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奇跡を叶えるダンジョンと、レイヴン――遺志を継ぐ者 16,000PV感謝!!!!  作者: 西芭企画
前編 ダンジョンの謎と別解組
15/115

15 邂逅

 水中から姿を現したウンディーネ。

 強力無比な透明化も、頼りとする水がなければ効果が発揮されない。

 そぼ降る雨ごときでは、陸地で透明な体を維持することはできないのだ。

 手に持つは銛。

 身体能力が低いためなのか、エネミーのくせして、ウンディーネの攻撃は武器で行われる。

 状況は絶望的とも思われたが、見方を変えれば、ウンディーネを水場から引っ張りだしたとも言えた。


「おいおい、ウンディーネさんよ。お得意の狩場から出て来てどうする?」


 にやりと笑ってレイヴンが身構える。

 彼の剣はジャイアントトードに奪われたままだが、相手が非力なウンディーネであれば、素手でも十分に戦うことができるだろう。


 突き出される銛。

 悪天候の視界の中でも、これだけ近ければ、攻撃の軌道がはっきりと見える。


(お前は、ずっと水の中に隠れてなきゃいけなかったんだ。俺の相手は、遠距離からでも舌を伸ばせるジャイアントトードに任せて、お前は補助に徹底するべきだった。それがお前の敗因だぜ)


 粘着性の雨によって、レイヴンの動きは緩慢になっていたが、それでも、ウンディーネの身体についていけないほどではない。


 銛をつかんで敵の攻撃を捌くと、もう一方の腕で、ウンディーネの顔面を思い切り殴りつけた。

 歪な顔が、さらにおかしな方向へと凹んでいく。


「人間の真似なんかしてんじゃねえよ!」


 その容貌は、まさしく女。

 下半身は魚のそれに近いので、人魚と形容したほうが正確かもしれない。

 状況は不利。

 そう判断したウンディーネが、巣へと戻ろうとする意思を見せる。

 反射的に、そこに飛びかかって尾びれをつかむと、レイヴンは大きく後ろにのけぞって、そのままウンディーネを背中側に放り投げた。


「うりゃぁあああ!」


 投げ飛ばされたエネミーが、壁に激突して制止する。

 図らずも、ウンディーネを水場から引きはがすことができた。

 もはや、水場とエネミーとの間には、レイヴンが立ちはだかっているので、ウンディーネは水中に引き返すことができないのだ。


 地利を失ったウンディーネに、もはや勝ち目はない。

 戦闘の意思が完全に消失したわけではないらしく、かろうじて銛をレイヴンのほうに向けるが、壁に衝突した衝撃で、雨が一瞬やんでしまっていた。


 べとつく雨の消失。

 本来の動きに戻ったレイヴンにしてみれば、陸地にあがったウンディーネなど敵ではない。

 素早く近づいて頭を殴打すると、相手の怯んだ隙に、その細い喉元をへし折っていた。


「残すはお前たちだけだな」


 レイヴンの言葉を理解したわけではないのだろうが、ジャイアントトードの1匹は、奪っていた彼の剣を飲みこんでしまう。


 非力なウンディーネであればまだしも、ジャイアントトードの体を素手で破壊するのは、さすがに至難の業だ。


 こうなってしまえば、お前に勝機はないだろうとでも言いたげに、ジャイアントトードは喉を鳴らして余裕を見せるが、レイヴンも抜かりはなかった。


 まだ、ウンディーネの死体はダンジョンに回収されていない。

 つまり、その銛を使うことは、もう少しの間だけ可能ということである。

 肉薄。

 ウンディーネの腕から新たな得物をひったくったレイヴンが、ジャイアントトードへ向かって、一瞬で距離を詰める。


 相手には理解する時間もなかっただろう。

 接近と同時に、レイヴンはジャイアントトードの腹部に、勢いよく銛を突き立てていた。

 そのまま力任せに貫くと、腕をねじこんで、体内から自身の愛剣を回収する。


「おい、どこに行くつもりだよ……」


 仲間を見捨て、自分だけ逃げようとする最後の個体に向かってつぶやくと、レイヴンは後ろからその背中を両断していた。


「せやぁあああ!」


 飛び散る体液。

 不快さを隠すこともなく、頬に跳ねた血を手荒く拭うと、レイヴンはようやくそこで大きく息を吐いた。


(少し、危なかったな……)


 雑魚としか見ていなかったジャイアントトードに、あそこまで戦術的な動きをする力があるとは、完全に予想外だった。


 それこそ、もっとほかの種類のエネミーたちが、一丸となって襲いかかって来ていたら、自分もどうなっていたかはわからない。


(だが、もう油断はない。次からは大丈夫だ)


 今なら、次の層にも安心して向かえるだろう。

 肩の力を抜いたレイヴンが歩きだそうとしたとき、後ろから彼に声をかける者があった。


「ああ、いたいた。君だろ? うわさの新人君っていうのは」


 肝を冷やしたレイヴンは、思わず、剣を抜きながら振り返っていた。

 コメントまでは望みませんので、お手数ですが、評価をいただけますと幸いです。この後書きは各話で共通しておりますので、以降はお読みにならなくても大丈夫です(臨時の連絡は前書きで行います)。

 次回作へのモチベーションアップにもつながりますので、なにとぞよろしくお願いいたします。(*・ω・)*_ _)ペコリ

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