くせえエネミーだな、お前は!」


 舌打ちをしたレイヴンが、二足歩行のオオカミを睨みつける。

 もはや逃げられないとレイヴン悟っていた。

 戦う覚悟を決め、レイヴンは剣を持ちなおすが、問題は敵の体毛だろう。

 この点をどうにかしなければ、いつまで経っても、ライカンスロープに致命傷を与えることはできない。


 じり貧だ。

 プレイヤーの数よりも、エネミーの数のほうが圧倒的に多いのだから、一体との戦闘に長時間を消費するのは、全体的に見るとマイナスでしかない。思わぬタイミングで別のエネミーが合流することも、十分に考えられるからだ。


(どうする……?)


 何か妙案はないかと、レイヴンは視界の端に映るものに注意を注いだ。

 その揺らぎとも呼ぶべき、集中力の途切れを目ざとく感じとったライカンスロープは、即座に攻撃の態勢を取っていた。


 左右から押しつぶすようにして、エネミーの両腕が迫る。

 あんなものに挟まれてしまっては、鋭利な爪によって胴体がずたずたにされてしまうだろう。

 後ろに飛んで回避。

 一方のライカンスロープも、そのレイヴンの動きは読んでいたようで、両腕の勢いを殺すことなく、そのまま口を大きく開いて突きだしていた。


 がしゃん。

 閉じられた口元が、すさまじい音を立てていく。

 剣でその軌道をずらすも、完全にいなすことはできず、髪の一部が牙に捕らえられてしまっていた。


「クソっ!」


 反射的に、頭髪を切って逃れると、レイヴンは距離を取って呼吸を整えた。


(爪だけでも厄介だってのに、当たり前のように牙まで使って来るのかよ……)


 だが、その攻防は、結果的に見れば、レイヴンに反撃の糸口を与えることにもなった。

 気がついたのだ。

 体毛に邪魔されず、こちらのダメージを通せる個所に、レイヴンは狙いを定めることができた。


(そうか、牙!)


 口の中までは、いくら異形の存在といえども、びっしりと毛で覆われてはいない。

 そこを集中的に攻撃すれば、レイヴンにもやりようはある。

 それからは、レイヴンはカウンターに絞ってライカンスロープの技を誘導し、適宜牙に傷をつけていった。


 やがて、そのダメージの蓄積は限界を迎え、ついにライカンスロープの牙を破壊することに成功する。


「これでおわりだぁあああ!」


 わずかに口の中へと食いこんだ剣に、体中の力を乗せて、その喉元に己が得物を突き立てた。

 そのまま横に薙いで、内側からオオカミの顔を破壊していく。

 念には念を。

 敵の再生能力を危惧し、今しがたできた傷口から、レイヴンはエネミーの頭部を吹き飛ばした。

 ぼん!

 あまりの勢いに、ライカンスロープの首が天井に達する。

 まもなく落下する敵の亡骸を、レイヴンは冷ややかに見つめながら、その場にへなへなと座りこんだ。


 ぜえ、はあ……。

 荒く、肩で短い呼吸をする。

 早鐘のように脈打っていた心臓の鼓動も、深く息を吸っている間に元に戻って来たようだった。


「思ったより、手ごわかったぜ」


 しかし、この程度では、まだ命がけの戦いとは言えない。

 自分の成長に期待するのであれば、もっと過酷なエネミーと刃を交えなければならないだろう。

 ゆえに、レイヴンは再び走りだす。

 だが、はっきりと言ってしまえば、やりすぎたのだ。もうここでやめて、速やかに引き返しておくべきだったのである。そうしなかったばっかりに、今よりわずか10分後、レイヴンは自身でも気がつかない間に、罠場と呼ばれる場所に迷いこんでしまっていた。


 そこは侵入して来たプレイヤーを、刈り取るための空間である。

 コメントまでは望みませんので、お手数ですが、評価をいただけますと幸いです。この後書きは各話で共通しておりますので、以降はお読みにならなくても大丈夫です(臨時の連絡は前書きで行います)。

 次回作へのモチベーションアップにもつながりますので、なにとぞよろしくお願いいたします。(*・ω・)*_ _)ペコリ

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