17 もっと強く、上へ。
レイヴンが、攻略組への加入を断らなければいけない理由は、能力とトラウマのためである。
まず、明らかに自分の力は攻略組に劣っている。そんなもの、わざわざ比べなくとも、今のレイヴンには正確に理解できた。
もう一つの原因であるトラウマとは、とりもなおさず、レイヴンは姉の死後、人との接触を極端に避けるようになってしまったのだ。そして、これこそが、レイヴンがソロでの活動にこだわっている理由でもある。今の自分に、パーティーに馴染むような余裕はない。
もちろん、反論もあるだろう。
なにも仲間と親しくなろうとはせず、事務的な関係でいればいいのではないかというものだ。
その点についても、レイヴンは考えた。
(だが、そのためには、俺の実力があまりに足りていない)
ビジネスライクな関係だけでついていけるほど、レイヴンの技術は攻略組に匹敵していない。どうあがいてみても、適切な間柄にならなければ、ただの足手まといになるのがオチだろう。
そうであるがこその辞退。
これ以外に、結論は見当たらなかった。
「誘いは、うれしいが――」
発語だけで、彼の話そうとする内容が察せられたのだろう。
レイヴンの言葉を遮るように、男が重ねて口を開く。
「まだ正式なものじゃないので、そう畏まらないでくれ。僕らも、周りからは攻略組だなんだと持てはやされているが、実際のところは一杯いっぱいなんだ。少しでも、パーティーの戦力を高めたいというのが本音だよ。だからこそ、こうして見込みのありそうなプレイヤーには、ちょこちょこ声をかけさせてもらっている。君もその一人だ。お試し期間を設けるつもりだから、ちょっとでも興味があるなら、一緒に来てみないか? 考える時間も必要だろうから、また来週、ここで会おうよ」
言いたいことだけ言って、男たちが去っていく。
その背中を睨みつけるように見つめながら、レイヴンは過去の自分自身を呪っていた。
(クソっ、クソ! 俺はいったい今まで何をしていたんだ! なにが安全策だ。そんなの何の役にも立ちゃしねえ! あいつらの力に比べりゃ、俺はまだゴミみたいなもんじゃねえか。あんなやつらが最上階で戦っているんだぞ! 俺も、もっと強いところで場数を踏んでいかねえと、ダンジョンの制覇なんて、夢のまた夢になっちまう)
自分の認識が甘かったのだと、もっと命をかけた真剣勝負をくり返さなければ、決して強くはなれないのだと、レイヴンは何度も己の太ももに拳を打ちつけた。
(今すぐ9層に行くっ!)
幸いにして、すでに上にあがるための階段は見つけてある。
ウンディーネとの決着がついていないばっかりに、先へ進むことをためらっていたにすぎないのだ。
「関係ねえ……。こっからは正真正銘、全速力だ!」
姉の顔を――優しかった姉の笑顔を思い出し、今一度、レイヴンは剣を握りなおす。
もう迷いは吹っ切れていた。
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