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奇跡を叶えるダンジョンと、レイヴン――遺志を継ぐ者 16,000PV感謝!!!!  作者: 西芭企画
前編 ダンジョンの謎と別解組
18/115

18 ライカンスロープ

 9層にあがる階段を、一段飛ばしで駆けあがったレイヴンは、そのまま、そのフロアを縦横無尽に走りまわっていた。


「邪魔だぁあああ!」


 目についたエネミーは、手当たり次第に切り倒す。

 その覚悟で疾駆するレイヴンの前を、阻める敵はいない。

 ドレイク・ゴブリン・メデューサ……なんでもござれだ。


(もっとだ……。もっと、自分を追いこまなければ、俺は強くなれない!)


 ほとんど無意識のうちに、レイヴンは目に飛びこんで来た10層への道を登っていく。

 それと同時に、出没するエネミーの種類についても、変化が見られるようになった。

 新しく、ライカンスロープが現れるようになったのである。

 ライカンスロープ――すなわち狼男は、言葉どおりの半狼半人である。

 ダンジョンの中には、そもそも天体の光が届かないため、満月の夜に特別な能力を宿すといったことはないが、代わりに、常にオオカミでもあり、人でもあった。その姿を二足歩行のオオカミと表現すれば、いくらかわかりやすくなるだろう。


 持ち味は、俊敏さに特化した身体からくり出される爪と牙である。

 腕を交互に振りまわすことができるため、連続攻撃にもなれるそれは厄介と言えるだろう。


「――ッ!」


 下から切りあげるようにレイヴンが剣を振るうも、ライカンスロープは悠々とそれを回避する。

 かわされたことに気がついたレイヴンは、手首を返し、足をもう一歩踏みこんだ。

 刺突。

 だが、それすらもライカンスロープは、バックステップで華麗に捌いてみせる。


(こいつ……速いな)


 深追いはせず、レイヴンは剣を構えなおして、エネミーを見据えた。

 一瞬の沈黙。

 直後、今度はこちらの番だとでも言いたげに、ライカンスロープの連続攻撃がはじまった。

 右・左――右・右・左。

 致命傷を避けつつ、隙を見て反撃するも、相手の体毛をなぞる程度しかあたらず、全くダメージが通らない。


 勢いをつけた敵の突進。

 横に倒れてかわし、接地する左手に力をいれる。

 そうして、追撃をしかけるライカンスロープの正面に向かって、弾みをつけた蹴りを放った。


「おりゃあああ!」


 寸前で、ライカンスロープは足を止める。

 それを受け、レイヴンはさらに重心を入れ替え、回し蹴りと同時に逆方向へ剣を薙いだ。

 ばしん。

 ヒットを知らせる衝撃音は響くものの、横目で確認したエネミーの腕に、少しも血は流れていない。


(皮膚を覆う毛が硬すぎるな……。えぐるように剣を立てなきゃ、倒せねえか)


 だが、向こうのスピードに合わせながら、そのような攻撃を行うのは、ずいぶんと骨が折れそうだ。


「……」


 弱くはない。

 その意味で、ライカンスロープは十分に戦う価値のあるエネミーだが、倒すのに時間がかかるだけのような気もして来る。


 強敵とのデスマッチという文脈で判断したとき、このエネミーは自分の糧にはならないだろう。

 そう判断したレイヴンは、すぐさま撤退していた。

 コメントまでは望みませんので、お手数ですが、評価をいただけますと幸いです。この後書きは各話で共通しておりますので、以降はお読みにならなくても大丈夫です(臨時の連絡は前書きで行います)。

 次回作へのモチベーションアップにもつながりますので、なにとぞよろしくお願いいたします。(*・ω・)*_ _)ペコリ

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